再読のための覚え書き
泥にまみれて
石川達三(1905-1985)
結婚して1年と7ヶ月の娘の園子は、夫が芸者遊びをしたことに傷つき、実家に帰ってきたが、父と母は追い返してしまう。
母の志乃は、身勝手な夫との20年の闘いとその精神的遍歴を、娘に語って聞かせる。
「恋愛と結婚の喜びに陶酔していたお前が、いま突然に陶酔の夢をたたき破られてしまった。お前は眼が醒めたのです。人生というものは愛情の陶酔の中にあるのではなくて、現実の悲しい風景のなかで闘いながら生きて行く現実の自分のなかにあるのです」
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石川達三、初読み。父権主義、マチズモな作家と聞いていて敬遠していたが、読んでみたら決して男尊女卑なわけではなく、描かれた男と女の心のベクトルは、真を突いているように思われる。
箴言のちりばめられた作品。
2022.2.23読了
泥にまみれて
新潮文庫
昭和29年5月15日初版発行
昭和32年3月20日12刷
旧仮名遣い
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