コロンブドール

Les Films de la Colombe d'Or 白鳩が黄金の鳩になるよう人生ドラマを語る!私家版萬日誌

K-20 怪人二十面相・伝

2009-03-01 | 映 画
         「K-20 怪人二十面相・伝」

 2008年 配給:東宝 2時間17分   劇場 新宿バルト9 シアター9(館内一番大きなスクリーンで) 22:10から上映

監督・脚本:佐藤嗣麻子 製作総指揮:阿部秀司、奥田誠治 原作:北村想
撮影:柴崎幸三 美術:上條安里 脚本協力・VFX協力:山崎貴

出演:金城 武 松たか子 仲村トオル 國村 隼 高島礼子


 今年最初の映画鑑賞は正月元旦にこの映画「K-20 怪人二十面相・伝」から始まりました・・・・。
題名があまり良くなかったのでちょっと気が進まなかったのですが、監督が日本で一番女性監督として才能があると思っていた佐藤嗣麻子さんだったので観てやろうかと思う程度の気持で劇場に入ったのですが、それがなんと正月映画にぴったりの娯楽エンターテイメントに徹していた作品で、正月の御屠蘇気分のアルコールがいっぺんに飛び、あらたに大スクリーン映画の醍醐味に酔ってしまいました!

 まずはトップシーンの架空都市 1949年日本の都市ー帝都ーの空からの俯瞰CG空撮。
設定がいい。第二次戦争が起こらず、19世紀明治維新から続く華族制度により、極端な格差社会となっていたこの都市の設定を戦前からの建物・近代建築ビルとぼろい木造長屋が、その帝都での貧富の差をいっぺんで表現し、この架空都市”帝都”の国患を物語るエピソードシーンは良かった。巨大飛行船と小型ヘリコプターが帝都上空を飛び、ワンカットで帝都の設定を語るCG・VFX映像は印象的。このCGに時間、お金をこのトップシーンにかけた価値が効果的に表れた好例だと感心しました。
 また作品は今まの邦画にはないユニバーサル的な派手でちょっとあらい映像演出ででしたが、英国で映画修行した佐藤監督のよさが随所にちりばめられていてました。特に内面的なエスプリとウエットユーモアな演出と会話はけっこう私はくすっと笑えました。しかし劇場での笑いは数人だけだったのが残念ですが、この作品で例えば人から教えてもらったら”ありがとうでしょう”としつこく何回も繰り返して言うセリフシーンは西洋的な発想なのかもしれませんが・・・・。現在の日本の社会では物資資本文明に侵され感謝の気持ちを忘れていることをこの作品は示唆しているようでした。また金持と義賊の対比描写が可笑しく描かれていて物資社会の可笑しさを間接に示唆して面白かったのですが観客はVFX映像に圧巻され見落としていたのが残念ですが、改め鑑賞してもらい気づいてくれたらと思っています・・・。
 このスチール写真はその示唆を端的に表していると思います。写真の場面は、女性監督らしい感情が示唆されていて、引く手数多の求婚者(リッチマン・プアマン)で揺れる乙女ちっくな結婚願望が表現されているユーモラスな場面も可笑しく面白く好きな場面です。もちろんロマンチックだけでなく、ラストでわかるのですが、人生の相棒の選択により人生観が変わるという啓示も隠喩されているのも好感しました。
 ただ一つ、VFX映像に便り、SFX映像演出がカメラマンに頼りっきりで登場人物の演出演技がぎこちなく映像と演技のギャップに極端な格差意識が感じられたのは私だけでしたでしょうか・・・・。
優作「ヴァージニア」「エコエコアザラク」を撮った佐藤嗣麻子監督ならでの繊細で内面を徐々に浮き出す、じっくりとした演出の演技をみせて頂きたかったです。
出演者の演技が流れているようで何かしっとりとしていなかった感じが見うけられました。
ビジュアル映像の構成、打ち合わせで多くの時間を浪費したのでしょうが、撮影現場でのどっしりとした演出をしていたならば邦画界での超大作作品VFX成功傑作作品として永遠に市井の人々の脳裏に深く焼きつく名作として語り継がれたと思いますので、ここでひとつ警鐘を鳴らしておきます。

 またこの作品、日テレ提携作品と知らずに観にいったのですが、あのスタジオ・ジブリ作品のアニメ・ポニョを作った手法で、実写版映画を製作していることに驚きました。
また現在この日テレが、インデックス社に乗っ取られた日活株を今年引き取った事実は、この作品同様邦画に新しい風を呼び込み吹かせそうで、本年からの邦画界の楽しみでもあります!

インデックス、「日活」株式の34%を日本テレビに売却


観終わってから良いも悪いも伝えたかったので取り急ぎー。  YOUZO