残念なことに、子どもが自ら死を選び、その死に関わった子どもがいます。命を大切にしてほしい、かけがえのない自分の「命」を、かけがえのないほかの人の「命」を、もてあそばないでほしいという、人々の願いもむなしく。子どもが不条理な「暴力」によって死を選ばざるを得なかったご両親の気持ちは、いかばかりだったでしょうか。ここに、子どもを産んだ時の母親の気持ちが書かれています。
あなたは元気いっぱいに産まれてきましたね。真っ赤な顔をくしゃくしゃにして、オギャー、オギャーとそれはにぎやかに泣いていました。あなたを産むのはとても大変だった。1日中おなかが痛くて痛くて。あなたが産まれた時はすっかり疲れてしまったけれど、とてもとても嬉しかった。お父さんも、とても喜んでくれました。内緒だけれど、お父さんの目に涙が光っていたのよ。 産れてしばらくして、おなかをすかせたあなたにおっぱいを飲ませながら、私はいろんなことを考えたっけ。今もそうだけれど、世界の中にはまだ戦争があって、多くの人が殺し合い、両親や家族をなくした子供たちが大勢いたの。手や足を地雷で飛ばされ、目や耳に大きなけがを負った子もたくさんいました。南の国では、食べるものがなくて多くの人が飢え死にしていました。お母さんのおっぱいが出なくて死んでしまう赤ちゃんもたくさんいました。日本でも、子供たちが「いじめ」によって死んでいきました。 私は、一生懸命あなたを産んだのに、あなたが他の人に殺されたり、事故で死んだり、いじめによって死んでしまうなど絶対いやだと思いました。もちろんそんなことはないと思ったけど、あなたが人の命を奪うことも絶対許せないと思いました。 あなたは、もう中学生。まだ世界には戦争があり、毎日の生活の中でも人々が殺され、事故や飢えで死んでいきます。あなたには、命を大切にしてほしいと思います。それがお母さんとお父さんの願いなのです。 |
このお母さんの思いや願いは、すべてのご両親のそれと同じなのです。命を大切にしてほしい。世界に二つとないかけがえのない命だから、自分の命はもちろん、他の人の命もほかの生き物の命も大切にして欲しい。生きることはつらいこともあるけれど、子どもたち一人一人が、お互いの命を大切にしてこそ、生きる喜びや楽しみや価値が生まれてくる、そう思っているのです。
不条理な力で子どもたちの命が失われないように祈ります。