ことのはのはね~奈良町から

演劇、アート、短歌他、町家での出会いまで、日々を綴ります。

人間国宝・梅若実 後援会発会パーティー

2017-06-06 | 演劇
新聞各紙で既に発表されていますが、日本を代表する能の梅若六郎玄祥先生が、梅若実を来年襲名されます。朝日新聞5/11によると以下の通り。

観世流シテ方能楽師で人間国宝の梅若玄祥(うめわか・げんしょう)さん(69)が来年3月、能楽界で重要な名前の梅若実(みのる)を四世として襲名することになった。玄祥さんは、明治時代に名人といわれた初世のひ孫で、二世の孫。三世は、父の故五十五世梅若六郎に追贈されるという。」

初代梅若実は、玄祥先生の曽祖父にあたり、明治期、能が大変な時期にその才覚で乗り切った、近代の能にとって恩人ともいえる名人です。その名を継ぐ玄祥先生。その後援会ですが、哲学者の梅原猛先生が名誉会長、宝塚の顧問、あのベルばらの植田紳爾先生が顧問…と、関西文化の御大が並びます。こうした人脈の要にいるのが、梅若先生のプロデューサーである、西尾智子先生。西尾先生のことは、既に二度ブログで書きましたが、なんというか、今日のパーティーの参加者を見ながら、芸術文化を応援するために、人と人をつなぐということは、どういうことなのか、それをつくづく感じました。財界の方始め、藤間勘十郎さん、桂南光さん、君島十和子さん(さすがの美しさ!)など、華やか皆さん、またいつも先生の舞台に駆けつけてくださる、西尾先生の友人に、各新聞社の記者さん…。そんな中に私も座りながら、美味しいお料理をいただきました。神戸吉兆の祝い膳!にリーガロイヤルのビュッフェ…。日頃、自分の料理ばかりの主婦としては、この機会に味わいましょうね。
いえ、お料理より何より、素晴らしかったのは、皆さんのご挨拶。梅原猛先生は92歳!その声の張りのあること。梅原先生は、玄祥先生の「鵜飼」という能を見た時の感動を述べられました。「鵜飼」は差別されるものの悲しみがあり、その悲しみがなんともいえず伝わってきた、そのようなことを梅原先生は言われました。そして「さびた花、老いの華を咲かせてほしい」とも。「さびた花」…なんと素敵な言葉でしょう。若いころの体力や力わざとは別の「花」を年月がもたらしてくれる…。アンチエイジングなんかいらないですよ、本当に。真実の「美」は老いてこそ。さすが梅原猛先生です。
さて、挨拶の中で、玄祥先生は古典芸能に対する危機感を述べられました。この後援会も、後進の育成につながるものにとの願いを言われました。確かに、普段の暮らしに「能」「歌舞伎」など出てきません。奈良は「能」発祥の地で、気をつけてみると身近なところに「能」はあるのですが、それでも一般には縁遠いです。玄祥先生と、西尾先生のコンビは、これまで、能とバレエ、バイオリンや歌などとのコラボで、新たな能の地平を切り拓いてきました。ジャンルは違っても「美」の共同作業は、全く「能」に縁のない人たちにも、新たな機会を与える作品を生んできたのです。その最新企画は…なんと「マリー・アントワネット」を能で?!公演するのです。玄祥先生がアントワネット!どんな舞になるんでしょうか!もちろん、こんな企画は西尾先生でなければ思いつきません。
その西尾先生の挨拶。いつもすごいなと思うのは、本音、ユーモア、感謝、愛…に満ちていること。大いなる仕掛け人でありながら、童女であり、たくましく、お茶目で、エレガント…。お話の中で思わず可笑しかったのは、あのバレエの熊川哲也を世に出した時、彼が珈琲のCMに出てブレイクしたから、玄祥先生もCMにと。実際、いろいろオファーがあり、カーボーイ?!役なんてのもあったり…でも人間国宝がそれはいかんでしょう、と実現しなかった…とか。そんな楽しいお話も含め、玄祥先生との強いつながりを感じました。
その「梅若実」後援会は、個人、法人問わず、入会できます。いろいろ特典もあるので、是非、皆様、梅若実の至芸をご覧になる機会をどうぞ!
(写真は、梅若先生、西尾プロデューサーと)