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二国間の対立は防げるか

2015-03-22 12:14:55 | 政治・経済
 先日コメントをいただいたので、そのことについて少し書きたい。
 「日本人は正しいか」という記事に関するコメントである。その記事で私は、二人の人間の対立というたとえ話を書いたのだが、では、はじめの二人の対立をどうやって防ぐかと――そこが重要だという意見である。
 たしかに、これは重要だ。そして、たいへんな難問でもある。対立というのは、相手があってのことだ。こちらがいくら敵意を持っていなくとも、むこうは言いがかりをつけてくるかもしれない。たとえば中国が尖閣諸島を自分たちのものだと言い募ることなどはその最たるものだろう。中国や北朝鮮という厄介な隣人を持ってしまっている以上、そして国を動かすことができない以上、このようなことは避けられないと私には思われる。できることは、なるべく対立を緩和することぐらいではないだろうか。
 そして、では対立を激化させないためにはどうしたらよいかという話になると、やはり安倍政権が進めている安全保障政策は逆効果でしかない。
 前回道徳の教科化には意味がないということを書いたが、それと同様に、今回与党が合意したという安全保障政策も見当違いであると私は考える。アメリカの構想するいわゆる「リバランス」という考え方はきわめて危険だ。中国の軍事的台頭に対応して力の均衡を再構築するというのだが、こちらが軍事力を増強すれば、むこうもそれに対抗して軍備増強してくるのは自明である。それを互いに続けていけば、冷戦時代の米ソの不毛な軍拡競争の再現となる。バランスをとるのはきわめて困難だし、仮にとれたとしても(そもそも「バランスがとれている」ということを客観的に評価する術もないのだが)それは瞬間的なものに過ぎず、どちらかがさらに軍備を増強すればたちまち均衡は崩れ去る。そして、もう一度バランスをとるために他方も軍備を増強し……以下繰り返しで、結局のところは、不安定な緊張状態が漫然と続いていくことになるだろう。
 そもそも、先述の尖閣諸島の問題に関しても、中国の巡視船や航空機が頻繁に領海・領空侵犯を繰り返すようになったのは、尖閣諸島を国有化したことがきっかけだった。ろくでもない発言ばかりしてきた石原慎太郎元都知事の最後っ屁のような尖閣国有化という愚策(実際に国有化したのは野田政権だが、石原都知事が尖閣を手にしたら何をしでかすかわらからないので、それを防ぐために国が乗り出したといわれている)が中国を刺激し、さらに一線を踏み越える行動を誘発したのだ。ここから得られる教訓はただ一つ、安全保障を真剣に考えるなら、余計なちょっかいは出さないということに尽きる。特に、中国や北朝鮮のような面倒な相手に対してこそそうだ。
 また、ここにロシアをくわえてもいいかもしれない。2012年、米軍が日本にオスプレイを配備した直後に、ロシアの電子偵察機「IL20」がオスプレイの訓練飛行域の周辺に頻繁に飛来するようになったという話がある。IL20は電子戦機で、電波情報を収集するなどの機能を持っており、オスプレイという最新の輸送機が配備されたことを受けて、その情報を収集するためにやってきたという見方が濃厚だ。ここでもまた、最新の兵器を配備したことが、相手の一歩踏み込んだリアクションを引き起こしているのである。
 以前にも書いたことだが、こちらが軍備を増強したからといって、むこうは引き下がってはくれないのだ。特に、国民の生命よりも自分の面子のほうが大事というような輩では、絶望的といっていい。そういった相手に対しては、とにかく余計な刺激をしないにかぎる。その点からしても、安倍政権が進めている安保法制は百害あって一利なしなのだ。


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