4-6月GDPは年率27.8%減、戦後最悪- 3期連続マイナス
占部絵美-
個人消費8.2%減、設備投資1.5%減、外需寄与度マイナス3.0%
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極めて悪い数字、経済正常化までに時間要する-第一生命経研の新家氏
2020年4-6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率で27.8%減と、新型コロナウイルス感染拡大の影響で国内外の経済活動が停滞する中、GDP統計をさかのぼれる1955年以降で最大の落ち込みとなった。マイナス成長は3四半期連続。内閣府が17日発表した。
4月に緊急事態宣言が発令され、外出自粛や休業要請でGDPの過半を占める個人消費が大幅に縮小したほか、企業の設備投資や輸出も減少した。
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![3四半期連続のマイナス成長](https://assets.bwbx.io/images/users/iqjWHBFdfxIU/iD7gYZe8T0iI/v2/pidjEfPlU1QWZop3vfGKsrX.ke8XuWirGYh1PKgEw44kE/740x-1.png)
西村康稔経済再生担当相はGDP発表後の記者会見で、「4月、5月に緊急事態宣言を発出し、いわば人為的に経済を止めていた状況であり、その影響でこうした厳しい結果となっている」と述べる一方、特別定額給付金など各種支援策の下支え効果もあり、欧米主要国に比べて「減少幅は抑えられている」と説明。ソフトウエアを中心とした設備投資の底堅さ、物流や再開発に期待を示した上で、「4月、5月を底として内需主導で成長軌道に戻していくことができるよう、経済財政運営に万全を期す」と語った。
詳細(内閣府の説明)
- 実質GDPは統計をさかのぼれる1955年以降で最大の落ち込み、現行基準の1980年以降で過去最低の伸び率
- 個人消費は現行基準の1980年以降で過去最低の伸び率
- パソコンやエアコンが増加に寄与した一方、外食や旅客輸送、娯楽、宿泊が減少に寄与
- 設備投資は自動車などの支出減少が寄与
- 純輸出の寄与度、1980年以降で過去最低の伸び率
- 輸出は現行基準1980年以降でリーマン時09年1-3月期の25.5%減に次ぐ低い伸び率
- 輸入は海外旅行消費や自動車が減少に寄与、パソコンは増加寄与
エコノミストの見方
第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミスト:
- 予想通りではあるが極めて悪い数字。消費、輸出が緊急事態宣言や海外のロックダウン(都市封鎖)によって大きく押し下げられた
- 7-9月期は10%以上の成長が見込まれるが、大きな落ち込みを全てカバーすることにはならない。経済の正常化までには時間を要する
- 足元で感染者数が増えているなど、戻りの強さについては不透明感が強い
- これほど経済活動が下がると今後の雇用や設備投資の先行きについて不安が残る。給付金などでこらえてはいるが耐え切れず、さらに多くの企業が投資を縮小したり雇用を調整してもおかしくはない
ニッセイ基礎研究所の 斎藤太郎経済調査部長:
- 新型コロナ感染拡大の影響で4-6月期は消費と輸出を中心に内外需ともに過去最悪のマイナス成長に落ち込んだが、月別にみると景気は5月に底を打ち、6月は持ち直している。緊急事態宣言が5月下旬に解除されたことで、6月の水準は4-6月期の平均よりもかなり高くなっており、先行き7-9月期の成長は年率で10%を超えてくるとみている
- ただ7月、8月とコロナ陽性者が増え、地方自治体を中心に自粛要請や緊急事態宣言が出されており、6月に戻った後の景気の回復ペースは極めて鈍い、もしくは足踏み状態にならざるを得ない。7-9月期が年率10%を超える成長となっても、経済の正常化は遅れているという評価になる
- 自粛を緩めない限り景気は回復しないが、今後の政策対応としては、春の補正予算と同様に家計と企業の救済策に絞らざるを得ないだろう
IHSマークイットの田口はるみ主席エコノミスト:
- 消費が予想よりも悪かった。やはりモノの動きだけでつかめないサービスの影響が強かったと思う。設備投資はこれから影響が広がってくる可能性があるだろう
- 消費は第3四半期は戻すと思う。ただ東京などでの感染拡大でビジネスへの自主規制の可能性を考えると、回復は弱まってしまうリスクがある
- 大規模ではなくても第3次補正予算というのは年後半か来年の初めにやってくる可能性はある。まだ需要喚起に集中するのは難しいだろう。感染拡大が収まらないなら事業継続にウエートを置いた政策にならざるを得ない
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![4-6月期GDP 年率ー27.8% リーマン後超え 最大の落ち込みに](https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200817/K10012570301_2008171205_2008171236_01_02.jpg)
これが1年間続いた場合の年率に換算すると、マイナス27.8%となり、世界的な金融危機につながったリーマンショックのあとの2009年1月から3月に記録したマイナス17.8%を超え、比較可能な1980年以降で最大の落ち込みとなりました。
![](https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200817/K10012570301_2008171221_2008171236_01_03.jpg)
「輸出」も大きく落ち込んでマイナス18.5%でした。
これは、アメリカやヨーロッパをはじめ海外経済が悪化したことから、自動車などの輸出が減少したことに加えて、輸出に計上される外国人旅行者の消費が急激に落ち込んだためです。
このほか、「企業の設備投資」がマイナス1.5%、「住宅投資」はマイナス0.2%となりました。
一方、物価の変動を反映させた名目のGDPの伸び率も、前の3か月と比べてマイナス7.4%、年率に換算するとマイナス26.4%の大幅な落ち込みとなり、新型コロナウイルスが日本経済に与えた打撃の大きさを改めて示す結果となりました。
西村経済再生相「生活を守ることに全力」
![](https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200817/K10012570301_2008171235_2008171236_01_04.jpg)
今後については、「引き続き、厳しい状況にある方々への支援を第一に考えて、雇用を守る、生活を守るということに全力をあげていきたい」と述べたうえで、内需主導の形で日本経済を成長軌道に戻したいという考えを示しました。
一方、今後の経済対策として消費税率の引き下げを検討する考えがあるかと、問われたのに対し、西村大臣は「消費税は全額が社会保障費として全世代型社会保障の改革に活用しているところであり、こうしたことを十分に頭において考えなければならない。今後、さまざまな状況、海外の状況も見ながら、経済運営に万全を期していきたい」と述べました。
専門家「“2番底”をつけるリスクも」
今後の見通しについては、「6月に入って個人消費や輸出、生産の指標は改善の動きがみられ7月も続いている。このため、7月から9月までのGDPはプラス幅が小さい可能性はあるが、ほぼ確実にプラス成長に回帰する」との見方を示しました。
その一方で「8月に入って感染者数の増加が目立ち、景気の動きが再び鈍ってきている。感染拡大が続けば、企業の倒産が増えて失業者も増加する。所得が減少すれば消費の抑制にもつながる。この動きが秋以降も続けば10月から12月のGDPは極めて低い水準、またはマイナス成長となり、いわゆる“2番底”をつけるリスクも否定できない」と述べ、景気の下振れリスクは依然、根強いと指摘しています。
過去の大きな落ち込み
次いで、消費税率が17年ぶりに5%から8%に引き上げられた2014年4月から6月の年率マイナス7.5%。
そして、消費税率が8%から10%に引き上げられた去年10月から12月までが、年率マイナス7.0%でした。
東日本大震災が発生した2011年の1月から3月までは、年率マイナス5.5%で、今回はこうした過去の経済危機などを超える大幅な落ち込みとなりました。
さらに統計の出し方が違うため、単純に比較はできませんが、石油危機直後の1974年1月から3月の年率マイナス13.1%をはじめ、記録が残っている1955年までさかのぼっても、今回のGDPは最大の落ち込みとなっています。
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欧米各国でも歴史的な下落
このうち、感染拡大に歯止めがかからないアメリカでは、前の3か月と比べた実質で、年率マイナス32.9%と、四半期の統計を取りはじめた1947年以降、最悪の水準となりました。
また、ドイツやフランスなどのユーロ圏19か国は、年率マイナス40.3%、イギリスも年率マイナス59.8%となるなど、各地で歴史的な落ち込みとなっています。
欧米各国では、感染拡大を抑えるため、ロックダウン=都市の封鎖を行っていたため、個人消費や企業の生産、観光などへの深刻な打撃が反映された形です。
一方、中国では、去年の同じ時期と比べてプラス3.2%となり、ことし1月から3月にマイナスに転じたあと、1四半期で再びプラスを回復しました。
いち早く経済活動を再開させ、政府による財政出動などで景気を下支えした結果とされますが、感染拡大前の水準には及ばず、回復への力強さを欠く状況が続いています。
政府の名目GDP目標達成 遠のく
内閣府のまとめによりますと、直近では去年7月から9月までの名目GDPが、季節的な要因を加味したうえで1年間の金額に換算すると、557兆8360億円となり、この目標に近づいていました。
しかしその後、GDPの伸び率はマイナスに転じ、去年10月から12月までが549兆6930億円、ことし1月から3月までが、546兆9530億円に減っていました。
そして、歴史的な落ち込みとなった、ことし4月から6月までは506兆6410億円と、一気に40兆円余り減少しました。
政府の目標までには、GDPを100兆円近く増やすことが必要で、去年の秋以降、達成が遠のいています。