命のカウントダウン(健康余命3605日)

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在宅医療と私

2021-01-14 02:20:34 | 在宅医療
 私は、田舎の内科開業医。引退を考えつつも働くことが好きなのでしょう、何だかんだ言いながら、朝から晩まで働いております。昨日も12時間以上働きました。ワーカホリックなのかもしれませんねぇ。でも、不幸だとは感じていません。ホリック、中毒者だから、喜びの中にいるのかもしれないです。

 診療形態として、一般的な外来診療も普通にしていますが、それ以外で在宅でも患者さんを診ています。一つの会社に勤めながら、時間外にほかの会社でも働いているようなものですね。ダンブルワークですが・・・どちらも雇用主が自分自身なので、おとがめを受ける事はありませんです。ただ、他人よりも忙しいのは確かです。
 
 患者さんが住み慣れた「我が家」で治療・療養することは、在宅医療と呼ばれ、近年重要視されるようになりました。「我が家」は、賃貸のアパートでも高齢者施設でも、その方が「我が家」と感じるところなら、どこでも良いのです。豪邸でも億ションでも、ボロアパートでも大した違いはありません。かえって、ゴミ屋敷の方が我が家感たっぷりなのかもしれないと思うくらいです。

 私は、23年前に開業した当初から、いや開業前の勤務医時代から、在宅医療、特に在宅の末期がん患者さんの医療に携わって来ました。当時、在宅医療と言う言葉も一般的ではなくて、「往診」と呼ばれることが多かったです。
 在宅医療を好きになったのは、「我が家」に帰った患者さんが、入院中とは全く違って、生き生きとされていたからです。目の輝きが違いました。
 入院中は患者Aさんでしかなかった方が、一歩自宅に足を踏み入れた瞬間、自分自身を取り戻されるのです。
 病院内では明らかに上位階級であり、何でも従わざるを得なかった医師や看護師。それが「来客」の一人でしかないのです。
 患者さんは鍵をかけて「入って来るな!」という事も可能です。鍵のかかる病室なんて・・・ないですよね!立場が大逆転するのです。

 主役の大逆転。入院生活と言うのは、それだけ人間性を阻害するものなのです。私は、入院加療は、急性期、不安定機にのみ特別に短期間許される強い人権侵害だと、思っております。

厚生労働省は、在宅医療を推進しています。その理由として、患者さんがそう望まれることが多いからと言っていますが・・・・実のところは・・・在宅医療の方が入院医療よりも安上がりだから と言うのが本音の様です。限られた予算の中で、患者さん満足度の高い医療を目指すのが厚労省の正しい方向性ですから・・・それは間違いなく正しいと思います。ただ、現在のところは、経済性と患者満足度の増大という2つのベクトルが「たまたま」同じ方向を向いているので厚労省は何の迷いもなく在宅医療を促進しているのでしょうが・・・オーダーメイドが大量生産品より安上がりなんて不思議な状態がいつまでも続くとは思われません。いつかご家族や患者本人の我慢に根差している「在宅医療は安上がり」な現状が「オーダーメイドの在宅医療なんて高嶺の花」などという状況に逆転してしまうのではないかと、私は想像しております。(いつになるのかは分かりませんが)私は、そうなっても、個人満足度の高い在宅医療を推し進めるべきだと思っているのであります。


 病んだ人を一か所に集めて治療する入院医療:(大量生産の既製品)ですよねそれよりも、一人一人バラバラのご自宅を訪ねて行って、その人の家庭環境や病状、患者さん個人の好みに合わせて在宅チームで組み上げていく在宅医療:(注文生産のオーダーメイド)の方が安上がりってのが悔しいですけれど・・・何故だか安上がりなようです。安上がりな原因は、患者さんの我慢とか、ご家族の負担にあると思っております。
 そうではあっても、患者さんにとって、ご家族にとって、在宅医療は魅力的であります。主役が医療者ではなく自分たちだから・・・生活を大幅に制限される状況は・・・入院も入獄も・・・大差ないじゃないですか。

 病状が不安定な場合や、手術を要する場合は勿論入院治療が適しています。入院加療を否定しているわけでは決してありません。でも、不安定な状態や術後の急性期を脱して安定した患者さんや、がん末期など、不安定ではあっても、入院しているより住み慣れた自宅で過ごす方が、精神的にも肉体的にも安定が得られるような場合(その方の性格にもよります)在宅での治療という選択肢があった方が良いと考えています。

 その選択肢を残すため、老体に鞭打って、今日も12時間以上労働しました。同情されたくてこんな表現をしておりますが・・・・好きで働いているのです。嫌なら・・・多分、すぐにでも辞めます。やめられないのは・・・なんだかんだ言っても、ありがとうと言われるのが嬉しいのでしょうねぇ ありがとうホリック?????まぁ、死が目の前に来ても、多分後悔はしないと思いっております。負け惜しみかもしれませんが・・・
 もう少しだけ、自由時間は欲しいけれど・・・・マネージメントが下手なのでしょうねぇ・・・・うーむむむ 時間が欲しい!!



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