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「母なる夜」カート・ヴォネガット・ジュニア作 飛田茂雄訳

2017年12月17日 | 読書

[カート ヴォネガット ジュニア]の母なる夜

【第二次大戦中、ヒトラーの宣伝部員として対米ラジオ放送のキャンペーンを行なった新進劇作家、ハワード・W・キャンベル・ジュニア―はたして彼は、本当に母国アメリカの裏切り者だったのか?戦後15年を経て、ニューヨークはグリニッチヴィレジで隠遁生活を送るキャンベルの脳裡に去来するものは、真面目一方の会社人間の父、アルコール依存症の母、そして何よりも、美しい女優だった妻ヘルガへの想いであった…鬼才ヴォネガットが、たくまざるユーモアとシニカルなアイロニーに満ちたまなざしで、自伝の名を借りて描く、時代の趨勢に弄ばれた一人の知識人の内なる肖像。】

こういう戦争に関係した内容の小説を読むと、人間界(自分も人間である)にうんざりしてくるんだよね。でも、読書は学び。学ぶ気があれば、やっぱり読書はいい。読み取る力は大事。

こんなに客観的に、冷静に物事や自分を観る力があるのに、なんでアメリカのスパイ(ドイツにナチとして潜り込んで、ナチの扇動放送をしながらアメリカに情報送る)になったのかねえ。「だって”人間”だもの」なんだなあ・・・。

>「全く心にもないことを話していたのであり、しゃべっている内容が無知で破壊的で、鼻もちならぬほど滑稽千万だということは十分承知していたのである」

善悪を”分かって”やった自分の行動は罪が深いと、彼は自覚する。暴力をふるわなくても、言葉の罪の方が大きい(多くの人を不幸にする)ので、仏教では言葉(特に真実でない言葉、を慎むように言われてますね。彼は、どんな言い訳をしようが自分の意志でやってたのだから、その行為の結果は受け入れるしかないのです(自業自得)。

アメリカのためにやったことで、ユダヤ人には怨まれ憎まれイスラエル政府からは追われることになる。極右愛国者からは裏切り者として憎悪の対象となる。スパイだったことを知っている人間は3人だけ。アメリカ政府も守ってはくれない。(彼はアメリカもドイツも愛しているんだけど、どちらからも憎まれる)

彼も戦争の犠牲者だと思うけど、戦争を起こすのは人間。人間というのは自分で自分の首を絞めることばっかりやってる。戦争を起こす人間も戦争に加わる人間も、本当に愚かで馬鹿でどうしようもなく哀しい生き物だと、、、ため息しか出ないね、、、。(戦争を起こす人、いや、強欲な人も怒る人も、ほんと迷惑なのよね)

>ー「われわれが表向き装っているものこそ、われわれの実体にほかならない。だから、われわれはなにのふりをするか、あらかじめ慎重に考えなくてはならない」

ありのままでいられるように、心を磨きつづけることだね。嘘をつかないこと。方向を間違えないこと。

私は、彼のように絶望はしない。責任放棄もしない。自分を罰するほど自分の本質(心)が崇高であるとも思わない。
わたしハワード・W・キャンベル・ジュニアを、わたしに自身に対するかずかずの犯罪の罰として、絞首刑に処する時
>さらば、残酷な世界!アウフ・ヴィーダーゼーン!

なんて、言わない。心が体を制御するのであって、心が体を制御できなかったことの責任を放棄(処刑)などできない。そもそも”わたし”なんて幻想だから。精神分裂症か?責任のとりかた??が間違ってる!
私は、最期まで責任をもって自分のすべてを引き受けたい・・・。

ああ、人間って・・・。

生きる目的?愛のために生きる?じゃあ、愛がなくなれば死ぬってこと?
愛を”目的”にすると大変です。エネルギー(手段?)になるけど、全てじゃない。

歩くためには向上心(好奇心)が必要だと思うな。

 

星5つ

序盤過ぎてから、え?という展開が何度かあってぐいぐい引き込まれました。

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