先週の日曜日にはまだクリミア橋は爆破されておらず、ロシア軍によるウクライナ各地へのミサイル攻撃もなかった。
そこから1週間。とてもムードが変わった。
まずアメリカの中で、核戦争とか何を言ってるんだ、馬鹿なこと言ってるんじゃないみたいなエライおじさんが出てきたり、タッカー・カールソン以下、目立った人たちがこれまで以上にゼレンスキーを酷評するようになった。
アメリカの中間選挙が近いという事情もこの傾向を推進しているが、それだけじゃない。
ちょうど1週間前に、こんなことを書いていたわけですが、これらの問題がウクライナとその応援団にとってマイナスの方向に決着していった1週間だったという感じか。
OPEC+減産、核戦争を求めるゼレ、スターリンク、戦う欧州
思うに、これはやっぱりスターリンクあたりの問題がきっかけだったのではなかろうか。
いや、もともと、既にNATOウクライナが軍事的にあそこで勝ちきる、みたいな話は漫画でしかないわけだけど、軍産は次のアフガニスタンにできればいいかな、と思い、EUはその過程でウクライナを使い尽くしてロシアを弱体化させるのよ、みたいなことを思い、米のネオコンとか国務省あたりは、それ過程でプーチンを権力の座から引き下ろし、ロシアでレジームチェンジを、とかいう見果てぬ夢を追い求め、と、いろんなプレーヤーが勝手なことを思って、勝手な算段で始めているのが今般の一件。
結局この人たちは、think through(考え抜く)してないだろう、と多くの一般人が気づいたわけですが、実際、参加プレーヤーの各集団がそれぞれ手前勝手な願望を持って、場当たりに話を作ってるわけだから、できないとも言えましょう。
そもそも、ウクライナが戦争をしているというのが間違ってる。西側がロシアに戦争をしかけてこの度は武力の局面が訪れたというのが正しいでしょう(経済戦争の側面も同時に訪れているが)。
しかし、じゃあ誰がそのリーダーなの?というと誰だかよくわからない。また、はっきりと名乗りをあげると武力紛争の交戦者になっちゃうので、NATOなんか自分たちは当事者じゃないみたいな姿勢を見せながら参加してる。笑えないほど勝手な奴ら。
■ スターリンク
お話し戻ってスターリンク。
スターリンクがウクライナで使えなくなったという事態は、ウクライナ軍の関係者や兵士の話として出てきたのが最初。10月7日のこと。
Ukrainian forces report Starlink outages during push against Russia
https://www.ft.com/content/9a7b922b-2435-4ac7-acdb-0ec9a6dc8397
https://www.ft.com/content/9a7b922b-2435-4ac7-acdb-0ec9a6dc8397
その後、これは金の問題だということになっている。つまり、SpaceXがただで提供するには限界がある、国防省金出せ、たくさんの軍需産業が金もらってるのに云々ってことになっている。
ウクライナに提供のスターリンク、米国防総省の拠出なければサービス中止も スペースXが要請
だがしかし、マスク自身は金のことも言ってるけど、もっと言ってる。
Musk: "To Hell With It... We'll Just Keep Funding Ukraine Govt For Free"
これなんか興味深いtwitterじゃなかろうか。
Big difference between peace comms vs warfront comms.
— Elon Musk (@elonmusk) October 15, 2022
Starlink is only comms system still working at warfront – others all dead.
Russia is actively trying to kill Starlink. To safeguard, SpaceX has diverted massive resources towards defense.
Even so, Starlink may still die.
平時の通信と戦時の通信には大きな違いがある
スターリンクは(ウクライナの)前線で機能してる唯一のシステム、他はみんな死んだ
ロシアは積極的にスターリンクを殺そうとしてる。ここから守るためにSpace Xは多大なリソースを割いた。でもそれをやってもそれでもスターリンクは死ぬかもしれない。
つまり、スターリンクは現在ウクライナ軍の戦争マシーンの一部として組み込まれているため、ロシア軍に狙われております、ってことでしょ。
それは別に不思議じゃない。そして、それが起こったのはウクライナの西の端じゃなくて、ヘルソン、ザポリージエ、ドネツク、ルガンスクという、10月からは正式に(国際社会がなんといおうとも)ロシア領となったところとの前線だったようだ。
ということで、ロシアから、自国領内に攻撃をしかけるシステムを破壊しようかなと思ってるんだよ、という動きがあった、と考えて悪いことはないように思う。つか、普通。
そして、それがどのように行われたのかを巡っては大きく2つに大別されて、1つは 電子戦の範疇、もう1つはそれを超えたもの。
さらに、これを放置すると何が示唆されるのかというと、スターリンクの衛星コンストレーションに対する物理的な破壊でしょう。ただ、ここまでやると、それは米とロシアの直接対決だと言えないこともない。十分な開戦理由になり得る。だからそこまではやってない。だけど、まったく可能な話。
って感じじゃないのかしら。
■ フルスペクトラム・ドミナンス
で、スターリンクって要するに国防総省が全球支配してやろうと思って始めた、ネオコン思想の具現化みたいなプロジェクトじゃないの?
そもそも民間人が次々衛星あげてますとかいう話しをなんで信じるのよ、馬鹿なんじゃないの、と思っていたりする。
これが現在スターリンクがライセンスされている国のマップらしい。日本も入るそうなのでこのマップはちょっと古いんでしょう。
今後は、シグナルの合戦になるんだろうと思う。
■ 防空システムを送り込む米+欧州各国
ロシア軍がミサイルを撃ちこんで以来、ウクライナの防空システムがほぼない、機能してないことがもろわかりとなり、以降、欧州各国が次々と防空システムを送り込んでいる。
だがしかし、それぞれ1週間訓練すると使えるってな代物ではないため、オペレートする人は誰?ってのが結構問題。これは結局NATO各国の軍人がウクライナに入っていくってことになるんでしょう。そして死ぬ。
また、で、位置情報はどうなるの?という問題が解決されたようには見えない。どう使うんだろうね。
さらに、パトリオット持って行って、そうだと思ってたけどやっぱりそうだった(つまり、そんなに有効じゃない)、ってことになったらどうするの?という問題もある。
蛇足的にいえば、サウジアラビアは米の防空システムで重要施設を守り切れなかったという事件が2019年にあったというのも、今日に影響している。
今般の戦いは、物理的衝突、テック戦争、経済戦争の3つが複雑な水流の上で行われている。
■ オマケ
サウジの防空システムの話は、このブログで書いたと思って探したらあった。
「イランが悪い」騒動の中ロシア・トルコ・イランが会合
これは今に繋がる話。重要でしたね、ほんと。
■ オマケ2
アメリカの議員たちが、サウジの行いが悪いから懲罰しろとわめいている。その一環として、サウジに配備している防空システムを取り返してウクライナに送れ、とかいってる。
US senators propose punishment for major ally
2014年でも軍事力だけなら勝てたと思います。
しかし政治と経済でロシアがこけたら終わりだと思うから、制裁が来ることを見越してほぼ完全な自給自足体制を作り、金融の仕組みをある種の防弾型にして、金を貯めこみ、ゴールドを貯めこみ、大事なことはドルに振られないようにした。
さらに、政治的に残りの全員が敵にまわらないよう、多くの国と地域との関係を信用ベースで強化した、というところでしょうか。
私を含めて世界中の人がどうしてこんなにプーチンに注目するのかといえば、その過程を通じて、西側の非道さ、異常さが見えてきたからだと思われます。
ミサイル開発の点では、西側は全然どこも勝ててません。ドイツやノルウェーが防空システムを送ってますが、キンジャールやオニキスを止められないことに変わりはないです。
「セルゲイ・スロビキン『NATOに武装させられた狂信的な大群とのゲリラ戦で、これ以上ロシア兵を犠牲にする気はない。我々はウクライナを完全降伏に導くのに十分なパワーと技術の手段を有している』で、得たような気がしている。
ミンスク合意で時間稼ぎした西側、同時にそれはロシアにとっても西側NATO に勝る軍事力を開発する時間でもあったのだろうとも。ナチズムを拡大し非道を尽くす西側に対して、正義と国際法に則った外交を進めるには、非道側の有する軍事力を上回る事が不可欠だったと言う事なんでしょう。軍事力に勝るロシアが正義と国際法にのっとり4州をロシアに取り込んだ。これ軍事力の成果と私は勝手に感じています。
不謹慎ではありますが、さあ次のラウンド、西側連合とロシアのミサイル合戦、どちらに軍配が挙がるのか、恐怖を抱きながらメディア報道観戦という己の状況。
だからシリアで活躍した将軍がウクライナでもロシア軍指揮を取る!
ロシアのオイル戦略にサウジも便乗してオイルショックを起こした。