ヘンリー王子回顧録に識者ら一斉反発 「最後のとどめを刺す」「人生で最悪の間違い」
著者:森 昌利

3月の暴露インタビュー番組では夫妻で、米俳優のポッドキャスト番組とApple TV+のドキュメンタリーシリーズでは夫単独で、暴露や王室批判を続けたヘンリー王子とメーガン妃夫妻。今度は「この本は王子として生まれた自分ではなく、1人の男として書いている」というフレーズとともに回顧録の出版を発表した。さらなる暴露の予感に英国の著名王室記者や王室作家たちは揃って警鐘を鳴らしている。また、父チャールズ皇太子が受けた衝撃はひときわ大きいとする指摘もある一方、王子の“メインターゲット”は皇太子ではないかとする推測もあるようだ。
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王室側の衝撃を訴える情報筋 モーガン氏はやはり称号剥奪を提唱
回顧録出版発表から二夜明けた現地時間7月21日、英メディアはヘンリー王子のさらなる決断に猛反発する記事で満載になった。一体どのような内容になっているのか、まずは英大衆紙「デイリー・メール」が掲載した一連の記事から順に見てみよう。
同紙の王室編集者レベッカ・イングリッシュ氏は、今回の回顧録出版で「王室内には『実に不敬』という意識が広がっている」と記し、バッキンガム宮殿を襲った衝撃の大きさを伝えた。
王室が最も激怒したのは「明らかに意図的な」出版のタイミングだという。出版社の発表ツイートによると、出版は2022年の後半。しかしこの年はエリザベス女王の戴冠70周年記念に当たり、かねてから報じられている通り多数の記念式典やイベントが企画されている。回顧録の内容次第では前人未到となる偉業が成し遂げられる年を貶め、耳障りな雑音を生み出すのは確実で“最悪”と言える。
また同氏は、こうした王室上級スタッフの非難の声が高まれば「ヘンリー王子とメーガン妃の戴冠70周年記念式典招待が取り消される可能性もある」と結論付け、回顧録出版が王室と王子夫妻の関係を完全に終焉させる可能性を警告した。
メーガン妃の天敵である有名司会者、ジャーナリストのピアーズ・モーガン氏もコラムを寄稿。「サセックス公爵夫妻(ヘンリー王子夫妻)がエリザベス女王の『決して不平を言わず、説明もせず』という有名なモットーを『常に不平を言い、説明しまくり、愚痴を漏らし続ける』に変えた」と痛烈な筆致で批判した。そしてまたここで再び「2人から称号を取り上げるべき」と強硬に主張している。
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チャールズ皇太子はカミラ夫人が悪く書かれる可能性にも憔悴?
チャールズ皇太子との関係が「完全に崩壊する」と指摘したのは同紙のコラムニスト、ダン・ウートン氏だ。複数の王室内ソースに取材した同氏はまず、今回の回顧録出版が「ヘンリー王子が自分自身に最後のとどめを刺す」という発言を引き出し、王室内の憤まんを明らかにした。
情報筋はさらに、チャールズ皇太子が「まったく知らされなかったことにショックを受けている」とも明かし、かつては仲良しで知られた次男王子との関係が悪化の一途をたどっていることに、皇太子が大きな失望を味わっているとした。実のところ皇太子は、ウイリアム王子よりもはるかにうまくヘンリー王子と付き合っていたという。
また、ヘンリー王子がカミラ夫人を毛嫌いしていることは有名で、皇太子は回顧録で自分の妻が「非常に悪く書かれる」可能性にも憔悴しているという。王子の暴露で近年は落ち着いているカミラ夫人の世評がまた激しく凋落すれば、皇太子が望んでいると報じられている王妃の座にも支障が出ることは確実だろう。
ダンカン・ラーコム氏も英雑誌「OK!」に対し、「ハリー(ヘンリー王子)がこれまでで最も壮観な方法で、王室の規律を破ったことが明らかになった」と指摘した上で、ヘンリー王子の“真実爆弾”がメインターゲットとする存在の1人が皇太子だと述べている。
回顧録出版はメーガン妃のアイデアないかという推測も
2017年にヘンリー王子の公式伝記本「Harry:Conversations with the Prince(ハリー:王子との会話)」を上梓した王室作家のアンジェラ・レヴィン氏も、もちろん黙ってはいない。
英ラジオ局「talkRADIO」の番組に出演した同氏は、「本を書いて自分の考えを主張するというのは彼女(メーガン妃)の得意とすること」と語り、回顧録出版がメーガン妃のアイデアではないかと推測した。
王室専門誌「マジェスティ」の編集長イングリッド・シュワード氏も、英大衆紙「ザ・サン」に寄稿。ヘンリー王子の母ダイアナ元妃もインタビュー出演や自叙伝出版で元夫の皇太子を公に批判したが「のちに後悔した」として、回顧録出版は「ハリー(ヘンリー王子の愛称)の人生で最悪の間違いかもしれません」と指摘。同じ過ちを犯さないことが賢明だと促している。
「どうやらまだ1人の男にはなり切っていないようだ」
最後に英大衆紙「デイリー・エクスプレス」が掲載した記事を紹介しよう。豪州のテレビリポーターであるピーター・フォード氏のコメントが「もっともだ」と話題になっているという。
同氏は「ハリーの『この本は王子として生まれた自分ではなく、1人の男として書いている』というメッセージが気に入った」と前置きしつつ、「しかしこのメッセージに『プリンス・ハリー、サセックス公爵』と署名している」と指摘。
「どうやらまだ1人の男にはなり切っていないようだ」と強烈な一言で発言を締めて、回顧録出版発表にも現れたダブルスタンダードに苦笑していた。
(イギリス・森昌利/Masatoshi Mori)
ヘンリー王子の称号使用 米専門家が鋭い指摘 「1人の男と言いながら…」
著者:森 昌利

「この本は王子として生まれた私ではなく、1人の男として書いている」……とは、ヘンリー王子の回顧録出版発表に添えられていたメッセージ。しかし、気になったのはその署名だ。「プリンス・ハリー、サセックス公爵(Prince Harry, The Duke of Sussex)」と、「王子として生まれた私ではない」にもかかわらず、王子と公爵の称号を使っている。この件について大衆からも矛盾を指摘する声が上がる一方、米国人コメンテーターが放った一言も「もっともだ」と英国で話題になっている。
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「一般大衆もこの署名には違和感を感じていると思う」
突如発表されたヘンリー王子の回顧録出版。その内容予測に加えて目立った指摘といえば、発表ツイートに添えられていたメッセージの「称号」だった。米国人の王室専門家でテレビコメンテーターのモーリー・マルシャイン氏も、ポッドキャスト番組「Royally Us」でこれを指摘している。
英大衆紙「デイリー・エクスプレス」が掲載した記事によると、同氏は「ハリー(ヘンリー王子の愛称)は『この本は王子として生まれた私ではなく、1人の男として書いている』と言いながら、『プリンス・ハリー、サセックス公爵』と署名していますが、ここは米国。私たちは称号なんて使いません」と続けて、王子の署名を痛烈に皮肉った。
この発言に対し司会者のジョー・ドレイク氏も「一般大衆もこの署名には違和感を感じていると思う。『自分は1人の男』と言いながら、『王子』と署名するのはいかがなものか」と反応した。
またマルシャイン氏は自身がライター、編集者である立場から「ゴーストライターに『クリシェ』(ありがちな決まり文句)の使い方について、ハリーとしっかり話し合うことを望みます」とアドバイス。当たり前の使い古された表現を連発して、つまらない読み物にならないよう忠告した。
(イギリス・森昌利/Masatoshi Mori)
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【写真】「1人の男として書いている」としたヘンリー王子のメッセージ だが署名には「王子」と「サセックス公爵」の称号を使っている

ヘンリー王子の回顧録に旧友たちが戦々恐々 “一方的な内容”なら沈黙破る可能性も
著者:森 昌利

来年後半に出版予定の回顧録で「王子ではなく、1人の男として」真実を告げると宣言したヘンリー王子。幼少時代から“王室引退”まで、自らの目で見た“誠”を明かすと豪語した形になり、王室関係者はもちろん各方面からの困惑や反発が報じられた。それはどうやら、かつて机を並べた学友たちも同様らしい。若かりし頃に過度の飲酒やドラッグ使用の経験がある王子の暴露とあって、王子が学んだイートン校やその後に属した軍隊の友人たちも怯えているという。
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「仲間を貶める記述があれば沈黙を破る人間が必ず現れる」
ヘンリー王子がこれまで“所属した外部集団”には、1998年から2003年まで在学した全寮制名門パブリックスクールであるイートン校と、2005年に入学した陸軍士官学校から始まる英陸軍がある。
どちらもかけがえのない友人を作った集団だが、英大衆紙「デイリー・メール」が掲載した記事によると、イートン校時代と軍隊時代の友人たちは、王子の回顧録出版発表に肝を冷やしているという。
同紙に匿名で取材に応じた王子の友人は「我々の中には、彼(ヘンリー王子)の快楽的だった若かりし頃の過ちについて詳細を明かされるのではないかという恐れと、それによって起こる『混乱』を憂慮する空気があります」と証言。
また別の友人筋は「ハリー(ヘンリー王子の愛称)の友人たちは(メディアの取材に応じないことで)彼に対する忠誠を守ってきました……。これまでのところ」と意味ありげに語っている。
さらにある情報筋は、「もしも例の回顧録の中に、学生時代の旧友や軍隊時代の仲間を貶めるような記述があった場合、沈黙を破る人間が必ず現れると思います」と語り、一方的または王子にだけ都合のいい暴露は必ず反論を呼ぶと主張した。
それもそうだろう。王子の旧友たち、例えばイートン校の同窓生は言うまでもなくエリート揃いで、30歳半ばを過ぎた現在は責任ある仕事や役職に就いている人間がほとんど。若かりし頃の愚行を今さら明かされても困るに違いない。また、風紀や規則に厳しい軍関係者も同様。過去の規則違反などを明かされてはたまらないだろう。
王子はこれまで、メディアに何かを語った友人たちを“捨てて”いるという。2012年に王子は米ラスベガスで“全裸での乱痴気騒ぎ”というスキャンダルを起こしているが、この際に同席していた親しい友人でさえ、2018年の結婚式には呼ばなかったそうだ。情報筋は「友好的なメールの返事をもらえていない」友人もいると証言している。
果たして王子の告白はどこまで“真実”で、過激なものになるのか。それともこうした友人たちや王室、その他の関係者から受けた圧力に負けて腰砕けの内容になるのか。来年の後半、エリザベス女王の即位70周年に発行される回顧録の内容には、注目が集まる一方だ。
(イギリス・森昌利/Masatoshi Mori)
ヘンリー王子夫妻の非公式伝記に“1年分”追加 ダイアナ元妃の命日に加筆改訂版発売へ
著者:森 昌利
タグ: メーガン妃, ヘンリー王子, 森昌利, ロイヤルファミリー

“王室引退”直後の昨年8月、メーガン妃の“チアリーダー”と呼ばれる擁護派ジャーナリスト、オミッド・スコビー氏が、米国人ジャーナリストであるキャロライン・デュランド氏との共著として出版した「Finding Freedom(日本語版「自由を求めて ハリーとメーガン 新しいロイヤルファミリーを作る」扶桑社刊)」。その加筆改訂版(英語版)が8月31日(火)、ダイアナ元妃の命日に発売されることが明らかになった。
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昨夏の流産や今年3月に放送された暴露インタビューの舞台裏も
「Finding Freedom」の初版が出版されたのは昨年の8月11日。2人が出会った2016年から世界に衝撃を与えた“王室引退”の2020年前半までを綴って世界の話題をさらった。今回の加筆改訂版では“王室引退”で“フリーダム(自由)”になってからもメディアの注目を集め続けた激動の1年が追加される。
本書を出版するハーパー・コリンズ社のウェブサイトによると、加筆改訂版には米国移住と昨年11月に妃が米紙「ニューヨーク・タイムズ」に発表した手記で明らかにされた昨夏の流産、今年3月に放送された暴露インタビューの舞台裏や、フィリップ殿下の訃報に接した王子夫妻の傷心などが綴られているという。
さらには「米国で関わった慈善活動やビジネス、そして(夫妻が立ち上げた慈善団体)アーチウェルの将来」なども網羅されおり、大きな話題になったネットフリックスやスポティファイとの契約にも踏み込んだ内容のようだ。
また発売日は8月31日。奇しくもヘンリー王子の母、ダイアナ元妃が1997年の仏パリで非業の死を遂げた命日だ。偶然とは考えにくい日付だけに、実際の内容に関する注目度はにわかに上昇している。
(イギリス・森昌利/Masatoshi Mori)
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【写真】英語以外にもドイツ語や日本語など14の言語版が発売されている「Finding Freedom」 共同執筆者のスコビー氏によると英国で2番目に売れた王室の伝記

ヘンリー王子が天然キャラの風刺アニメ ジョージ王子らの描き方に批判の声も
著者:森 昌利

ロイヤルファミリーが風刺の対象となるのは無論、今回が初めてではない。しかし、米ケーブルテレビ局の動画配信サービス「HBO Max」が制作した王室風刺アニメ「The Prince」の予告編が物議を醸している。それはウイリアム王子夫妻の子どもたちの3人、ジョージ王子、シャーロット王女、ルイ王子の“不遜”な描かれ方だ。そのため、子どもたちを巻き込んだ米国人プロデューサーの手法にも非難の声が。また、ヘンリー王子もカリフォルニアの引っ越し先で「ここは僕が住んだ中で一番小さな宮殿だ」とメーガン妃に語りかける場面が公開されている。
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評論家は子どもをネタとして扱ったことに注意喚起
29日からストリーミングが開始された風刺アニメ「The Prince」は、ウイリアム王子とキャサリン妃の長男で、王位継承順位第3位のジョージ王子が主人公。ジョージ王子は高価な趣味を持ち、ユーモアのセンスがなく、家族のことを良く思っていない子どもの暴君として描かれている。
予告編を見るとロイヤルファミリーが辛辣に皮肉られており、もちろんカリフォルニアに移住したばかりのヘンリー王子も登場する。王子は部屋の中で「ここは僕が住んだ中で一番小さな宮殿だ」とつぶやくように語りかけると、「だってここはアパートよ」とメーガン妃が困惑顔で対応。米国に移住しても英国の王室生活が続くものと思っている呑気な王子が描かれている。
しかも、そのヘンリー王子役の声優を務めるのは、英有名俳優で王子一家との親交も伝えられるオランド・ブルーム。他にも豪華俳優陣が名を連ね、制作発表された時から大きな話題となっていた。
英大衆紙「デイリー・メール」電子版が掲載した記事によると、この作品は米ヒットアニメ「Family Guy」のコンサルティングプロデューサーと脚本を務めたゲイリー・ジャネッティ氏が、500万ポンド(約7億8500万円)もの予算をかけて制作した新作アニメ。しかし、批判の声が巻き起こっているという。
それはウイリアム王子3人の子どもたちの描かれ方だ。主役のジョージ王子は言わずもがな。シャーロット王女もわがままキャラで、ルイ王子も非常に粗暴に描かれており、不評を呼んだ。
テレビ評論家のキャサリン・シン氏は「ジョージ(王子)はまだ子どもで、こうした風刺に対応できないということを頭に入れておくべきです」と発言。さらに「しかし自分がどういう風に描かれているか、それは理解できる年齢です」とも語り、子どもをネタにした米国人プロデューサーに注意喚起した。
その一方で、声優として「ジョージ王子」を演じてもいるジャネッティ氏は「彼(ジョージ王子)も“すごく面白い”と思ってくれると願っている。こうした風刺も愛情があってのもの。ユーモアのセンスを持って応じてほしい」とツイッターに投稿して、周囲の理解を求めている。
(イギリス・森昌利/Masatoshi Mori)
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【動画】風刺アニメ「The Prince」の予告編 ジョージ王子が暴君に 天然キャラなヘンリー王子にメーガン妃も困り気味に描かれている