藤壺
「それは年老いているので醜いのです」なんとも身も蓋もないこのセリフの主は「源氏物語」に出てくる藤壺中宮の言葉です。源氏の父帝の愛姫でありながら源氏との間に不義の子(後の冷泉帝)をなした女性です。古代中世の文学では「老い=醜い」は常識でした。「徒然草」でも「命が長いと恥が多い、長くとも四十にならぬうちに死ぬのが見苦しくない」とあり、その理由として「その年頃を過ぎると容姿を恥じる心ばかり深く、しみじみとした感動もわからなくなっていく」とあり、老いると精神的にも衰えるということです。我々現代人には衝撃的な「老いてはべれば」であり、100年寿命の現代では考えられませんね。平安中期の時代は美男美女が主人公でありましたが「源氏物語」が他の物語と大きく違うところは、そんな源氏が、末摘花(すえつむはな)・花散里・空蝉、といった三人ものブス女を妻や恋人にしてることです。そればかりか、源氏は19歳のとき、57,8歳の年増の女性とも関係をもっています。現代人もビックリのこの設定に当時の人々はまして度肝を抜かれたことでしょう。とにかく来年の大河ドラマ「光る君へ」は今から楽しみにして期待します。