ここ最近は初夏の陽射しで、もう、「さくら」といっても時季外れな気がする。
先週までは「さくら」「さくら」と日本列島ピンクのオーラを追いかけていたというのに、季節の過ぎるのは、なんて早いものなのだろう。
わたしは、必ずみる桜というのを決めていて、それ以外に
新しいさくらの名所をひとつ、訪れることを例年の課題にしているのだが。
一昨年は、友人に付き合ってもらって真如堂や金威光明寺、山科疎水から平安神宮までしっかりと歩いたし、
昨年には東向日からバスに乗って善峯寺、大原野神社(千眼桜)、正法寺などを巡った。
そして今年は、洛北原谷の「原谷苑まで出掛ける計画をたてた。
「原谷苑」の名を知ったのは、谷崎潤一郎が「細雪」で
サクラ名所に数えていた、と記憶しており、
映画(細雪)のロケ地としても、京都の桜の隠れ里として紅枝垂れ桜を写していたのをうっすら覚えていたのが、
理由なのだった。
阪急河原町の高島屋前から「金閣寺」行きのバスに乗って約30分。
金閣寺道から、「よーじや」を目印に西大路通りへ。そして、
24時間有料駐車場前から出る、原谷苑行きの無料「シャトルバス」にタイミングよく乗車する!
途中、立命館大学のグランドを横目でみながら、衣笠山の細い山道をくねくねと回り、10分ほどで山の中腹へ辿り着いた。
ああ、訪れたのは4月12日でもう満開は過ぎているだろうと予想していたのだが、
いやいや想像以上のさくらオーラ。十分の咲き頃だ。
原谷苑とは村岩農園内のさくら苑。
花好きの村岩二代目が昭和32年から数百本のさくらや紅葉などの樹木を植樹したところから始まるらしい。
当時は、親戚・友人など身内だけで豪勢な花見をしていたと聞くが、
それが人伝に評判が広がり、こうして一般公開するようになったという。
このさくらの園。広さはどれくらいあるのだろう。
20分ではしからはしまで歩けない。
黄桜や牡丹桜、菊桜、そして八重の紅枝垂桜など、
20種類のさくらをそれぞれ追いかけながら、同時に吉野つつじ、馬酔木、雪柳、石楠花、多種の梅など…
この時季の花や青々とした芝の緑も存分に楽しめるというのが、素晴らしい。
まさに、花の楽園にふさわしい絶景だ。
クロード・モネの「睡蓮」という絵画があるが、
これを「さくら」で表現したような園だった。
途中で、茶屋に立ち寄り、ぜんざいを食べながら、花をみる。
旦那衆らは、芸子や舞子さんと一緒に牛すき鍋(5800円)やさくら御膳(4500円)などをお座敷で、
そんな粋な宴席で遊んでいらっしゃって、なんだか時代錯誤な情景をかいま見られるようで
面白かった。なかには、お弁当や飲食を持ち込んではダメで、
ここの茶屋で販売しているものだけ頂けるしくみになっている。
白い大きな桜の花(御室桜)や雪柳などのコントラストにほぅ、と圧倒されているうちに
ここからそう遠くはない「仁和寺」まで
ふと足をむけてみようかという気になる。
そこで、
原谷苑の東口を出て、
ホームページでみた記憶だけをたよりに
山道をてくてく下って、途中でものすごい石の階段を降りて、
約30分のハイキング。
途中で仕事の電話が1本、2本と入るが、声も心持ち弾んで受け答えしてしまう。
そうしているうちに、
ここしばらくの陰鬱な空気も晴れて、どこまでも歩ける気がするほど。
すっかりフレッシュな山の空気に洗われていたのだった!
ぴったりと30分で御室仁和寺に無事に到着!
小雨がパラパラと降ってくるなかで桜越しに五重塔を仰ぎ、
匂い立つようなやさしい気品のある
白いサクラをたくさん目に焼き付ける。
ああ、もう1時間は見ていたいなあと思いながら夕方5時半から、
予定が入っていたので、後髪をひかれながら市バスへ乗って地下鉄の丸太町へ(約20分)
そうやって、今年最後のさくら行脚を無事に終えたのである。
聞けば、造幣局の通り抜けは今まさに最中とか。
でも、もう今年は良いかしら。
やっぱり鯛は明石の鯛でなくっちゃあというように、
さくらは京都で、というのが、わたしの持論である。
これも、文豪のうけ売りネタなのだけれど(笑)
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