晩秋の夕暮れ
11月も半ば過ぎ、暑さも急に遠くなり朝夕の気候も行楽の秋、スポーツの秋という一方で人生の秋といい、秋風が立つともいい、この二つの顔があるといわれています。過ごしやすく活動に適した秋と、万物の活動を停止する秋と二つの顔を持つ秋でもあります。古人の歌にもこれらの風物を詠んだ歌が沢山残されております。あの百人一首のなかにもいくつかのこされております。
〇 奥山に紅葉踏み分けなく鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき 猿丸太夫
奥深い山に紅葉を踏み分けてやってきて鹿の鳴き声を耳にすると秋の悲しさが一層身に染みて感じます。
〇 寂しさに宿を立でて眺むればいづこも同じ秋の夕暮れ 良澹法師
寂しさにこらえかねて家を出てあたりを眺めたがどこもかしこも秋の夕暮れでもの寂しいものだ。
本当にもの寂しさを感じさせる歌ですが、また人生も同じく晩年を迎えてくると心に物寂しさを感じるのは私だけでしょうか・・・そんな思いに老けながら一服のお抹茶をいただいております。