どうにか志望校の決まった息子でしたが、まだ合格したわけではありません。
「まずは一度ご本人を連れて面接にいらしてください」
この面接というのが当時の息子には高いハードルでした。
登校していた中2の1学期までは成績の良かった息子です。いっそ学力テストを受けるほうが
まだプレッシャーが少なかったかもしれません。
当時はほとんど自分の内心については語ってくれませんでしたが、
「なぜ学校に行かなくなったか」と聞かれるのが一番心配だったようです。
なぜ学校に行かないのか、本人にもよく分からなかったのでしょう。
逆に、「なぜ学校に行くのか」よく分かっている子もほとんどいないと思いますが。
なんとかなだめすかして行った面接でしたが、前もって息子の状況などは学校に大体話してあったので、
聞かれたことは名前や年齢などの簡単に答えられる質問ばかりでした。
「では、あちらの部屋で写真を撮りましょう」
「えっ、写真?」
予め聞かされていなかったので、私たち夫婦も息子もちょっと戸惑いました。
中学の制服は着て来たものの、髪はずっと切っていなくてロン毛です。
とにかく言われるままに写真を撮ると、先生はにっこりしてこう言いました。
「ではこの写真を生徒証に載せますね。今日の面接で合格したことにさせていただきます」
キツネにつままれたような気分でしたが、
出かけたがらない息子のお尻を叩いてまた足を運ばずに済むことになってホッとしました。
息子の状況を間近で見ていた私は、ほぼ通学せずに済むクラスを希望しましたが、
先生や夫の意見も入れて普通のクラスに入れ、少しずつ学校にいる時間を増やしていこうということになりました。
息子も高校から社会復帰の足掛かりをつかみたいと思ったようで、不安そうではあったものの同意しました。
最初は週に3回1時間ずつパソコン検定のクラスに通うことになりました。
(今日までの苦労が報われた。きっとこの子は高校から普通の生活に戻れる)
そう信じた瞬間でした。現実には夏休み以降、また息子は登校しなくなるのですが……。