たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

閲覧と採掘? <マイニング不正 他人PCで仮想通貨「採掘」無罪>を読みながら

2019-03-28 | AI IT IoT

190328 閲覧と採掘? <マイニング不正 他人PCで仮想通貨「採掘」無罪>を読みながら

 

私がPCを使い出して、というか本格的に使い出したのがウインドウズ95発売の少し前、アップルPCですので四半世紀経過しています。ネットサーフィンをよくやるようになったのが96年くらいからですから、20年以上でしょうか。いまもってよく分からないPCオンチのうえ、ネットとなるとよけいわかりません。

 

今朝の毎日記事<マイニング不正 他人PCで仮想通貨「採掘」無罪 無断作動「ウイルス」否定 横浜地裁判決>とあっても、まず「マイニング」がわかりません。ウイルスも怖いものという程度で、セキュリティソフトに頼りきりです。なるべくよらぬ触らぬで、メールも知らないのはもちろん、知っているのでも、友人か既知の人、依頼者以外は開けません。ネット情報も怪しいものには近づかないという程度で、危うい対応をしています。

 

そんな私には、この刑事裁判での事実と争点は難解でした。少しは現代の動きを知るため、勉強がてら、記事を追ってみました。

 

事案は、コインハイブというプログラムが不正指令電磁的記録(ウイルス)保管罪に当たるかどうかが争われています。

 

刑法ではどうなっているのでしょう。

(不正指令電磁的記録作成等)

第百六十八条の二 正当な理由がないのに、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、次に掲げる電磁的記録その他の記録を作成し、又は提供した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

一 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録

二 前号に掲げるもののほか、同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録

2 正当な理由がないのに、前項第一号に掲げる電磁的記録を人の電子計算機における実行の用に供した者も、同項と同様とする。

 

この「不正指令電磁的記録」をウイルスと呼んでいるようですね。で、上記の条文では「意図に沿うべき動作をさせず、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える」という、PC利用者の意図を基準にして判断する立て付けになっています。この意図は個人の意思というのではなく、PC利用者の社会通念、まあ常識的な意思を基準にするということでしょう。

 

ところで、記事では、「保管罪」という犯罪となっていますが、上記の条文では「作成または提供」となっていて、保管というのは明記されていないので、再度読み直してみても違いますね。たしかにPC上というか、ネット上にプログラムを作成したことは間違いないわけで、作成罪ないしは提供罪でもいいように思うのですが、マイニングの名称と符合する?ように保管罪と呼ぶようになったのでしょうか。余談ですが・・・

 

起訴された事実は<東京都のウェブデザイナーの男性(31)は2017年10~11月、自身のサイトにコインハイブを埋め込み、サイト閲覧者のパソコンに無断で仮想通貨の「モネロ」をマイニングさせた>ということです。

 

そのサイトに問題のプログラムを埋め込む、という表現ですが、これは閲覧者がそのサイトを閲覧すると、そのプログラムが作動して、閲覧者に気づかれないで、<仮想通貨を獲得するマイニング(採掘)>という作業?に閲覧者に参加させる仕組みのようです。その参加?によって、コインハイブを設置した彼には、モネロでその分報酬を得られるという構造になっているようです。

 

それは<ウェブサイトを閲覧した人のパソコン(PC)の演算機能を無断で動かす>プログラムであるから、違法なコンピューターウイルスかという問題のようです。

 

<男性は同罪で>略式起訴され、横浜簡裁が<罰金10万円の略式命令を出した>のですが、<横浜簡裁の判断を受け入れず、正式裁判を申し立てていた。>そして昨日、<横浜地裁は27日、ウイルスと認めず無罪とした。>

 

その理由について、まず、<本間敏広裁判長は、コインハイブは「人の意図に反する動作をさせるプログラムに該当する」>とウイルス性の一部を肯定したのです。そうですね、この点は私も同感です。といっても<弁護側は「CPUを使うのは他のプログラムと一緒」と訴えた>というのですから、そんなプログラムが普通にあるのかと驚き半分、そうかなが半分です。でもいまのところ、裁判所の判断を支持したいと思います。

 

しかし、ウイルス性のもう一つの要素、「不正な指令」かどうかについては、<有益性や閲覧者に対する影響などを総合的に考慮し、プログラム内容が社会的に許容しうるかどうかで検討すべきだと指摘。>して、次の事実を基に、本件では否定したのです。

 

まず、社会通念の基礎であるネット利用者の意識・評価について<当時はネット利用者の評価が賛否両論に分かれていたこと>として確立していなかったことを指摘しています。次に<運営者がコインハイブで利益を得てサイトが充実されるなら、閲覧者の利益になるとも述べた。>とこの仕組みが閲覧者の利益にもなるというのです。これはちょっと驚きですね。この推論は少し飛躍がありませんか。最後に閲覧者の負担増については<コインハイブにより閲覧中の消費電力が増加しても、同様の仕組みを持つ広告表示プログラムと大差はなく、影響は少なかったと判断した。>として大きなものではないとしています。そして最後に、最初の評価が確立していないこととあいまって、<事前の注意喚起や警告などがない中で立件し、いきなり刑事罰に問うのは行き過ぎだ>として、無罪としたのです。

 

この判決については、<技術者を中心に反発する声が噴出し、社会通念自体が世代やIT知識によってかけ離れている実情が明らかに>になったようです。

 

識者はというと、<高木浩光・情報法制研究所理事・・・は「ウイルス罪が守ろうとしているのは、プログラムに対する社会の信頼なのだから、誰にとっても不正なものだけが対象となるべきだ。今回のように使う内容を個々に判断することになれば、新しい技術が出る度にウイルスだと言われかねない」と影響を懸念した。【林田七恵】>

 

また、<坂村健・東洋大情報連携学部長の話>では<今回の判決はインターネット社会の常識を支持したまっとうな判断だと言える。ネット社会では、無料のサービスは広告収益やマイニング収益に支えられているものだというのは普通の感覚だ。今回の判決で、何を不正とされるかについて開発者の不安がなくなればいい。それによりイノベーションが進むことを期待する。>と全面支持です。

 

他方で、ネットには掲載されていませんでしたが、毎日大阪版記事では園田寿・甲南大法科大学院教授の話として、「知らないうちにパソコンを無断使用されたら不信感を抱くのは当然で、一般ユーザーの感覚を基準とすべきだ。」と判決に批判的です。私もこの一般ユーザーに当たりますので、この意見に近いでしょうね。

 

でも坂村氏の指摘する開発者の不安が、この犯罪の構成要件では曖昧ということにあるのであれば、こういった摘発の前に事前告知を丁寧にする必要があるでしょう。ここがそうなのかどうか、プログラム作成者にとってグレーなのか、いや分かっているけど、乗り越えないと競争に勝てない、のかどうか、それがわかりにくいのも一般ユーザーの立場でしょうか。

なお、たとえば<不正指令電磁的記録に関する罪>などで、警察はこれまでそれなりに啓発活動をやってきたのかもしれません。たぶんネット社会で活動している人には縁遠い情報だったのかもしれませんが、それでよいのかどうかでしょう。また、このじょうほうだけでは、明確なルビコン川となるのか少し疑問です。

 

そんなあれこれを少し考えてみました。余分な話でしたかね。

 

今日はこれにておしまい。また明日。


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