まくとぅーぷ

作ったお菓子のこと、読んだ本のこと、寄り道したカフェのこと。

ちょっきんちょっきん♪

2015-03-09 22:00:59 | 日記
玄関のたたきに新聞紙を敷き
ダイニングの椅子を運びだし
大きな姿見の前にえっちら座り
白いナイロンのケープを
ふんわりかけられて

てるてるぼうずだ!
わけもなくテンションあがる

かわいくしてね、
切り過ぎないでよ?

毎回、ぜったいそう言うのに
わかってるわかってるわかってるからー
と、安請け合いしたのちに
必ず切り過ぎてしまう母

おかーさん床屋にお世話になってたのは
いくつまでだったろうか
三姉妹長女の私にとっては
ちいさな妹らをさしおいて
母とのおしゃべりを独占できる
貴重な時間

母の実家は正真正銘の床屋である

からだがあまり丈夫でなかった
祖父の分まで、祖母はくるくる働いた
子供の頃、親にかまってもらった記憶は
ほとんどない、と母は云う

それどころか、うかうかしてると
押し付けられそうになる家事から
どうにか逃げるために
勉強してます!を言い訳にしていた

いっぽう、母の妹は
どちらかといえば、勉強より
おさんどんのほうが楽チンと
考える女子だった

そんなわけで、60すぎて
資格取って起業するような母と
料理上手で着物も縫っちゃう叔母とが
出来上がったのである

母の弟は床屋を継ぎ
私もたまに遊びにいくと
冗談半分にパーマかけて
もらうようなこともあった

堅物の母と同じDNAだとは
とてもおもえないおちゃめな叔父で
年末繁忙期には泊まりがけで
ベビーシッター兼アシスタントを
していた小学生の私にとって

夜更かしして叔父の大事にしてる
美空ひばりのレコードを一緒に聞いたり
カメラが大好きだった叔父の
聖域である暗室にこっそりしのびこみ
鼻腔に刺さるような酸の匂いに
むせかえったりするのは
母には秘密の楽しみだった

私にとって、髪を切る場所は
ホームのなかにあるものだった
だからなのかもしれないが
大人になってから
ヘアサロンに行くことは
本当に苦手でつらいことだ

だいたい、はじめましての人と
鏡越しのアイコンタクトで
うわすべりの会話をしながら
営業スマイルを振り撒くなんて
なにをどうしろというのだ、、、

さらに、私は髪がめちゃめちゃ
多いので
はじめましての人は100パーセント
おどろいたりいやがったりする

口に出すひともいれば
出さないまでも
はじめおとなしかった
ハサミの扱いがだんだん雑になり
ほとんどやけくそで
ばっさばっさと切り刻む、、、
というお決まりの展開

今日もそんな日だった
少し毛先を揃えて
見映えよくしてくれりゃ
よかっただけなのに

「全体的に、3センチ短くいたしました!」
って、意気揚々と言われても

これどう見たって3センチじゃない!
何してくれてんねん!
と、心では嘆きつつ

「はい。あざました。」

たぶん、これ、
ずっと繰り返すのだろうなあ

てるてるぼうずの私が
懐かしい
どのみち
切られ過ぎるってことに
変わりはないのだけど