Hyperionから、「ヘンデル シャンドス・アンセム集」(CDA-67737)(スティーブン・レイトン指揮、ケンブリッジ・トリニティ・カレッジ合唱団、アカデミー・オブ・エンシェント・ミュージック)(録音:2008年6月29日-7月1日、トリニティ・カレッジ礼拝堂、ケンブリッジ)が発売されていました。このCDに収録されているのは、HWV.254、256a、252の3曲です。(アンセムとは、イギリス国教会の礼拝用のための教会音楽を指します。)
NAXOSからも、「ヘンデル:王室礼拝堂のための音楽」(NAXOS:8.557935)(アンドリュー・ガント指揮、王室礼拝堂合唱団)(録音:2005年7月18-20日、Chapel Royal、St James's Palace、ロンドン)が出ていますが、これには、HWV.256b、250b、251d、249a、251aが収録されています。
三澤寿喜著「ヘンデル」(音楽之友社、2007年)を参考にさせて頂くと、ヘンデルは1711年にイギリスに移住し、同年2月24日のオペラ「リナルド」の初演の大成功以来、一時期ハノーファーに帰国した以外は、ずっとロンドンでオペラ活動をしていましたが、英国王室の政情不安、経済危機により、1717年6月29日にヘイマーケット国王劇場が閉鎖したため、オペラ活動を中断しなくてはならない状況になったようです。
その頃に、カーナボン伯爵であるジェイムズ・ブリッジズから保護の申し出があり、1717年夏から1718年末までの約1年半をキャノンズで過ごしています(ジェイムズ・ブリッジズは1719年にシャンドス公爵となっている)。彼はロンドン近郊エッジウェアの村近くのキャノンズに私的な礼拝堂を有するキャノンズ邸を建てて、日曜日ごとに合奏団・合唱団「キャノンズ・コンサート」を伴う礼拝を行っていたようです。ヘンデルの身分は「住み込み作曲家」で、キャノンズ滞在中はイタリア・オペラから完全に離れて、私的な礼拝用や娯楽用の英語作品に専念しています。ヘンデルは、アンセムの作曲を通じて、英語作品に習熟したようで、ここでの経験が将来の英語オラトリアの原点になっているようです。
このヘンデルのアンセム集は、30歳代前半に作曲されていますが、本当に美しく、バッハにも劣らない傑作揃いです。一般的にあまり知られていないのが本当に不思議です。
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