不登校の息子とビョーキの母

不登校の息子との現在、統合失調症の母との過去

卒業アルバムなんか要らない

2018-05-16 08:18:51 | 日記
話は前後しますが、進学が決まり一安心していたところへ、中学の担任から電話が来ました。

「B君の成績物などを学校でお預かりしているんですが、お届けしましょうか。
お母さんがお見えになりますか?」

そう言えばもう卒業の時期です。卒業式には出席しないと予めお断りしてありました。

学校に足を運ぶのは気が重いのですが、届けてくださいと言うのも悪い気がして、
「では明日取りに行きます」
と答えました。どうせ中学校に行くのもこれで最後だと思えば気も楽でした。

「こちらは授業で使った材料で、全員に配ったものとかです。
これは保健のカドワキ先生が全員に配った成長の記録です」

前回学校に来た時、息子の身長と体重を聞かれたのはこれを作るためだったようです。
もちろん家で測定しているわけではないので、適当に答えたのですが、
保健の先生が手書きで書いてくれた成長の記録には少し心が温まりました。
学校を休んでいる間も、このグラフの傾きの分だけ息子は成長していたのです。

卒業アルバムに載せる写真を撮る日も、息子は学校に行きませんでした。

「写真館で撮った写真を持ってきていただければ、掲載しますよ」
と先生に言われたのですが、写真を撮りに行くことも息子は拒否しました。

「卒業アルバムなんか要らない」
と言って……。

へらへら笑いながらお金を盗んでいった友達が晴れがましく並んでいる写真を、
冷淡だった先生が写っているアルバムを、見たくないのも無理はありません。

というよりも、中学校というものから1ミリでも遠ざかりたい一心だったのでしょう。
私も同じ気持ちでした。

卒業アルバムを買わなかった息子にとって、不登校をした1年半は、
色画用紙をたたんだだけのこのペラペラの成長記録だけに収められていました。

つらい思い出だらけの中学校からこれで解放されたというのに、なぜか鼻の奥ガツンとしました。
それでも私はやっぱりちょっとだけ、卒業アルバムが欲しかったのです。
やっぱりちょっとだけ、卒業式に出席する息子の姿を見たかったのです。

「卒業証書はないんですか」
段ボール箱に納められた成績物を手に取りながら私は尋ねました。

「今日は卒業証書はまだ出てないんですけど、
よかったら式の日の午後にでも、1人で卒業式をしませんか?」

と先生。
3年の初めに登校できなかった時あたりから、もう中学校に通うことは諦めていたので、
行事予定を確認してくるのを忘れました。

なんと、卒業式はまだ終わっていなかったのです。