8分で早読み 岡倉覚三『茶の本』 福井県立美術館 学芸員 佐々木美帆
私達の「古典の会」も来年度の勉強の教材に岡倉天心の「茶の本」に決まりました。岡倉天心は貿易商の父の教育方針で日本語の読み書きの前に英語を覚えたと言われ、類い稀な語学力を持ち、わずか10歳で東京外国語学校(現在の東京外国語大学)に入学、その後外国人アーネスト・フェノロサの助手として日本美術の調査を始め、衰退していた日本文化の再興を図るように。1887年東京美術学校を設立、美術教育の礎を築くものの職を追われてしまう。当時は「文明開化」を合言葉に急激に西洋文化が流行し、東洋文化は遅れてると捉えられていました。禅の思想に基ずく精神性を宿しながら日本独自に発展していった茶道の不均衡で不完全なものにこそ美が宿るとされる「茶道の要素は不完全なもの」を崇拝するにある」という言葉には西洋と東洋で異なる価値観があるだけで優劣をつける必要がないことを伝えています。現代の日本もあまりにも洋風化され、日本の伝統文化がややもすると薄れていく傾向に私も多少危惧を感じていますので、日本古来の伝統文化は後世代にも残してゆかねばなりません。その意味においても「茶の本」がとても有意義な勉強になると思いますのでしっかりと勉強しようと思います。