不登校の息子とビョーキの母

不登校の息子との現在、統合失調症の母との過去

本人不在の卒業式

2018-05-23 07:12:08 | 日記
「よかったら式の日の午後にでも1人で卒業式をしませんか?」

卒業式はまだ終わっていなかったのです。
もしかしたら私を今日呼びだしたのは、これを言うためだったのかもしれません。

「いいえ、結構です。卒業証書は、私が暇な日に改めて取りに来ます」

息子に確かめもせずに私は断りました。
この一年半の間に、私の心には先生方に対する恨みがたまっていました。
息子も学校に関することは口にするのも忌まわしいようでした。

高3になった今もコンビニに買い物に行くことすら嫌がる息子を見るにつけ、
不登校がどんなに深い心の傷を息子に与えたのかわかります。
何に傷ついたか、息子は話してくれませんでしたが、
私が一番傷ついたのは周囲の憐れみと好奇の視線でした。

後日学校の事務室へ行き、卒業証書を受け取って
帰ろうとしたところで1年の時の担任に呼び止められました。

「校長が待ってますので、こちらへどうぞ」

電話を入れてから来ればすぐ用が済むだろうと思ったのが間違いでした。
どうやら待ち伏せされてしまったようです。
恨みもない校長に待ちぼうけをくわすのも気が引けて、私は誘われるままに校長室に入りました。

満面の笑顔で出迎えた校長が開口一番、
「この度はおめでとうございます」

どこがめでたいんじゃ、ボケ。と言いたいところですが私はかろうじて笑顔をつくりました。

「ありがとうございます」

「おかけになって、少しお話でも」

私と話してどうする気でしょう。学校側としては「かわいそうな生徒のために、
できるだけのことはした」みたいな形にしたいのかもしれませんが、
さすがにそこまで付き合う気になれません。

「いいえ、本人もいないので、証書だけ頂いて帰ります」

「そうですか、わかりました。このたびは誠におめでとうございました」

校長は生徒に授与する時みたいにうやうやしく両手で証書を持って差し出しました。
なんだこの茶番、と思いつつ、一応かしこまって証書を受け取ると、
「ありがとうございました。失礼します」
と校長室を出ました。

後ろから担任と1年の時の担任がついてきたので、何の用かと振り向くと、かわいそうな人を見るような表情で
「昇降口までお見送りします」
と言います。
結構です、と言いたいのをこらえて黙って階段を下りようとしましたが、
とうとう我慢ができなくなって振り向きました。

「クラス替えの時、Bの希望だけ聞いてくれなかったそうですね」