長島 潤 Sing a mindscape

jun nagashima singer-songwriter

アレヴィ「愛の司祭」

2022-03-23 10:00:00 | 

再読のための覚え書き


愛の司祭

リュドヴィク・アレヴィ(1837-1908

山内義雄訳


コンスタンタン老神父は、フランスの小さな田舎町ロングヴァルで司祭をしていた。


ロングヴァルの侯爵夫人が亡くなると、その広大な地所を、莫大な財産を持つアメリカ人のスコット夫人とその妹のベッチナが買い上げ、移り住んできた。


神父が名付け親となった砲兵中尉のジャンは、ベッチナと密かに心を通わせるが、年若い二人はそれを口には出せなかった……


「何しろ二人は、なすべきところにしたがい、真実にしたがって行動していたのだった。すなわち、ベッチナのほうでは、心をなげだしてかかっていたのにたいし、ジャンのほうでは、それとたたかっていたのだった。」


・・・・・・・・・・・・


義務と名誉を重んじるジャンの誠実さと、純粋な心と賢さで大胆に行動するベッチナの魅力が織り成す愛の物語。



2022.3.21読了


愛の司祭

角川文庫

昭和33910日初版発行



# #読書 #文学 #文庫 #アレヴィ #愛の司祭






横光利一「春園」

2022-03-21 09:33:00 | 

再読のための覚え書き


春園

横光利一(1898-1947


3年暮らしたフランスから日本に帰ってきた泰太郎は、友人の安藤から、一人の少女を紹介された。


それは、安藤の頼みで、泰太郎がかつて金銭の援助をしたことのある、身寄りのない美紀子だった。


安藤はしきりに美紀子の背景を隠したがるのだが、泰太郎は美紀子の世話をしながら、彼女の出自について気付いてゆく。


「あたしね、ほんとうはお父さんを知っちゃったの。でも、誰もあれがお前のお父さんだって、教えてくれた人がないんですのよ。矛盾してるでしょう。あたし、そんな人たちの勝手な真似の中から、生れて来たんだと思うと、そんならあたしも、どんなことがあったって、知ってやるものかと思っちゃいましたの」



2022.3.18読了


春園

新潮文庫

昭和24610日初版発行

昭和4221521

旧仮名遣い



# #読書 #文学 #文庫 #横光利一 #春園






広津柳浪「今戸心中」

2022-03-19 10:23:00 | 

再読のための覚え書き


今戸心中

広津柳浪(1861-1928


吉原遊廓の花魁である吉里は、馴染みの客の平田と、相思相愛の関係であった。


しかし、平田は父親の事業の失敗のため、吉里を捨て、郷里に帰ってしまった。


座敷には、吉里を慕い求めて、妻と離縁してまで通い詰めている善吉という男がいた。


吉里は、善吉の絶望を自分の絶望と重ね合わせ、周囲の目にも善吉との関係が深まるように思われたのだが……


「深刻小説」と言われた広津柳浪の、花柳界に生きる人々の心情の機微を描いた秀作。



2022.3.18読了


今戸心中

岩波文庫

昭和44515日初版発行

昭和4411152



# #読書 #文学 #文庫 #広津柳浪 #今戸心中






永井龍男「青梅雨」

2022-03-18 12:14:00 | 

再読のための覚え書き


青梅雨

永井龍男(1904-1990


《冬の日》

登利の娘は、夫との子どもを産んで2年後に亡くなった。登利は、まだ年若い娘婿と孫の新生活のために、住み慣れた家を出て行く決心をする。


《青梅雨》

老年と中年の4人家族が、事業の失敗を苦にして服毒心中した。その最後の日の、彼らの柔らかな会話。


他、人々の心情の動きを切り取る11編。



2022.3.17読了


青梅雨

新潮文庫

昭和44515日初版発行

昭和4411152



# #読書 #文学 #文庫 #永井龍男 #青梅雨






石川達三「望みなきに非ず」

2022-03-14 09:35:00 | 

再読のための覚え書き


望みなきに非ず

石川達三(1905-1985


矢吹さんは、元海軍大佐で、巡洋艦の艦長だったが、戦後公職追放となり、今は失業中である。


一方、矢吹さんの妻は、向こう隣の戦争未亡人とともに、矢吹家に居候する学生の手ほどきを受けながら、ダンスパーティーの準備に励んでいる。


また、居候の住む離れには、学生たちが小賢しい理屈をこねて籠城する。


矢吹さんは、かつての名誉と権威を捨て、戦後の社会になんとか折り合いをつけようと奮闘していた。


「今や生きることは戦いである。艦隊を牽いて戦闘海面に乗り出すとき、心のなかには格別の戦いもなかった。智慧と判断と機械とで戦って、それで済んだ。大戦争が終って自分一個を生かす段になってみると、戦いは矢吹さんの心の中にあった」



2022.3.13読了


望みなきに非ず

新潮文庫

昭和24710日初版発行

昭和39101028

旧仮名遣い


# #読書 #文学 #文庫 #石川達三 #望みなきに非ず