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54.雷沢帰妹

2009-09-26 20:24:25 | 易の解釈
54.雷沢帰妹

帰妹は結婚の卦ですが、易ではあまり好意的に解されていません。というのも、漸の正式な手続きや真っ当な交際期間を経るそれとは逆に、電撃結婚とかデキちゃった婚のような状態を象徴するからです。お互いの愛情を確かめ合ったり、時間を掛けて育んでいく前に、すでに既成事実を作ってしまうという内容。現実には少ないかもしれませんが、玉の輿的な目的で相手に近づくことも考えられます。また、帰妹は帰結とか帰着も意味しています。漸が結果に至るまでのプロセスを重視するのに対し、帰妹は結果それ自体に突っ走るあまり、その過程を軽視する傾向があるようです。目先の利益に囚われて生活を狂わせないように気をつけなくてはなりません。

一般的に言えば、漸のように正しいやり方をした方が、結果として巨大な基礎を築くことになるため長期的には有利です。しっかりと大地に根を張る巨木のような下地があればこそ、応用する際の効果を最大にすることができます。それに反して、帰妹は土台が薄く、まるで安普請のアパートのような印象です。玉の輿に乗るにしても、精神的な絆とか繋がりが希薄であれば、いい夢を見られる関係は長続きしません。仕事などの面においても、小手先のテクニックに目を奪われたり、表面的な成果のみに気を取られていると、学ぶことの効果が低減するだけでなく、思わぬ誤算や歪みが生じてしまうおそれがあります。

綜卦および裏卦は風山漸。繰り返し書いているように、この両卦は立場も視点も意味も考え方も真逆です。漸は「千里の道も一歩から」で漸進する(少しずつ進む)タイプ。対する帰妹は手っ取り早くスピード勝負、時に憎まれ口や欲深さが仇となるタイプ。どこか「ウサギとカメ」の童話みたいです。その時の状況や使い方にもよるでしょうが、基本的には強引に事を進めても、契約破棄されたり信義を疑われたりで上手くいかないことが多いだろうと思います。特に、目前の餌に釣られて浅ましくなっているのを相手に気取られたら、もうそれ以降は取り合って貰えないでしょう。もし何かをする前に自分の中の卑しさとか意地汚いエゴに気がついたなら、相手に迫ったり行動を起こす前に自問しましょう。「これからしようとしていることは本心(良心に則ったもの)なのか?」と。

類似関係は山火賁です。屯&晋から20番目であり3巡目の2。2は偶数で内向性、その3回転目なのでやはり内向きです。また、外を表とすれば内は裏。先の19番目の噬[口盍]&漸のように表向きのルールに従って生きようとする性質とは異なってきます。20の数字は10のベース的な社会システムとは違い、十分に多様性が反映された状態です。清濁を併せ持ち、善悪が同居しています。何が好ましくて何が忌まわしいかといった画一的な判断が通用しない世界を意味します。人々の日常を支える産業から戦争を助長する軍事産業まで、ありとあらゆる価値観が混在した世の中の象徴。各個人の興味を引く対象が、このシステムの中のどこかに必ずあります。

ここまでの流れを概観すると、16番目の蠱&鼎で複数の概念や物事が混在した後、17番目の臨&震で相乗したり相殺したりの面に気がつきます。そしてそれを18番目の観&艮で自分なりに取り込もうとする。次いで19番目の噬[口盍]&漸で噛み砕いて有効利用したり、対応範囲を少しずつ広めていった結果、20番目の賁&帰妹で何でも揃った巨大デパートのように複雑化・多様化することになりました。この流れを受けて、帰妹は正攻法とは異なる手段に長けるようになり、賁は雑多なモノで自分を飾り立てようとするわけです。大勢の人が努力してきた結晶として不自由さを感じないほど便利な世の中になりましたが、そこに埋没すると自分の本来の意志が見えづらくなくなってしまいます。これは賁や帰妹にすがることの弊害であり、有機的な存在としての人間の一つの弱点とも言えるものです。

補完関係は天地否、その先のヴィジョンは天火同人。否は屯から10番目の卦で2巡目の1。20として複雑化する前のベーシックな世界観とか社会構造を意味しています。この10という基盤に乗っかる、または傘下に入ることで、そのシステムの歯車として生きることになります。これは地球という大きな枠で捉えれば全員がそれに当てはまりますし、連盟国とか各国といったスケールで捉えることも、また地域や会社やクラブといった比較的小規模な範囲での所属を表わすこともできます。それらは一人ひとりにとっての日常を形作る土台なのですが、上下関係のような単調な構造であるため、緯度に対する経度のように、10の垂直構造(Y軸)には20という水平構造(X軸)を補完する必要があるわけです。最終的には、これに30という吊り上げ構造(Z軸)が重なります。

ただ、否は上からのプレスが強く働く卦(ちなみに類似関係の[女后]は下から)なので、我慢ならないことには反感も抱きますし、忍耐を強いられることもあります。中には、文句を言ってもどうにもならないこともあるでしょうが、自分の生活環境にこだわりがある限りは、たとえストレスやプレッシャーで苦しんだとしても内心では仕方ないと思う傾向があります。それでも、その状態を続けていると心身が疲弊してきてしまうので、仲間内で結束して抗議したり、あるいは、逆らわないまでも現状を楽しくするための独特の遊びや趣味を友達と共有したくなったりします。こうしたストレスのはけ口を見つけることで、次第に縦関係のしがらみからズレて、横の繋がりのネットワークが広がっていくのです。

<爻意は後日、追加更新します。>


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