湖のほとりから。

花と空と心模様を写真と詩と文に託して。

Dear Frankie(ディア フランキー)ネタバレあり

2020-09-12 13:47:00 | コラム
父の暴力により聴覚障害となってしまった9歳の男児 フランキー


夫のその暴力が許せなくて
自分の母親と聴覚障害の息子を連れて引越しを続けているフランキーのママのリジー

リジーのママであり、
フランキーの祖母のネル

フランキーは、自分が幼いころ
父からうけた家庭内暴力のために
聴覚を失ったことは知らないで育っていた。

フランキーのママは
愛する息子のために
『パパは、ACCRA号と言う船に乗っているから航海が終わるまで帰ってこないのよ』と嘘を言いつづけ

息子のフランキーは、健気にも
パパ宛の手紙を私書箱に出している。


フランキーのママ、リジーは
こっそり私書箱にその手紙を取りに行き、フランキーへ返事を書いていた。


こんなことを続けていくのは
正しいのかどうか
迷いながら戸惑いながらでも
その息子の手紙には
パパへの気持ち、ママへの気持ち、
学校のことなどの本音が書かれていて
リジーは、物言わぬ息子を知る唯一の手がかりでもあった。


物語は
とあるイギリスの港町に引っ越しをするシーンから始まった。


冒頭部分には
沢山の情報が詰め込まれている。


ママと祖母との関係
夫への嫌悪感から逃げ回る3人の家族
つつましやかでも、愛情あふれる生活。


何回となく引っ越しを繰り返しているから
その先々で、新しい友達を作っていかなければならないフランキーは、
ある意味、諦めと葛藤の中にいたが
唯一、パパとの手紙の交流で育まれた素直さと健気さが
より周りにいる者達を温かく巻き込んでゆく。


ある日、
パパが乗っている船がその港に着くことを知る。


フランキーは思う。
会えないだろうか
息子の自分とは会いたくないかもしれないと言う思い。
今まで一度たりとも
会ってはいない。
写真さえ無い。


息子の気持ちを知るリジーは、
なんとか一日だけでも
パパの身代わりとなる人を雇い、
息子のために思い出を作ってあげたかった。


しかし、自分は、女である。
女を欲しがる男には要はない。
自分は商売女ではないのだから。
街をうろつき、探し回るが、
息子のパパになってくれそうな人は見つけることが出来なかった。


途方に暮れるリジー。


声をかけ、相談に乗ってくれたのは、
この街で親友になったマリーだった。


リジーは言う
『過去も未来もない男性が必要なの』

マリーは、1人の男性を紹介してくれた。

革のジャケットを着て
朴訥と話す男

名前、素性すら聞かない約束で
謝礼を二回に分けて渡すからと
フランキーのパパ役をやってもらうことにした。


映画の役柄名は
stranger(知らない人)


ジェラルドバトラーが、イカツイ風貌ながらも、眼差しと間合いで、
イギリスの高倉健を思わせ、
圧倒的な大きな愛を示しつつ
フランキーの父親を演じ切る

フランキーは父親が大好きになり
離れ難くも幸せな時間が過ぎていく。
一日だけの約束が2日になり
そして、strangerである男は
息子であるフランキーとお別れをいい
フランキーのママであるリジーに
最後のお別れを言う。


長い間、リジーと男は見つめあい
顔が近くほどに互いの気持ちを確かめていくように
やがて、キスをする。
激しい口づけではない。
互いの気持ちを押し殺すように
そっと唇に触れただけのキスだった。



最初から、ビジネスとしての
契約であって、知らないままを希望し
選択した結果なのだから
深入りすることは出来ない。


しかし、そこには
ためらいながら
求め合いながら
別れゆく大人の2人


何か一言でも、、、と願うが何もない。

切なくももどかしい。

そして、
男はそこから去っていく。



リジーは
ドアを閉め、部屋に入り
切なさなのか、諦めなのか
自分の感情を鎮めるように
上を見ながら
いつものくせで
自分のジャケットに手をいれる


その中には
男に渡したはずの謝礼金が全て入っていた。


すぐのちに、
本当の夫の姉から連絡があり
夫が病気で幾ばくもない命
せめて、息子のフランキーに会わせて欲しいと言われたが
リジーは断固として会わさなかった。


しばらくして
夫は亡くなり
リジーも、フランキーに
パパは病気で亡くなったと告げた。



リジーが今まで密かにしてきた手紙のやり取りも、なくなったと
郵便局の私書箱に手続きに行くと
フランキーから一通の手紙が届いていた、、、、。

その中身とは、、、。




『悲しいことがあったんだー
僕の本当のパパは病気で死んだんだ
だけど、
今度、また、この港に船がついたら
僕に会いにきてー

親友のフランキーより』




イングランドの静かで
小さな港

湾にそって、荒涼な丘が見える

沢山のものがないから
みんなが寄り添って
自分達の、自分達なりの大切なものを大事にして、つつましやかに暮している風景


きらびやかなものは出てこない。
事件も、悲劇も喜劇もない


荒涼な台地ゆえに
淡々と過ぎゆく場所には
ささやかで、あたたかな日常達がある。

見終わった後には
フランキーの健気さゆえに
涙さえしてしまう。



ひとえに感動と言うのは
1人1人ちがうものだから
映画の評価というものは
全く当てにならないものだと
この映画を観てすごく思った。



抑えた演技のどこを焦点にして見るか。

大それた展開はないけれど
しかし、
この汚れないフランキーの健気さは胸を打つ。


相手(女)の子供を好きになった男は
その母親である女も好きになる、、と
どこかで聞いたことがある。


ジェラルドバトラーが演じたstranger
見知らぬ人は、
一体だれなのか、、、。
もう一度、現れることはないのか。


それをも、無視するように
エンディングが流れていく。


もどかしさがどこか物足りなさに変わる時
映画の中での
リジーとマリーのワンシーンの台詞に、少しの光を見出せる。


リジー『あなたが紹介してくれた人は、一体誰なの?』

マリー『私の弟よ』


何故か、救われるー
みんな救われていくようだー。


どうか
フランキーとリジーが
幸せになりますように。



















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