世界の人口の約7割の人々は、電話さえも使ったことがない・・
M資金をめぐる陰謀と戦いを活写した作品、話題作「人類資金」を鑑賞してきました。
キャッチコピーは、「10兆円で世界のルールは変えられるか?」
冒頭から長いナレーションで幕を開けます。「M資金」自体何のことかを、解ってもらう必要があることに加え、終戦前夜と現代が交錯するからでしょう。
金本位制(紙幣を、換金できるという制度)が崩れ、実体をもたない巨大な生き物と化していく資本主義経済の流れや、アメリカと日本の裏側での関係など、理解できないとストーリーが追えないかもしれません。
2005年、映画『亡国のイージス』で福井晴敏と阪本順治が原作者と監督として出会ったことが小説を書き下ろすこととなった発端。阪本監督が長年温めていたテーマである「M資金」を題材に再びタッグを組むことを福井氏に提案し、一方、福井氏もかつてデビュー前の習作で「M資金」を描いていたことからこの提案に共鳴、小説と映画の連動企画として動き出します。7巻で完結予定ですが、現在は4巻まで。映画は、震災後の4巻を中心に描かれています。
一般に、映像は文章の何百倍もの情報を一瞬で伝えることができるといわれています。が、そのテーマが壮大な場合や、歴史を紐解く必要のある場合は、決められた時間内に映画としてまとめることは、今作も同様、本当にたいへんな作業だと思います。
やはり、心理描写や登場人物や設定の細かな解説は、どうしても希薄になってしまいやすい。
10兆円で世界のルールは変えられるか?の問いに対する答えを、しっかりとした裏付けをもとに観客に理解してもらいながらになりますから。映像だけでは、残念ながら、私にはその根拠がいまひとつ腑に落ちなかった。原作を読んでいれば・・。
小説の方では、1巻ごとに完結するようですから、連作でシリーズ化した方がよかったのかもしれません。
http://youtu.be/4GKxiKxhn1c(予告編)
ロシアやアメリカ、中国など海外ロケを敢行。チョイ出も含め、仲代達也氏など豪華な俳優陣。ビンセント・ギャロやユ・ジテなど海外からの参加もありますが、キャステイングと脚本には問題が残るかな。詳細は割愛。
原作や着想はすばらしいので、サスペンスとして、M(香取真吾)、真舟(佐藤浩市)や 石優樹(森山未來) に迫る、敵からの絶対的な危機を感じさせる展開になっていれば・・。
俳優陣で、ひときわ異彩を放っていたのが、森山未来。「モテキ」でみせた気弱な主人公役とは、似ても似つかぬCOOLな渋い演技。
将来が楽しみな俳優さんです。
◆人類資金
2014年。敗戦目前の日本軍が秘かに隠匿したとされる莫大な秘密資産“M資金”。亡き父と同じ道を歩む真舟雄一は、そんなM資金をエサに架空の融資話で詐欺を繰り返すヤリ手の詐欺師。ある日、謎の男Mが真舟に近づき、驚愕の依頼を持ちかける。それは、日米が共同で管理運営する極秘の“財団”によって運用されているM資金を盗み出してほしい、というもの。資金の時価総額は10兆円、しかも報酬は50億円。多額の報酬と、長年追い求めてきたM資金の秘密を知りたいとの思いから、この空前の詐欺計画に乗ることを決意する真舟だったが…。