以前このブログで、私が付帯業務でちょっとしたスタンドプレーを演じた話を書きました。
新しい業務を覚えようとしないベテランのオバサンに野次られながら、
初めてのハンディスキャナーを使いこなし、喝采を受けた話です。
それをきっかけに私に近づいてきた人が2人いました。
1人はカドタさん。
この日以来、朝礼の時などに向こうから積極的に話しかけてくれるようになりました。
これも以前書いたと思いますが、同じ派遣会社の仲間にこのカドタさんを一緒にハブろうと誘われて、
断ったこともありました。
一人でいることが好きな私には珍しく、カドタさんとは時間が合えば一緒にご飯を食べたりしました。
話題と言えば仕事の愚痴とか上司の悪口とか、好きな食べ物は何かとか。
あたりさわりのない付き合いでしたが、人付き合いの苦手な私にとっては『かなり親しい人』の部類に入る存在でした。
彼女に気を許していた私はある時、何の気なしに
携帯の待ち受けにしている息子の写真を見せてしまったのです。
「かわいいでしょう?この子が最近ベジタリアンになっちゃってさ……」
「肉とか食べないの?」
「うん」
一時の拒食を乗り越えて食欲を取り戻していた息子は、
高3になってから今度は肉も魚も受け付けなくなってしまったのです。
もっともこれは思想的なもので、拒食症とは違います。野菜や穀物はちゃんと食べるのです。
「へえ、学校じゃどうしてるの?お弁当?」
「学校、ほとんど行ってないから」
「行ってないの?」
「うん、そういう学校だから卒業はできるんだけど。外にはほとんど出ない」
「えーっ、まじで?ヒキコモリ?」
「まあそんな感じ」
「ヒキコモリなんてダメだよ。私だったら無理やりにでも追い出すね。自分で稼げって言って」
まるで私のやり方が手ぬるいのが悪いと言わんばかりです。
夏休み明けの9月1日に、学校へ行くの外野で自殺する子がどんなに多いか、彼女は知らないのでしょう。
自分の手首を切って私の部屋の入口に「I want PC」と血文字で書いた息子です。
(もし、この子が死んだら?)
という思いがよぎった瞬間、親は無理強いできなくなるのです。
「そんなことしたら死んじゃうよ」
私は弱々しく抗弁しました。
子供を学校に行かせられない親は、「親としての手腕がない」というレッテルを貼られがちです。
大声で「学校なんか、行かなくてもいいんだ!」と主張できる世の中ではないのです。
「ヒキコモリとか、本当に信じらんない。外出ろよ、働けよって言いたいよ」
ひとしきり息子をくさした挙句、彼女はこう言いました。
「私、Nさんの家に遊びに行こうかな」
まるで自分が言い聞かせれば息子が外に出られるようになるとでも言いたげな口ぶりに、
私は開いた口がふさがりませんでした。
彼女は44歳独身です。
子供のいる人に言われたって腹が立つのに、子育ての苦労も知らない人が、
まるで自分ならもっとうまく育ててみせるとでもいうように……。
私はそれきり彼女とお昼を食べるのをやめました。
私は人間に対する執着が全体的に乏しいので、
何かきっかけがあればこんなふうに完全に付き合いを断ってしまうことがあります。
ある程度親しくなるとそれが負担になって突き放してしまったり、
または今回のように必要以上に踏み込んだ話をしてしまったり……。
そもそも独身の彼女に、子供の話をしたのが間違っていたのです。
対人的な距離感がうまくつかめないというのでしょうか。
こういうところ、私はやはり自閉的だなと思ってしまいます。
新しい業務を覚えようとしないベテランのオバサンに野次られながら、
初めてのハンディスキャナーを使いこなし、喝采を受けた話です。
それをきっかけに私に近づいてきた人が2人いました。
1人はカドタさん。
この日以来、朝礼の時などに向こうから積極的に話しかけてくれるようになりました。
これも以前書いたと思いますが、同じ派遣会社の仲間にこのカドタさんを一緒にハブろうと誘われて、
断ったこともありました。
一人でいることが好きな私には珍しく、カドタさんとは時間が合えば一緒にご飯を食べたりしました。
話題と言えば仕事の愚痴とか上司の悪口とか、好きな食べ物は何かとか。
あたりさわりのない付き合いでしたが、人付き合いの苦手な私にとっては『かなり親しい人』の部類に入る存在でした。
彼女に気を許していた私はある時、何の気なしに
携帯の待ち受けにしている息子の写真を見せてしまったのです。
「かわいいでしょう?この子が最近ベジタリアンになっちゃってさ……」
「肉とか食べないの?」
「うん」
一時の拒食を乗り越えて食欲を取り戻していた息子は、
高3になってから今度は肉も魚も受け付けなくなってしまったのです。
もっともこれは思想的なもので、拒食症とは違います。野菜や穀物はちゃんと食べるのです。
「へえ、学校じゃどうしてるの?お弁当?」
「学校、ほとんど行ってないから」
「行ってないの?」
「うん、そういう学校だから卒業はできるんだけど。外にはほとんど出ない」
「えーっ、まじで?ヒキコモリ?」
「まあそんな感じ」
「ヒキコモリなんてダメだよ。私だったら無理やりにでも追い出すね。自分で稼げって言って」
まるで私のやり方が手ぬるいのが悪いと言わんばかりです。
夏休み明けの9月1日に、学校へ行くの外野で自殺する子がどんなに多いか、彼女は知らないのでしょう。
自分の手首を切って私の部屋の入口に「I want PC」と血文字で書いた息子です。
(もし、この子が死んだら?)
という思いがよぎった瞬間、親は無理強いできなくなるのです。
「そんなことしたら死んじゃうよ」
私は弱々しく抗弁しました。
子供を学校に行かせられない親は、「親としての手腕がない」というレッテルを貼られがちです。
大声で「学校なんか、行かなくてもいいんだ!」と主張できる世の中ではないのです。
「ヒキコモリとか、本当に信じらんない。外出ろよ、働けよって言いたいよ」
ひとしきり息子をくさした挙句、彼女はこう言いました。
「私、Nさんの家に遊びに行こうかな」
まるで自分が言い聞かせれば息子が外に出られるようになるとでも言いたげな口ぶりに、
私は開いた口がふさがりませんでした。
彼女は44歳独身です。
子供のいる人に言われたって腹が立つのに、子育ての苦労も知らない人が、
まるで自分ならもっとうまく育ててみせるとでもいうように……。
私はそれきり彼女とお昼を食べるのをやめました。
私は人間に対する執着が全体的に乏しいので、
何かきっかけがあればこんなふうに完全に付き合いを断ってしまうことがあります。
ある程度親しくなるとそれが負担になって突き放してしまったり、
または今回のように必要以上に踏み込んだ話をしてしまったり……。
そもそも独身の彼女に、子供の話をしたのが間違っていたのです。
対人的な距離感がうまくつかめないというのでしょうか。
こういうところ、私はやはり自閉的だなと思ってしまいます。