バッハと音楽についての道草日記

~気になる音楽、ドラマ、書籍、雑誌等についての雑記帳~

ヘンデルの「ヘラクレス」

2009-02-05 21:28:12 | ヘンデル

Scan10391 Archivから出ている、「ヘンデル:音楽劇《ヘラクレス》全曲」(HMV 60)(UCCA:1020/2)(マルク・ミンコフスキ指揮、レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル)(オリジナル楽器による)(録音:2000年4月 ポワシー劇場におけるライヴ・レコーディング)を以前に買っていたのですが、あまり聴いておらず、今年になり何回か聴いてみました。当初の印象とは違い、聞き重ねていくうちにこの曲の持つ劇的で、迫力ある雰囲気にどんどん魅了されてきます。バッハとはまた違った、ヘンデルの熟練された作曲技法も感じさせます。
この曲にまつわる逸話はライナーノート(ドナルド・バロウズ)に詳しく記載されており、興味深く読みました。冒頭の一部を引用させて頂くと、1730年代、ヘンデルはロンドンでライバルのイタリア・オペラ団との競争に費やされていたようです。この状況は、1741年から43年にかけてほぼ終わりを迎え、その時期はヘンデルが彼自身のイタリア・オペラを上演した最後の時期であり、またダブリン訪問後、オラトリオ形式の英語による作品によって新しいキャリアの基礎を確立した時期でもあります。(ちなみに、1741年に《メサイア》と《サムソン》を作曲しています。)
ヘンデルのことを知るにつれて彼のエネルギッシュな活動には驚かされます。三澤寿喜著「ヘンデル」(音楽之友社、2007年)を参考にさせて頂くと、実は、ヘンデルは2回も脳卒中を患っています。いずれも軽かったようで、“一過性脳虚血発作”といったような感じでしょうか。もう少し病状について文献で調べてみたい所です。1回目は1737年8-9月頃、完全に右手が麻痺し、演奏も出来なかったようです。この時はドイツのアーヘンに戻り、リハビリをし、11月にはイギリスに戻って音楽活動を再開しています。その後、その年の年末までに、新作オペラ《ファラモンド》と葬送アンセムの作曲を完成し、次のオペラ《セルセ》の作曲にも取り掛かっています。2回目は1743年4月に脳卒中を発症していますが、同年6月には既に新作オラトリオ《セメレ》の作曲を開始しています。なんというバイタリティー!!。晩年における創作力に関しては、ヘンデルはバッハ以上のように思います。
ヘンデルは1744年(59歳)にヘイマーケット国王劇場と次のシーズンの契約をしています。そのために2つの傑作オラトリオ(《ヘラクレス》と《ベルシャザル》)を作曲しています。《ヘラクレス》は7月19日から8月21日の約1カ月という短期間で作曲しており、「後期バロックの音楽劇の頂点」とも評される傑作で、晩年のヴェルディ作品を思わせるようです。台本はトーマス・ブロートンがソフォクレスの『トラキスの女たち』とオウィディウスの『変身譚』に基づいて作成しています。ヘラクレスの妻、デージャナイラの嫉妬を主題としています。初演は、1745年1月5日、ヘイマーケット国王劇場です。
この《ヘラクレス》もヘンデルの天才ぶり、熟練ぶりを示す傑作で、繰り返して聴いても飽きない作品です


最新の画像もっと見る

post a comment