再読のための覚え書き
日蔭の村
石川達三(1905-1985)
「蒼氓」に次ぐ、史実に基づいたルポルタージュ的群像劇。東京の水瓶である奥多摩湖の成り立ちを描いた作品。
昭和初期、東京の利水を目的として、小河内ダム(奥多摩湖)の建設計画が持ち上がった。
そのために、小河内村は湖底に水没、村民たちは移転の補償を受ける約束なのだが、東京と神奈川による水利権の争いが起こり、工事は進まない。
宙ぶらりんとなった建設計画の中で、農民たちは畑作ができず困窮し、疲弊してゆく……。
「僕は自分ひとりでこの村に日蔭の村という名をつけているんです。つまり東京という大都市が発展して行く、すると大木の日蔭にある草が枯れて行くように小河内は発展する東京の犠牲になって枯れて行くのです。山の日蔭にある間はまだよかった。都会の日蔭になってしまうと村はもう駄目なんです」
2023.5.22読了
日蔭の村
新潮文庫
昭和23年6月30日初版発行
昭和32年7月27日13刷
旧仮名遣い
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