DECCAから、「J・S・バッハ:ピアノ協奏曲 BWV1052-1056」(UCCD-1301)が発売されています。演奏は、ピアノ:ラミン・バーラミ、ライプツィヒ・ゲバントハウス管弦楽団、指揮:リッカルド・シャイーです。
ラミン・バーラミのピアノは初めてこのCDで聴きました。彼は1976年、イランのテヘラン生まれで、イラン革命の時に父親が亡くなり、5歳の時に母親、兄弟と共にイタリアに移住しています。ミラノの国立ジュゼッペ・ヴェルディ音楽院でピアノを学んだあと、シュツットガルト音楽大学でヴォルフガング・ブローザーに師事しています。1998年にイタリアでデビュー・リサイタルを開いて大成功を収め、その後、ドイツ、イタリアを中心に活動を続けているようです。現在、バッハの鍵盤楽器のための作品演奏においてもっとも注目されているピアニストの一人です。
このCDで、彼の演奏は指先まで神経が行き届いた繊細な印象を受けました。グールドを彷彿とさせるところもあります。管弦楽団との呼吸も凄くあっているように思います。彼の際立った個性というものは感じないのですが、バッハの意図しているものを慎重に考え、探索しているような、とても敬虔な演奏に感じます。ただ、もう少し弾けてもいいかなぁと思いました。
ピエラルキッレ・ヂルフィーニの解説(訳:長谷川勝英)では、バーラミはペダルの使用をほとんど避けて、弦楽器もヴィブラートを付けていないようです。これは、オリジナル楽器を用いないオーケストラによる古い時代の音楽の響きを探求するための"第三の道”のようです。また、バッハはストップウォッチを手にしたように、第1番の協奏曲から第5番の協奏曲にかけて演奏時間が次第に短縮されてゆくように作曲したようです。第1番ニ短調の20分から始まり、最終的に第5番ヘ短調のわずかに9分になっています。この5曲の精神的中心が、ちょうど真ん中にある第3番二長調(BWV1054)のアダージョ楽章で、最も深く崇高な部分であると指摘しています。これを読んで、「なるほど!」と思いました。
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