ヤスの雑草日記(ヤスの創る癒しの場)

私の人生の総括集です。みなさんと共有出来ることがあれば幸いです。

異文化交流なんていうけれど…

2007-06-24 23:51:10 | Weblog
異文化交流なんていう言葉が何の脈絡もなく流通する時代になってしまったが、この問題は考え詰めると、意外に深い問題を内包している、と思う。僕は教師時代に、この異文化交流について、たぶん記憶に間違いがなければ、少なくとも5本は論文を書いた。とは言え、その論文が書かれたのは、中学高校の中で完全に閉じてしまって、まるで広がりのない「研究紀要」にである。論文を提出すれば、論文の審査もなく、幾らだったか忘れたが、何万円かが出るので、それを書籍代に使うために、書いていたようなものである。その後、学校を辞めてから、日本語で書いた論文をハワイのイオンド大学(通信制)に英文に書き直して提出したら、英語学の教授として認められたので、人間どこかで認められるものだ、と思う。かつて僕が勤めていた学校の管理職は、教員の自己研鑽に対してまるで興味がなかったわけで、自分たちが提唱しているはずの研究紀要に、目を通したこともなかったはずである。ひどい現実だ、と思う。
さて、異文化交流のことに話をもどすが、現在の日本の教育現場においてはかなり表層的な捉え方をされているように思う。これは僕の教師時代とあまり変化はないのではないか、と思われる。まず、そのコアーは、異文化という内実と外国語の習得方法という技術論とが混同されて理解されているフシがある。勿論JETプログラムによってたくさんのALTが日本にやってくる時代なのである。彼らから、自然に得る生活習慣の違いについて学ぶ機会も増えたことであろう。しかし、たぶんそこ止まりだ、と思う。大きく見て、異文化交流=外国語習得という図式は、問題を深く考えなければ、そこに止まってしまう確率が高い。
異文化交流とは、言うまでもなく、異文化を理解する、ということである。簡単に異文化という言葉で済ませているが、原点にもどって考えてみれば、その困難さに驚かない人は少し想像力に欠ける人である。たとえば、日本の文化とはなんぞや? という問いを立てて考えれば、知識人の数だけ解釈が異なる、と言っても過言ではないはずだ。その手の書籍は新書版の簡単なものを数に入れれば、もう数えきれないほどの論理が渦巻いているのが現状である。勿論異文化を理解する土台はその国の言語習得は必須だろうが、もし極端な話をすれば、異文化を理解するには、いまや、言語の習得も第一義的な要素ではないのかも知れない。それだけ、海外の文化的背景は日本語に翻訳されて、どんどん日本語で読めるからである。
もう少し問題の在り処を深めよう、と思う。異文化理解というのは、その国の文化、言葉を換えて言えば、その国の思想の様々な有り様を理解する、ということである。日本人が日本の文化の本質を考え詰めないように、海外の庶民もその国の文化の根っこに辿り着けているとは到底思えない。生活言語から、ごく表層的な文化の違いを捉えて、異文化理解、と言っているのが、現実的な見方なのではないか、と思う。それならある国の文化を理解することなんて、一生無理な課題と言えるのではないか? という疑問をお持ちの方が出てきて当然である。そうなのだ。その国の文化に関して、その文化の底流を流れる思想性までを理解しようとすれば、いっぱしの研究者が生涯をかけて研究することになる。それだけ奥が深いのである。
それでは僕たち一般人に表層的な外国語習得という範疇を超えて、異文化理解をなす術があるのか? というと、これが、ちゃんとあるのである。生活言語を身につけたい、と思うなら、すぐに海外に飛び出して生活しはじめるとよい。できれば大学にでも籍を置けるなら、そうして生活を数年やれば、それなりの理解力はつく。そんなことが不可能な人はどうすればよいのか? 意外に簡単なのである。翻訳物の目的言語の小説とか哲学をたくさん読むことである。そこにこそ異文化の深い知恵が眠っている、と僕は確信している。アメリカやヨーロッパの幾つかの国の小説や哲学の翻訳物は、たくさん出回っているではないか。それも文庫本で読めるのだから、こんな恵まれた環境はないのである。異文化理解に関する学者の書いた、一般読者向けの本も、推薦図書としてはとてもよい。ただ、かなり読まれているとは思うが、大前研一とか、落合信彦といった人たちの書くものにはウソが多いから気をつた方がよい。もし読む機会があれば、眉に唾をつけて読んで丁度よいか、と思う。

○推薦図書「しっかりせよ自由主義」 松山幸雄著。朝日文庫。民主主義の本質的なありかた、海外に通用する日本の文化のあり方、そこには教育の問題も、具体的には日本人と英語の問題も書かれています。そして国際理解にとって最も重要な課題である、「開かれた社会」をどう創るか、さらにアメリカへも苦言をしてはばからない、かなり奥の深い文化人の一人だ、と思います。お勧めです。

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