asayanのブログ

趣味を中心に、感じたことを書いていこうと思います。

『断腸亭日乗』より文を抜粋

2016-02-21 10:30:49 | 日記
荷風散人、齢六十七の『断腸亭日乗』昭和二十年の日誌より。

目に映る箇所を、1月から2月の頃を、適当に抜粋せり。


  曇りて風なし。この日誌も今は数重なりて二十九巻とはなりぬ。

  寒気甚だし。黄昏に去る。

  晩間細雨やがて雪となるべし。

  日はいつか傾きまた晩飯の仕度すべき頃とはなるなり。

  今年の冬ほど読書に興を得たること未だ嘗て無し。

  宵月の光冴え渡るころとなれり。七八日ころの月なるべし。

  余が偏奇館もいつ取払の命令を受くるや知るべからず。

  雪もよひの空寒し。台所の水晝の中より凍りて解けず。

  雪いつか積りて空は晴れたり。

  空しく家に帰へれば日は徐ろに暮れんとす。

  夕焼けの空いかにも春らしくなりしが風猶寒し。

  古雑誌を閲読して深更に及ぶこと毎夜の如し。

  むかしを憶うて暗涙を催す。

  日光漸く春らしくなりて裏庭の残雪も解け失せたり。

  午に近く眠よりさむるに灰の如く雪降りゐたり。

  晴れて日光少しく暖になりぬ。

 以上、抜粋なり。


目に止まりたる表現を少しばかり書き留めんと思いしが、やや数多くなり果てつ。

古語文の感興、新鮮に思ゆ。

甚だ愉快なり。たまにしてみんとするなり。
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