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【霊告月記】第六十五回 ムイシュキン公爵とは誰か?

2021年04月01日 10時00分00秒 | 霊告月記61~65

【霊告月記】第六十五回 ムイシュキン公爵とは誰か?
     
ムイシュキン公爵(左)とナスターシャ・フィリッポヴナ(右)


前回の霊告月記で、橋川文三はムイシュキン公爵のような人であると書いたのだが、それではムイシュキン公爵とは誰か? ムイシュキン公爵とは、言うまでもなくドストエフスキーの小説『白痴』の主人公である。


ある研究会で橋川文三について語った後で、橋川文三は神経質な人ですかと聞かれたことがあった。橋川文三は神経質などころか、これほど寛容な人はいないと思っていたので、「橋川文三は寛容な人です」と答えたのだが、うまく伝わらなかったようなので、さらに「ムイシュキン公爵のような人です」と答えたことがあった。

この回答は我ながら名答だと思われたので、この直観をさらに詳しく確かめたいと思ってもう何度目になるだろうかたぶん五度目か六度目かの『白痴』再読を始めている。

『白痴』はドストエフスキーのなかで私がもっとも好きな小説である。尽きせぬ面白さと魅力を放つ『白痴』であるが、この小説をかくも私が好むのは、ナスターシャ・フィリッポヴナという絶世の美女がヒロインとして登場することにもよる。これほど神秘的で美しい女性に絶大な信頼を寄せられたのがムイシュキン公爵であった。

橋川文三=ムイシュキン説は、いま揺るがすことができない重要な仮説として私の内で発酵しつつある。


ナスターシャ・フィリッポヴナの魅力を完璧に再現した映画★ 

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【霊告月記】第六十四回 不思議の国の橋川文三

2021年03月01日 10時00分00秒 | 霊告月記61~65

【霊告月記】第六十四回 不思議の国の橋川文三

     傑作中の傑作  ドストエフスキーの『白痴』

橋川文三は不思議な人だった。彼は他者を批判することを一切しなかった。人を批判しないということが彼のレゾンデートルだったと断定してもいいくらいそのことは徹底していた。

しかしここに稀な例外がある。下記引用部分で橋川文三は三島由紀夫を批判している。
 ~~~私は『英霊の声』のもつ一種の迫力を否定しようとは思わない。しかし、この作品は作品としては必ずしも成功作とは思われない。むしろ不気味なメルヘンというように感じるが、それ以上のものとは思えない。それは、何よりも、ここに描き出された天皇と英霊の姿が、恐らくあの浄福の時代に現実にそうであった結びつきを絶たれ、すべてノスタルジアのもつあの美化作用にあまりにも浸透されているからである。あの時代のパトリオットは、いま、霊界において、決してこのような姿をしていないであろうというのは、ほとんど私の思想である。(橋川文三『三島由紀夫論集成』「中間者の眼」深夜叢書社)

橋川文三の三島由紀夫論は三島文学への共感的理解に満ちていた。その理解は三島自身を深く感動させたという事実がある。

橋川文三が批判したもう一人の対象として丸山眞男を挙げることができる。橋川文三の超国家主義に関する論は丸山の理論を正面切って批判した文章である。だが橋川文三にとって丸山眞男こそは師と仰ぐ人物であった。

つまり、橋川文三は、師と仰ぐ人、深く共感する人物に関しては、他者を批判しないというその根本的態度をはずすこともあったということである。
 
虚栄心からそしてただ虚栄心からのみ橋川文三を批判した二つのテキストを私は偶然の事情から知ることになったのだが、意志と知と洞察力においてはるかに勝る橋川文三に対して批判的言辞を弄したのは加藤周一と長谷川宏の二人であった。長谷川宏に関しては戦争体験論に関しての言及があるので、比較的まともなのだが、加藤周一という人間がかくも薄っぺらい言説を垂れ流していたとはオドロキであった。

たまたまヘーゲルを読んでいたら、次の一節が目に留まったので引用しておく。

「人間の虚栄心は、なにかを非難することで、簡単に満足させられる。非難されるものよりも自分のほうが意志と知と洞察力にすぐれている、と見えるからです」(長谷川宏訳・ヘーゲル『法哲学講義』作品社2000年)

橋川文三とはどんな人であったか、ひとことで答えよと言われたら、私はこう答えたい。「橋川文三は、ムイシュキン公爵のような人でした。ムイシュキン公爵とは、ドストエフスキーの『白痴』の主人公です。ドストエフスキーは、もし現代にイエス・キリストが蘇るとしたなら、ムイシュキン公爵のように、つまり痴愚のような人とみなされると考えて『白痴』を書いたのです」。

さて、この回答を聴いて、ドストエフスキーの『白痴』を読んだ人ならば橋川文三がどのような人であったか瞬時に覚るであろうし、読んでいない人、つまり文学に無縁な人は、この私の回答はちんぷんかんぷんと映るに違いない。それは仕方がないことだ。

】霊告【 橋川文三は20世紀の日本に降臨したムイシュキン公爵である。

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【霊告月記】第六十三回 独学者とは何か? 

2021年02月01日 10時00分00秒 | 霊告月記61~65

【霊告月記】第六十三回 独学者とは何か? 

      独学の天才・北一輝

◆独学者とは何か? 

私のブログ(goo)には、自己紹介のスペースがあって、そこで下のように書いています。

【自己紹介】
●『来たるべきアジア主義』 =当ブログのメイン・ディッシュ
●私は誰でしょう?
 ☛〈野戦攻城〉がモットーの独学者(autodidacte)です
●ちきゅう座会員
 
つまり私は自己紹介として〈野戦攻城〉がモットーの独学者(autodidacte)です 、と自分のことを規定しているわけである。しかし、そのように規定しながらも、独学者とは何か、独学の効用はあるのかないのか、独学という内実はなにか、そもそもその語句の意味するところは何か、等々について、いままで私はなにひとつ説明したことがない。

この自己紹介文を読んで、「ははあ、このブログの主宰者は、こういう人なのか。これで分かったぞ!」と思う人はまずひとりもいないだろう。であるからして、この際、私が定義するところの「独学者」の意味合いを開示しておきたいと思った。

◆独学者とは何か? 定義ならびに解説




 風になびく旗を見ながら、二人の僧が言い争っていた。
「これは旗が動いているのだ」
「いや違う。風が動いているのだ」
 そこに通りかかった慧能がいった。
「旗が動くのでも、風が動くのでもない。あなたたちの心が動いているのだ」

☛独学者とは、風になびく旗を見て、それは旗が動くのでも風が動くのでもない。それは人の心が動いているだけだと考えるような人のことである。

結論:独学者とは独覚者でもある。

三乗(声聞乗・縁覚乗・菩薩乗)の内、中位の縁覚乗は師がなくして覚るゆえをもって独覚者とも呼称せられますから、独学者=独覚者という解釈も大いにありえます。

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【霊告月記】第六十二回 世界思想の獲得に向かって一路邁進!

2021年01月01日 10時00分00秒 | 霊告月記61~65

【霊告月記】第六十二回 世界思想の獲得に向かって一路邁進!

         九鬼周造(1888 -1941)

ダンボールの部屋の霊告月記シリーズは2015年11月から開始した。毎月1日に更新し今回で62回目を迎える。2016年から2020年まで毎年1月1日には今年の目標といった内容で抱負を述べてきた。いまそれらの文章を読み返してみていささかの感慨を覚えざるをえない。高い目標を掲げてはいるがまるでカタツムリがゆっくりと這うようなペースで歩んで来た光景が自覚されるからだ。

2016年1月に私はこんなことを述べている。「2020年の東京オリンピック閉幕の月を目途に『来たるべきアジア主義』を質・量共に凌駕する作品を書き下ろしで発表したいと考えています」と。東京オリンピックはコロナ禍で開催されなかった。巻き添えを食って私の計画も頓挫した。

2017年1月は芥正彦氏宛の私信を公開している。新年の抱負はとくに述べていない。芥正彦氏は2019年に映画「三島由紀夫VS東大全共闘」が公開されてその鬼才ぶりが評判になった。

2018年1月の抱負。「さて、今年の計画を簡単に。北一輝の読み直しを全面的に行う予定です。実は昨年すでに北一輝の著作の全面的な読み直しをおこない、60枚ほどの北一輝論を書き上げています。その北一輝論を第1章とし、更に広い視野から北一輝を考えて続編を書こうというのが、いま私が抱いている計画です」。これはほぼ実現した。昨年北一輝論を発表し北一輝に関しての研究会の報告も公開している。

2019年元旦。「一年の計は元旦にありと云うので、今年の計画の一端を述べてみたい。江戸思想史とロシア思想史を併行して研究する。そしてさらに世界思想の獲得に向かって一路邁進する。個別領域の研究も大事だが私の最終的な目標は世界思想の獲得である。21世紀を領導する内実を持った思想はいかなるものでなければならないか。着実に地道に思索を重ねることによってその目標を追い求めていきたい」と書いていた。

この計画は今年2021年の私の目標として再度掲げたい。九鬼周造の全集を昨年購入した。能う限り今年中に九鬼哲学の全貌を体得したいと思っている。いまをときめくドイツの哲学者マルクス・ガブリエルは来日時に京都で九鬼周造の墓参りをしている。知っているのだ、マルクス・ガブリエルは。九鬼の真価を。

2020年元旦。<君は絶世の美女を見たか?>というタイトルで記事を書いた。唐十郎の作品の劇評を載せた。【霊告】は九鬼周造の文章から引用している。九鬼は偉大な詩人哲学者であった。九鬼の叡智と美意識に私は深く魅了されていることを告白する。ゆえにしたがって同じ霊告を掲げることによって私は今年のスタートを切ることに致します。
  2021年1月1日午前10時 ダンボール


】 九鬼周造の霊告 【 私は端唄や小唄を聞くと全人格を根柢から震撼するとでもいうような迫力を感じることが多い。自分に属して価値あるように思われていたあれだのこれだのを悉(ことごと)く失ってもいささかも惜しくないという気持になる。


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【霊告月記】第六十一回 東大女子による白眉のジェンダー論

2020年12月01日 10時00分00秒 | 霊告月記61~65

【霊告月記】第六十一回   東大女子による白眉のジェンダー論

      ぎんなん女子部              

【平成最後のyoutuber】東大女子が入学式の祝辞について語ってみた【初投稿だよ!】


1 気分は東大女子

今回のブログ記事の表題を、「気分は東大女子」にしようか「東大女子による白眉のジェンダー論」にしようか最後まで迷ったのだが、ここは格調高く後者を選んだ。でも「気分は東大女子」も捨てがたいんだなあ。その気持ちは、上の<東大女子が入学式の祝辞について語ってみた>の動画を視聴した人ならきっとわかってもらえるのではないでしょうか。

もし生まれ変わって、たまたまそれが女になっていたなら、ぼくも(じゃなくてあたしも)東大に入りたい。だって、だってだよ、こんなに可愛くて優しくてしかも聡明な友達を得られる東京大学って最高じゃないですか。この仲の良い四人の東大生を見ているとほんとそう思います。

で、そういう気持ちがよく伝わるのが「気分は東大女子」というタイトルと思った。しかしそれを使うと東大女子に媚びる様子が出てしまってちょっと気恥ずかしいので、ここはアカデミックに(→なんじゃ、それ?)「東大女子による白眉のジェンダー論」という表題を掲げたわけなのである!


2 東大女子は世界最高

まずこの動画を見ると東大女子のイメージが一新されるのは確実である。事実私は一新された。自身も東大卒であるジャーナリストの立花隆が「東大に入ってこれはすごいという教授はひとりもいなかった。どれもたいしたことはなかった。しかし東大の学生にはこれはすごいという人に何人にも出会った」と述べていたのを思い出した。

この四人の東大女子生徒は、昨年の東大入学式で祝辞を述べた上野千鶴子教授の言説が巻き起こした社会的反響を批評しているのだが、はっきり言って上野千鶴子よりその知性は優っている。東大教授より東大女子はその知性・人格・人間的魅力においてはるかに上なのである。どこがどう違うか。つまりそれは表現力の差なのである。


3 上野千鶴子の祝辞と東大女子の表現力の差とは?

まず、上野千鶴子の祝辞だが、これは全文が東大のサイトにアップされているので、参照可能である。
(☛「上野千鶴子 平成31年度東京大学学部入学式 祝辞」)

この祝辞は文章としてはとても素晴らしい。しかし、ユーチューブで上野千鶴子の実際の祝辞を見てみると、棒読みでちっとも心が伝わってこない。服装も男社会の権威をそのまま借りてきた感じで、華がない。なんというか、まるでお葬式の弔辞を読み上げているようないやーな感じだ。原文をコピペしてグーグル翻訳に貼り付けてAIに読み上げてもらった方がよほど感動的なのである。(→上野先生ごめんなさいね。東大女子を持ちあげる趣旨なので表現を誇張しました)。やっぱ東大教授ってだめだね。そこんとこは立花隆のいう通りだ。

しかし、そこんとこ、この東大女子四人組は違っている。まず面白いよ。声が若いし、みんな笑顔で語っている。聞いてて楽しいし、いちばん肝心なのは、その批評内容が的確なところだ。ある意味で女性差別の環境におかれた東大女子という立場を主体的に引き受けたうえで、的確にユーモアたっぷりに語っている。親しい友達同士の対話という表現形式を選んで、そのメディア特性の可能性をとことん追求なさってる。

この作品が、この四人のユニットで組んだユーチューバーとしてのデビュー第一作というからオドロキである。他の動画も数点見たがぜんぶ面白かった。おすすめですよ、レディ、アンド、ジェントルメンの皆さま方。以上
             ※参照:☛
 ぎんなん女子部


】霊告【   召しませ~ 罪の果実 Σ(・□・;) by 椎名林檎

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