昨晩、お風呂から上がってラジオをつけた。
文化講演会の放送が流れていた。
短歌のことについて歌人ふたりが対談していた。
長塚節の短歌が紹介された。
短歌から小説「土」の話に移った。
「土」は文庫本を持っているが、まだ完全に読み終わっていない。
何度か読み始めたのだが、その度に頓挫している。
対談でも「現在、この小説を読める人は少ないだろう」という意味のことを語っていた。
確かにその通りだと感じた。
放送が終了して、書棚から文庫本を取り出した。
「『土』に就いて」と題した序文を夏目漱石さんが書いている。
その中に、自分の娘さんに「土」を読むことを推奨している。
「おもしろいから読めといっているのではない、苦しいから読めと告げたい」と。
夏目漱石さんは「土」を前後半日と中一日を丸潰しにしてようやく業をおえたと記述している。
漱石さんは3日間で読み終えたんだなあと驚嘆した。
そこで一念発起、読んでみようと。
3日では無理だろうけど、英語学習などをちょっと休んで、「土」だけに専念してみよう。
そして、あれから少しずつ読み進めて、四まで来た。
漱石さんの仰る通り、苦しい部分もある。
表現がわかりずらい箇所があったり、方言がわかりにくかったり、時代の相違で物が何かわからなかったり、重さを計算する単位やお金の価値が全くわからなかったりする。
だけど、ハッとする文章もいろんなところに潜んでいる。
お品さんの臨終の描写は、真実に迫り悲哀を感じる。
葬式の表現も感情を抑えているようだが、心に訴えかける。
「土」の高く評価される長所に少しでも触れることが出来たなら、儲けものだと思う。
ここで話は突然変わるけれど、プロの碁を棋譜並べしていて、ハッとする妙手に出会うことがある。
それを何の解説もなしに、自分で感じることが出来た時は、喜びを感じる。
そんな感覚を、「土」に感じた。
今度こそ、「土」を読了したい。