三夕の歌「見わたせば」藤原定家
大河ドラマ「光る君へ」が話題になり、いよいよ終盤を迎えようとしています。平安時代の中期を生き「源氏物語」の著者として知られる紫式部(まひろ)を主人公とした歴史ドラマです。ドラマの中で和歌が重要なアイテムとして用いられています。登場人物たちは和歌を詠み交わすことで自分の思いを相手に伝えたり、交流したり和歌を使っています。「古今和歌集」の序文に選者の紀貴之が書いていますちょう「力を入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をあはれと思はせ男女の仲をも和らげ、猛き武士の心をも慰むるは歌なり」と記しています。「和歌を用いることで、本来は人間にはどうすることもできない自然や超常的な存在そして不可解な男と女といったものを動かすことができるというのだ。」これこそ和歌の「和」である。和歌の「和」は調和、和解、融和、和合、の「和」であり最終的には平和の「和」でもあります。和歌が作り出す調和と平和の王国、それが「和国」と呼ばれる日本という国の理想像ではないでしょうか。聖徳太子の「十七条憲法」にはかの有名な「和をもって貴しと為す」という一節があり和を重要なキーワードとしています。その思想を継承した人物として藤原定家がおり、次の歌を詠んでおります。私の好きな和歌です。「見わたせば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ」
戦乱の時代に平和を求める魔法、それがこの歌に表れています。「三夕の歌」としても有名でもあり、茶道の詫び、さびにも通じる名歌でもあります。現代の世界情勢にも「和」の心が通じ合い平和な世であることを願い、古典の心を継承していきたいと思います。
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