【霊告日記】第五回 チークタイム 「青い影」&「メリージェーン」
【 A Whiter Shade Of Pale - Procol Harum 】
学生時代は故郷の若狭出身者のみが入寮資格がある学生寮に住んだ。その寮には図書室があった。ある日その図書室でソシアルダンスの講習会があった。寮の一年生は全員が参加。当時四年生の先輩が講師をつとめてくれた。基本ステップを学んだ後の練習は寮の先輩が相手になってくれたのだけれど、油断すると背負い投げをくらったりしてソシアルダンスの練習なのか柔道の練習なのか分からないありさまだった。
こういうところが学生寮のありがたいところなのだが四年生の先輩はチークダンスの踊り方まで講習をしてくれた。「いいかカワバタ。チークタイムに入ってもいきなり抱き付いたりしたらあかんぞ。女の子がびっくりしてしまう。どういうふうにチークダンスに持っていくかというとだな」と秘伝の術の公開が始まった。その瞬間から柔道の練習どころではない。みんな真剣な目付きになって先輩の講義の声に聞き入ったのだった。
「右手は女の子の背中に当てているやろ。そして左手は相手の右手を握っている。その右手をやな、曲のいい感じの時にタイミング良く自分の左肩にそっと置くんや。そして自分の左手はするりと相手の腰に落とす。そしたら右手も腰の辺りに落としてもいい。それから両手でだんだんと相手を抱き寄せるんや。これがチークダンスの入り方や。どや?わかったか」。なるほどと思った。実践に使えるテクニックだと感心した。同郷の先輩というものはありがたい。こんな技は街のダンス教室やプロの講師は決して教えてくれないだろう。
私が大学生だったころには学生主催のダンスパーティが春秋の週末どこでもよく開かれていた。ダンスパーティを略してダンパと云った。よくダンパに行ったものだ。ダンパでは最後の数曲はスローのブルースが連続して演奏される。チークタイムが始まるとまずかかる曲はプロコル・ハルムの「青い影」だった。そしてラストの曲は必ずと云っていいほどつのだひろの「メリージェーン」。そんなわけで「青い影」や「メリージェーン」を聴くと若き日々のチークタイムを私は想い出すのである。陶然たる至福の時間を。
【つのだひろ ♪メリージェーン 】
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