今回も昭和5年『新進軍歌全集』からの紹介です。作詞者・作曲者・メロディなどは不明。
兵器尊重の歌
一
兵器は我等の魂ぞ
兵器は我等が生命ぞ
我等が錬(きた)へし精神と
我等が磨(みが)きし武技は皆
皇国(みくに)に事のあらん時
兵器によりて達せらる
炎熱骨を焼くの時
磨きに磨きし射撃術
寒風膚(はだ)を破るとき
練りに練りたる剣術も
或(あるい)は歩哨に斥候に
又は行軍散兵戦
兵器あらずと思ひなば
如何で任務の果たすべき
いざ拭(ぬぐ)はなん我兵器
いざ磨かなん我兵器
二
兵器を手入する時は
其の方法をよく守り
各部の用途を考へて
決して誤ること勿れ
朝夕二回の手入には
使(つかい)しところ拭ふ可(べ)し
射撃の前は膅中(とうちゅう)に ※注1
些(すこ)しの塵も止(とど)むるな
射撃の後(のち)は殊更に
膅中及び薬室を
二度(ど)も三度(ど)も数度(いくたび)も
手入をするが肝心ぞ
また撃茎(げきけい)や照準器 ※注2
故障の有無を検査せよ
風雨烈(はげ)しき演習や
塵立ちたる其の時は
鉄部の摩滅なき様に
革具に殊(こと)に注意して
細(こまか)き点を大切に
手入をす可き物なるぞ
頭上に物のあるときは
銃を下(おろ)して通過せよ
つまづき転(ころび)し其の時も
決して銃を手放すな
酸類塩気(えんき)水分は
鉄に大害あるものぞ
兵器の錆のあるものは
心に錆の有(ある)と知れ
兵器破損するならば
心の痕(きず)と心得よ
三
被服に戦時用あれど
兵器にかゝる区別なし
日頃手にする此(この)武器が
敵を破らん其(その)武器ぞ
三八式の小銃は
広き世界に比類なし
三十年式銃剣は
鉄をも貫く刃(やいば)なり
かゝる精(くは)しき兵器もて
我等が進む其の前に
如何なる敵の有可(あるべ)きぞ
如何なる城の有可きぞ
※注1:底本では「曠中」に「とうちゅう」のルビが振ってあるが、「曠」を「とう」とは読めないため誤植と思われる。
「膅中」とは銃身・砲身内部のことを指す用語で、砲身内部で砲弾が暴発する事故のことを「膅中爆発」などと称する。
※注2:「撃茎」は火砲の撃発装置の一部分。ばねや撃鉄の力によって、発火装置の雷管に衝撃を与え発火させるためのもの。
一目見て分かる通り、二番だけが異様に長いです。数えてみたところ、一番と三番はそれぞれ十六行、二番は三十行でした。
本来四番まであったものを編集者が二番と三番を誤ってくっつけてしまったのかとも考えたのですが、それなら三十二行になっているはずです。
編集者が二行飛ばした上で二番と三番をくっつけたのか、それとも最初からこの形なのか。最初からこの形であったとすればメロディラインも変則的になるでしょうし、そもそも曲がついていたのかどうかさえ怪しくなってきます。どこかに楽譜が残っていないでしょうか…。
歌詞の内容は一番と三番が兵器を礼賛するもの、二番が兵器の実際的な管理・手入れに関する注意事項となっています。
注目したいのは三番に「三八式の小銃」「三十年式銃剣」という具体的な兵器の呼称が入っていることでしょうか。「銃剣」や「銃」という形でならこれらの登場する軍歌というのは相当数ありますが、「三十年式銃剣」というような形で歌詞に具体的な兵器が登場しているのはかなり珍しい部類に入ると思われます。
兵器尊重の歌
一
兵器は我等の魂ぞ
兵器は我等が生命ぞ
我等が錬(きた)へし精神と
我等が磨(みが)きし武技は皆
皇国(みくに)に事のあらん時
兵器によりて達せらる
炎熱骨を焼くの時
磨きに磨きし射撃術
寒風膚(はだ)を破るとき
練りに練りたる剣術も
或(あるい)は歩哨に斥候に
又は行軍散兵戦
兵器あらずと思ひなば
如何で任務の果たすべき
いざ拭(ぬぐ)はなん我兵器
いざ磨かなん我兵器
二
兵器を手入する時は
其の方法をよく守り
各部の用途を考へて
決して誤ること勿れ
朝夕二回の手入には
使(つかい)しところ拭ふ可(べ)し
射撃の前は膅中(とうちゅう)に ※注1
些(すこ)しの塵も止(とど)むるな
射撃の後(のち)は殊更に
膅中及び薬室を
二度(ど)も三度(ど)も数度(いくたび)も
手入をするが肝心ぞ
また撃茎(げきけい)や照準器 ※注2
故障の有無を検査せよ
風雨烈(はげ)しき演習や
塵立ちたる其の時は
鉄部の摩滅なき様に
革具に殊(こと)に注意して
細(こまか)き点を大切に
手入をす可き物なるぞ
頭上に物のあるときは
銃を下(おろ)して通過せよ
つまづき転(ころび)し其の時も
決して銃を手放すな
酸類塩気(えんき)水分は
鉄に大害あるものぞ
兵器の錆のあるものは
心に錆の有(ある)と知れ
兵器破損するならば
心の痕(きず)と心得よ
三
被服に戦時用あれど
兵器にかゝる区別なし
日頃手にする此(この)武器が
敵を破らん其(その)武器ぞ
三八式の小銃は
広き世界に比類なし
三十年式銃剣は
鉄をも貫く刃(やいば)なり
かゝる精(くは)しき兵器もて
我等が進む其の前に
如何なる敵の有可(あるべ)きぞ
如何なる城の有可きぞ
※注1:底本では「曠中」に「とうちゅう」のルビが振ってあるが、「曠」を「とう」とは読めないため誤植と思われる。
「膅中」とは銃身・砲身内部のことを指す用語で、砲身内部で砲弾が暴発する事故のことを「膅中爆発」などと称する。
※注2:「撃茎」は火砲の撃発装置の一部分。ばねや撃鉄の力によって、発火装置の雷管に衝撃を与え発火させるためのもの。
一目見て分かる通り、二番だけが異様に長いです。数えてみたところ、一番と三番はそれぞれ十六行、二番は三十行でした。
本来四番まであったものを編集者が二番と三番を誤ってくっつけてしまったのかとも考えたのですが、それなら三十二行になっているはずです。
編集者が二行飛ばした上で二番と三番をくっつけたのか、それとも最初からこの形なのか。最初からこの形であったとすればメロディラインも変則的になるでしょうし、そもそも曲がついていたのかどうかさえ怪しくなってきます。どこかに楽譜が残っていないでしょうか…。
歌詞の内容は一番と三番が兵器を礼賛するもの、二番が兵器の実際的な管理・手入れに関する注意事項となっています。
注目したいのは三番に「三八式の小銃」「三十年式銃剣」という具体的な兵器の呼称が入っていることでしょうか。「銃剣」や「銃」という形でならこれらの登場する軍歌というのは相当数ありますが、「三十年式銃剣」というような形で歌詞に具体的な兵器が登場しているのはかなり珍しい部類に入ると思われます。
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