まくとぅーぷ

作ったお菓子のこと、読んだ本のこと、寄り道したカフェのこと。

応援してたら、応援されてた。ツールド東北2016*スタート~女川エイド

2016-09-19 18:15:27 | 日記


天候により式典の省略、だなんてことは
実行委員の頭にはなかったらしい。
だんだん激しくなる雨に降られながら
なんやらさんの挨拶を聞いたり
隣近所のひとと握手させられたり。
協賛のSUNTORYからは
ダカラちゃん三姉妹がやってきて
「がんばってくださーい」
なんて言われてやに下がるおっさんら。たのむ、巻いてくれ。
柳沢慎吾さんもなぜか現れて
あのテレビで見た悪夢のような
ながったらしい始球式を思い出す。
だがとくになにもなく、杞憂に終わる。よかった。



ようやく走りはじめる、の前に
30人くらいずつ集合写真。
カメラマンも機材を濡らさないよう
大変な様子。
最前列となったわたし、ムスメと腕くんでピース。
でも心のなかでは、悪天候が恨めしい。



大学の門を出て、北上川に沿って
右へと進む。
燃焼をはじめる前の体は、ただたんに雨風に晒されてひたすら冷え
歯がかちかち言って震える。
スタートしてしばらくは平坦が続き、
早く登りにさしかからないかなぁと
いつもなら絶対考えないことを願う。
ときどき眼鏡を指で拭かないと前がよく見えない。
ワイパーつけときゃよかったけどそんなのはかっこわるすぎる。

しかしそんな悪天候でも、沿道には
旗を振って応援してくださる人がいる。
ありがとうございます!と手を振り返す。
とりあえず最低限の目標は
最後まで声援には返礼。
あんまりぜーはーしちゃうと
声出せなくなるから
その分だけは温存。
ただ、やはり雨を避けるため
家のなかから、窓越しに
とか
納屋のなかから、ビール箱に座って
とかいう方々もいて
そうなると通過する瞬間にしか
気づかないので緊張する。
いそうだな、という建物の前は
速度を落とすことも忘れない。


レースじゃない、タイムは競わないし
そんなの競ったら勝てるわきゃない。
去年とおなじに、ここに来ること、
ここを走ること、ここを見ること、
ここにいるひとに会うこと、
それがわたしの目的。


待望の登りにさしかかる。
ギアを思いっきり下げて
ペダルをぐるぐる回す。
だんだん体が温まる。
雨に濡れた林は苔みたいな匂い。


しかし登れば下るのが
このコースのお約束。
水溜まりだらけのアスファルトを
幅2センチぽっちのタイヤで
滑るように降りていく。
ブレーキシューは聞いたことのない音で軋む。

木々の途切れた区間は
下の方に広がる港が見える。
去年にくらべるとだいぶ
重機の載ったむきだしの土が
減っている。


スタートから10キロ、女川駅。
去年建ったばかりの駅舎は
あいかわらず美しく
道路はさんで反対側には
新規に商業施設がならんでいる。

新鮮なさんまのつみれ入り
女川汁が体に沁みる。
おつかれさま!と声がして
振り向くとイシノマキくんがいた。
スタートの時、隣にいた男の子だ。
地元石巻に住んでいるからイシノマキくん。ごめんお名前失念しました。
地元枠でもなかなか手に入らない出走権、去年ボランティアやって今年はじめて走れるんだと言ってた。
震災、たいへんでしたよね、と言うと
家はちょっと…でも家族みんな無事でしたから、と笑顔だった。

彼にとって、ツールド東北はどんなものなんだろう。
彼に見える景色を、どんなにがんばっても、わたしは見ることができない。
想像するだけだ。
もっとちゃんと話をしたかったな。
来年また会えるだろうか。

白い駅舎の脇から見える山の斜面に
いちめん黒々とした墓石が並んでいた。


応援してたら、応援されてた。ツールド東北2016*スタート前

2016-09-18 07:21:49 | 日記


昨夜からの雨は降りやまず。
不透明なグレーの空の下
それでもどうにか盛り上げようと
スタートの号令のMCが
明るい声をはりあげる。

朝5時前に仙台駅を経ったバスは
一時間半ほど走って
会場の石巻専修大学へ
連れてきてくれた。
まだ半分ほどsleepモードの
アタマとカラダを起こすべく
昨日買っておいた冷凍ずんだ餅を
もぐもぐ食べる。
仙台駅ってなんだか早朝か夜しか
いたことないな、とムスメがいう。

長距離コースから順番に出発するので
いちばん短い60キロの私たちは
9時にようやく声がかかる。
それまでは雨宿りしながら
日記でも書いてみる。

先に西濃便で送っておいた
自転車を昨日引き取った時
まっさきにしたことは
傷の確認。
去年痛い目に遇ったから
今年は特にロゴなどペイントまわり
念入りにエアキャップを巻いた。
おかげで無傷。ああよかった。
ハンドル、ペダル、タイヤ
はめこんでいく様子を運送屋が見て
そんな簡単に組み立てられるんだなー
などと感心している。

組み立てたら、周辺を試走。
仮設住宅群は去年のまんま
経年変化してる。
とあるエリアの住宅の壁には
ド派手なペイントが施されてる。

実家の父のことを思い出す。
脳梗塞の影響で歩行が困難になり
せめて美しい装飾の杖を
プレゼントしようとして拒否された。

飾るってことはそれをずっと持つってことだ。
おれはリハビリしてまた自分で歩くんだから、山登ってた時に使ってたピックでいいよ。

あれから何年も経つが彼はいまだに
ピックを使って歩いてる。
年齢を考えると著しく回復して
自分の脚だけで歩くようになるとは
思えない。
でもわたしはもう装飾つきの杖を
買ってあげるなんて言いださない。

叶うかどうかはわからなくても
望むことに意義がある。

だけど
到底叶わないと解っていることに
それでも希望を持ちなさい
だなんてこと
いったい誰が言える?

ペイントされた住宅の
建物にくっつくようにして
小さな畑が作られていて
コスモスとナスが
並んで揺れていた。

移転サリサリ

2016-09-11 12:02:25 | カフェ


おもしろいカレー屋に行かない?
と、妹ちゃん1を誘って
白楽待ち合わせ。

駅からの坂道を降りながら
これから行く店の話を
ざっくりと伝える。

若い頃商社マンだったマスターが
仕事先で食べたパキスタンのカレーに
はまる。
北海道の自宅にパキスタンから
教えてくれる人を呼び寄せ
オープンしたカレー屋が大当たり。
でも寒いのが苦手なマスターは
店を息子に任せてじぶんは南下。
最終目的地宮古島の、横浜は中継地。
外装、看板が怪しすぎるけど
カレーは万人受けする美味しさ。
愛人に手伝わせてるが
これの働かなさすぎるのが見所。
今月、移転したばかり
とはいえ道いっぽん渡っただけね。

ふんふん、と聞きながら歩く
妹ちゃん1、店に到着して
うあぁ…と絶句。
ドアに手をかけるわたし、
あれ?開かない?
まさかの引き戸だった。

中に入る。
愛人ヒロミはきづかず。
しばし立つ。
ヒロミぼーっとしてる。
しょうがない、ここ、座っちゃえ。
椅子を動かす音でヒロミやっと気づき

水持ってくる速度が二倍!

そっか、店が広くなったからか。

水を置いてすぐに去るヒロミに
おどろく妹ちゃん1。
あ、ここ、食べるもの一種類だから、注文とらないよというと大笑い。

サラダとかないの?お茶は? 

みーんなセットだよ。
あ、ビールもあるけど
前にともだちが頼もうとしたら
店員が、いまいそがしいって断った。

呆れる妹ちゃん1。
そしてまわりを見渡し
ここ、もうちょっと整理したら
あといっこテーブル置けるねー、
という。

前の店にあったものを
広い場所に移動して
配置しなおしたので
雑然とあやしい感じが
薄くなってる。

いまのが愛人だよ、というと

え?!あれ、女なの?!
てっきりここのマスターって
ああいう女装のひとかと
思っちゃった!
なんでさっきちかちゃん
それを言ってくれないの?と
思ってたよー

もしそうなら、真っ先に言うってば。

サラダがやってくる。
相変わらず不揃いの
ソーサー。
きゅうりの超厚切り。

カレーも相変わらずの
適当盛り。
なんでごはんがこんなに
潰れてるのー?と妹ちゃん1。
でも食べたら美味しいって。
ほっとした。
うん、当たり前だけど
前から変わらない味。

食べ終わり、ヒロミが
皿を下げにくる。
ふたりともキュウリきらいなの?と
ヒロミ。確かにふたつのソーサーに
キュウリがごろんと残ってる。
あたしキュウリだいすきなのにー、と
笑うヒロミ。
ヒロミにキュウリは違和感しかない。

チャイを飲みながら、妹ちゃん1が
メキシコシティの友達のうちで
乳搾りをやった話を聞く。

その家ではパパが毎朝6時に
フランダースの犬に出てくるような
でかいブリキのミルクいれに
なみなみと搾ってくるのが日課で
やってみる?といわれて
恐る恐るひっぱったんだけど
ぜんぜん出てこないわ、
牛は痛くて怒りだすわで
大変だったんだって。

搾ったミルクは殺菌のため
大鍋でぐらぐら煮る。
上に張った膜は集めておいて
あとでお砂糖焦がしたのを混ぜて
やわらかなキャラメルみたいな
おやつを作るんだそう。

あつあつのミルクに
インスタントコーヒーを入れる。
ものすごくおいしい。
でも慣れてないとおなかがゆるむから
一杯にしときなさいねと
ママがいう。
そしてママ本人は乳糖アレルギーで
ラクトフリーのミルクを
買ってきてるんだって。
せっかくそんな環境にいるのにね。

そんな話を聞きながら
妹ちゃんとはいえ一緒に暮らしてたのは18年で
そのあとの30年は彼女が日本にすら
いなかったりもして
わたしが知らない面白いことや
しんどかったことがまだまだたくさん
あるんだろうなぁと
思ってた。

またサリサリデートしようね。












アコルネ アイシングクッキー♪9月は優雅なティータイム

2016-09-09 19:25:41 | お菓子作り


あたし、絶対うまいよ!
と言う妹ちゃん2を連れて
アコルネさんへ

いったいどこから来る
自信なのかはわかんない

これをどうやって描くかというと
ちょうどいい固さのアイシングを
波に絞ったら
ちょうどいい湿り具合の細筆で
ちょうどいい力加減で
すっと波の盛り上がりを撫でて広げる

当たり前だけど
最初っからちょうどいいところには
ヒットしない
だんだん波の形すら
思い通りにいかなくなり
少しだけ意識が遠のく

ふと横を見ると
目をこぼれ落ちそうに見開いて
唇とんがらかして
息もしないで
集中してる妹ちゃん2

つっついていーいー?
って聞いたら
ダメ
だって



コルネの先がちょっとだけ細くて
波の盛り上がりが薄かったので
撫で広げたらさらに透け透けになった
これはこれで素敵ですよー、と
あこちゃん
そうここは褒めて伸ばしてくれるアコルネさん



綺麗な花の挿絵がいっぱいの
このご本にはどんな物語が
書いてあるんだろう
公園の木陰で読んでたら
どんぐりがパラパラっと落ちてきて
乾いた良い音を立てる

本の栞紐のことを「スピン」って呼ぶんだそう
英語か?と思いきや英語ではbook markerなんだって

ほとんど使ったことないんだよね
開いたら最後まで読まないと閉じられないので



シックなパールをくっつけると
あっという間にセレブレティな雰囲気
遠目に見ればものすごく素敵なティーセット
達成感しかない

あこちゃんのサンドイッチランチは
今日もめちゃうまで
なんとレシピ付き
うちでも作ってみようっと

そしてご一緒したTさんの手作りケーキに
ちょっと感動してしまった

というのも
これ多分Tさん読まないから
書いちゃうけど

Tさんとは2年弱の間
お菓子教室で一緒だったんだけど
毎回ものすごく苦労している様子で
それでも頑張りたいから
レッスンの前の夜は早寝して
万全の体制で来るって言ってて
だから私は先生に見えないところで
ちょっとフォローしたりしてた
そんなTさんがお菓子屋やる、
本家イルプルに修行へ行くと聞いて
応援する気持ちと心配する気持ちが
半々だったの

それから半年
どれだけ彼女が努力したのかが
一瞬でわかるケーキでした
キャラメルの苦味も
ムースの柔らかさも
ジェノワーズのきめ細やかさも
パーフェクトだった

その人の
わたしの
速度で
進んでいけばいいんだな
進むのさえ止めなければ
いつか行きたいところに
到達するから

あこちゃん、今日も楽しいレッスンを
ありがとうございました
妹ちゃん2ともどもお世話になりました

ご一緒した皆さん、またアコルネで
お会いできるのを楽しみにしています!



災難。

2016-09-05 23:30:51 | 日記
例えばたまたま取った電話で
ヒステリックに喚かれたり

例えばたまたま通った道の
頭上から突風に煽られ昨夜の雨つぶが
木の枝からどっさり降り注いだり

そういや昔お世話になってた
超有名な振り付け師について
うちの娘は「災害だと思ってる」と
言ってたな
どこに怒りの地雷があるか
わかんないし
理不尽でもなんでも
言われた通りにしなきゃいけなかったから

よく、因果応報っていうけど
あれ本当だろうか

私そんなに良い子にしてたわけじゃ
ないと思うけど
身にあまる幸せを享受してるなあと
思うことがよくあるし

そこまで悪いことしたわけじゃ
ないと思うけど
こんなひどい物の言われようを
するんだなあと思うこともままあるし

だから
誰かにひどい目に遭わされたとしても
それについて
私にきっと落ち度があったんだとか
ダメな人なんだとか
落ち込まなくてもいいんじゃないかな

昔、仕事をご一緒してる先生に
こんな話を聞いた

旦那様が長く海外に単身赴任してる頃
娘さん二人と先生は寂しかったので
よく一緒にお風呂に入ったり
一緒の部屋で川の字で眠ったりしてて

ある日お風呂で妹ちゃんの方が
「学校でね、嫌なことする子がいてね」
と話し始めたんだそう

先生はかつて同じような話を
お姉ちゃんの方から聞いたことがあって
その時には「でもあなたにも悪いところが
あったのかもしれないよ」と言ったので
今回も同じように言おうとしたら

「◯◯ちゃんは悪くない!
絶対悪くない!」
って、お姉ちゃんが妹をぎゅっと抱きしめた

妹ちゃんはポロポロ泣きながら
そうだよねそうだよねって
自分に言い聞かせるように言った

つい、お行儀のいいようなことを
言ってた自分が恥ずかしかった、と
先生は言ってた

因果でもなく
ましてや
神様が与えた試練
なんてもんでもなく

唐突に降ってきた
迷惑な災難

それ以上でも以下でもない

だから愚痴でもこぼしながら
天井の穴を塞ぎ窓ガラスをテーピングして
一人じゃ大変だから手伝ってもらって
心と生活の平穏を
一刻でも早く取り戻して

また新しい1日を
始めるのがいいと思う