夜行急行「はまなす」もラストラン 青森-札幌間結んだ28年の歴史に幕
青函トンネルを抜け、青森と札幌を結んできた夜行急行「はまなす」は、21日に青森駅を出発、22日に札幌駅に到着する列車でラストランとなる。北海道新幹線開業を前に、多くの鉄道ファンに愛されてきた夜行の旅を確認しようと、役目を終えようとしている「はまなす」に乗車した。(杉浦美香)
3月中旬の午後9時半すぎ。JR青森駅のホームでは、「はまなす」の入線をカメラに収めようとする鉄道ファンらがすずなりに並んでいた。
青函連絡船の深夜便を受け継ぎ、昭和63年3月の青函トンネル開通とともに運行が始まった「はまなす」。同じく廃止が決まっている寝台特急「カシオペア」のように豪華な個室はないが、割安な急行料金で利用できることもあり、学生をはじめ多くのファンから人気を集めてきた。
車両は、2段ベッドが向かい合う開放型のB寝台や特急グリーン車の椅子を改造したドリームカー、通常の指定席料金で連絡船のように横になれるカーペットカーなどバラエティーに富んでいる。
出発は午後10時18分。今回利用したのはカーペットカーだ。敷き詰められたカーペットに腰を下ろし、足を伸ばす。左隣には山形県村山市から北海道江別市の大学に通う娘の卒業式に出席するため、娘と乗りこんだ母親がいた。「娘に会うため何度も使った。なくなるのは本当に残念」。右隣に座っていた福島市の女性は「はまなす」の廃止を惜しんで乗車したといい、「早朝に着くから時間を有効に使える。北海道旅行では本当にお世話になった」と振り返る。
午後11時すぎ、列車は青函トンネルへ。消灯された車内では、通路をはさんだテーブルで見知らぬ同士が菓子を交換し、はまなすの思い出に花を咲かせている。午前0時45分すぎに函館駅に着くと、ホームに降りた乗客が一斉に走り出した。電気機関車からディーゼル機関車に交代するのを写真に収めるためだ。
同駅で、鉄道ファンという北海道苫小牧市の女性(43)が手製の「はまなす」の旗を持って乗りこんできた。旗はホームで写真を撮る鉄道ファンのための演出という。「はまなすは出張や飲み会などの際、移動を助ける道民の生活の足だった」
札幌駅に到着したのはほぼ定刻通りの午前6時すぎ。「また会えるといいね」。右隣にいた女性と連絡先を交換した。8時間弱、約480キロ。出会いと別れの場でもあった「夜汽車」は、まもなく28年間の歴史に幕を下ろす。
結局、自分の寝台車体験は、学生時代に青森から上野まで乗車した『はくつる』と、新婚旅行で上野から青森まで乗車した『ゆうづる』だけだったんだなぁ。