いわゆる戦後とは「ナチその2」の時代だったと書いてきて、去年はウクライナで戦端が開かれたことをきっかけに、西部にCIAなどがかくも長きにわたって関係してきたことがより多くの人の知るところとなったことがとても興味深かった。ナチ残党を野放しにしたことのツケはいろいろあるので今後も様々なことがわかるでしょう。
だがしかし、それはそれとして、しかし、この状況はナポレオン以降3度目の東方制覇欲求の爆発と考えるのがより適切なのだろうか、などとも考えている。
一時とはいえ欧州を制覇していった点はナポレオンもヒトラーと同様で、その後モスクワでこけるのも同じ。
ヨーロッパ内部に目を取られがちだけどエジプト・シリア戦線など地中海での争いも英仏の勢力争いを超えて、一種の秩序破壊として重要だったと思う。
そう考えると、今回は米仏が共同で事に当たっているわけで、力強いわ!というべきなのだろうか。
去年ドイツのメルケルが、ミンスク合意はウクライナの軍備を増強するための時間稼ぎでしたと言ったことで驚きが走ったが、その後数週間たってフランスのオランドが、そうそう、メルケルは正しいと言い立場をあわせてきた。
Holland on Minsk: “Mariupol was already in his sights. The Minsk agreements and the resulting ceasefire didn't allow the area controlled by separatists to expand. This is one of its merits.” … he also admits that Minsk 2 was to hold off Putin and give Ukraine time to prepare. pic.twitter.com/2dDwNuZmkL
— Lord Bebo (@MyLordBebo) December 30, 2022
一般的には、アメリカのネオコンと介入主義者が世界の一極支配を企んでいるから現在のような騒動が起きている、だからアメリカが主でEU各国は従属的だと考えられがちで、それはそれで局面として間違いでもないのだろうが、ビックピクチャーでみれば、イギリス、フランス、ドイツの反ロシア路線も見逃すべきではない。
そうでない時期が確かにあったし、フランス、ドイツは2008年に馬鹿ブッシュがグルジア、ウクライナをNATOにと言い出した後、そうはさせない方向に動いていたことも事実。しかし、全体として見た時、アメリカの意見にさからって騒動を起こしてまで自らの利益のためにロシアとの関係を中立にしておこう、みたいな意見が形成されたことはないと思う。そこらへんがNATOにいるとはいえトルコとは異なるところ。
一体全体、ヨーロッパ諸国というのは、何のために、誰のために国をやっているのだろうかと各国民がちょっと考えた方がいいんじゃないだろうかなどとも思う。少なくとも各国政府は国民のため以外の理由で動く。隠れて戦争までする。それは一体どんなエンティティー?
(いうまでもなく、日本はヨーロッパ諸国とまったく同じ)
■ シリア、トルコ関係修復か
他方、黒海の南では、シリアとトルコが首脳会談をするかもしれないというのが話題になっている。
トルコとシリア、首脳会談の可能性 新和平で=エルドアン氏
もちろん仲介してるのはロシア。
で、ふと見ると日経がそれなりに詳しい解説をしていたが、アルカイダ/ISが抜けてる。
済まして、米国→支援→クルド勢力とか書いてるけど、それだけではないことが大問題だった。青の矢印を入れてみた。
シリアの「反体制派」なるものの正体はシリア人の市民の反対者ばかりではなく、アルヌスラさんというれっきとしたアルカイダさんのシリア支部やいまだにいろいろ不明瞭なイスラム国(IS)なる組織が入っていてそこが惨いことこの上もなかった。
オバマ政権は600億円もかけて反体制派を作ろうとしたが、わずかな人数しか作れませんでしたという、笑えないけど笑うしかないような一幕もあった。
米軍が訓練したシリア反体制派、対IS戦闘参加はわずか4~5人
2015年09月17日 13:31
発信地:ワシントンD.C./米国
http://www.afpbb.com/articles/-/3060598
2015年09月17日 13:31
発信地:ワシントンD.C./米国
http://www.afpbb.com/articles/-/3060598
少なからぬアメリカ人がオバマ政権のやっていることに強烈に反発していった背景には、もってこのアルカイダ、イスラム国(IS) という敵だと報じられ続けているその謎の団体と自分たちにはどうやら関係があるのだな、というある種の「理解」が広がったことがとても大きい。
そこに、君たち、「テロリスト」って誰だかわかりますか、それは傭兵なのですよ。誰が金出してるのか、いくら出してるのか、俺らは見てるからね、と言った人がいたことがかなりのブーストとなった。
久しぶりにリンクしよう。2014年秋のバルダイ・クラブでのプーチンの発言。
Putin Tells Everyone Exactly Who Created ISIS
テロリストは傭兵なんだよ by プーチンから2.5年
その後、2015年にはロシア軍がシリアからの依頼を受けて正式に軍事介入し、翌年アレッポが陥落して、シリアの一般住民の居住区から過激派を引き離してイドリブに集めて、概ねシリアの戦闘は終わった。
要するに西側は負けたが、負けても意地汚くシリアの石油を盗み続けシリアの復興の妨害をしているのがアメリカ。
その後、テロリストの資金源だと言われていたサウジ、カタールがモスクワに通って関係修復。2017年にはサウジのサルマン国王が史上初めてモスクワを訪問。
サウジ国王、ロシア訪問
OPECとロシアをあわせた「OPEC+」が壊れず緊密なのはこの落着の果てにあるものだからとも言えるでしょう。
■ 西側メディアの詐欺行動
西側によるシリア襲撃事件というのは、単に西側がロシア、イランに負けたというだけでなく、過激派、テロリストetc.という名で呼ばれるそれらが実は傭兵集団で、その主たる資金源と差配は西側だったいうことがバレたという、とても大きな副産物があった事件だった。
2018年のものだけど、アメリカのロン・ポールの寄稿。
「なぜ我々はアルカイダと組んでいるのか?」
http://www.informationclearinghouse.info/50234.htm
誰も答えてくれないわけですが、当たり前だけどアメリカ社会の中でも疑惑は渦巻いたまま。
それを、今見たように、日経は知らん顔して、米国→クルド、とか言ってアルカイダやISという、当時大騒ぎだった勢力を抜いて話しを作ってくるわけですね。こうやって、西側メインストリームの公式のナラティブが作られている。
同様に、2014年2月、ソチでオリンピックをやっている最中に過激派を仕込んでキエフでクーデターを起こし、ウクライナの政権を乗っ取ったことの上に現在のいうところの「ウクライナ戦争」なるものがあるという事実関係も無視されている。
当時は、それはそれなりに事実に基づく報道もあったが、それもこれもみんななかったこととなり、公式ナラティブは、プーチンが狂ってるため、大国への野望がそうさせ、ある日突然侵略した、みたいなことになってる。
一般人は、どうもなんだかおかしなことをされてるんだな、ぐらいは思わないとなりませんね。
■ 中東地域
お話し戻ってシリアとトルコ。
トルコのエルドアン大統領は、水曜日にプーチン大統領と会う予定だそうで、そこでトルコの天然ガスのハブ化のプロジェクトと、シリア危機問題、ウクライナ問題などを話し合うことになっている模様。
逆に、シリアの方では数日前、アサド大統領がUAEの外務大臣と会っている。
President al-Assad meets UAE’s Sheikh Abdallah bin Zayed Al Nahyan
UAEといえば、去年10月にUAEのナヒヤーン大統領がサンクトペテルブルクを訪れプーチンと会談していた。何か非常にいわくありげに親しかった。
Meeting with President of the UAE Mohammed bin Zayed Al Nahyan
これはつまり、中東地域の関係者とアイデアを共有しながらシリアの復興を考え、結果的に、いつまでもテロリスト雇ってる関係者に再考を促す(または立場を無くさせる)という感じか。
テロリストの保護者は基本はトルコだけど、金出してコントロールしているのはUSAなので、もし、トルコがここから抜けていくらか健全な道(トルコなりに)を歩み始めると、USAはカバーを失って、ただのISの親方兼石油泥棒として存在する姿となる。どうするんだね?となる可能性があるんじゃないのかしら。もしそうなら、これってつまり、規模は小さいにしてもアフガニスタン撤退その2みたいになる?
ここらへんはネオコンと米中央軍という、あさましいこと限りなしの人々の縄張りだから、何を考えてるのかわかりたくもないですが、まんざらないわけでもないかも。
また、UAEにはロシアの企業が4000社も行っているらしい。そして、昨年末にはEAEU(ユーラシア経済連盟)がUAEとの自由貿易圏の交渉開始を決定している。
その前にイランとEAEUの交渉も続いていて、ひょっとしたら今年前半に成立するかもよ、とかいう話しもある。ロシアとイランは着々といろんな分野で協力関係に入ってる。
First round of talks with UAE on free trade zone may be held in March 2023
各産業分野での提携もあるけど、ロシアの天然ガスをイランの北部に供給して、南部でロシアがイランのをもらってパキスタン、アフガニスタンに売るという構想もある模様。
他方で、その近隣では、サウジアラビアと中国が包括的戦略的関係になって、脱ドルだよぉんみたいな大きな問題が控えている。
全体として、USAの影響力の低下が見込まれる事態になっていると思う。
ということは、イスラエルが不安になるわけだが、どう出てくるんでしょうか。ネタニヤフが再登板するという事態が何をもたらすのか誰も良く分からない。
わからないんだけど、EU/USAは破綻国家ウクライナを抱えたことで強くも豊かにもなっていないことはわかる。まぁ大西洋主義者とかネオコン集団は、我々の一体感が高まったみたいに思っているのかもしれないが。
今更ですが、トルコを使いやすく改造しちまおうという浅はかなアイデアが、巡り巡ってエライことになったって感じは確かにとってもありますね。
ヨーロッパ向けのロシア天然ガスのハブになるんですよ!
普通に、ロシアは混乱して西側の要求に屈するだろうと思ってたんじゃないでしょうか。
表向き友好を演出して裏で紐つけて言うことをきかせられるようになるだろう、みたいな。
ところが・・・。
https://news.yahoo.co.jp/articles/9f3ab02b92cee433a1aefb93ad043277e7516bbd?page=1
彼と橋爪某との対談が本になり(おどろきのウクライナ)ざっと目を通しました。あまり日本の報道の中身を見ない小生は「おどろき」ました。プーチンは妄想の中に生きていて歴史を知らず、大した理由もなく西側に対する「ルサンチマン」により戦争を始めた。当然、大義も知らない兵士の士気は低く、対するウクライナ兵は「祖国防衛」に燃え「圧倒的に」勝利していると語り、彼らの「高尚な」ロシア観を披露しています。本になった対談は主に5月に行われたものなので、そういう風に見えたのかとも思いましたが、最新のインタビューでも大澤某は同じことを繰り返しています。一貫してドンバスの「ド」の字も出てきません。西側の主流マスコミだけを盲信しているとしか思えません。これを三流学者の戯言と唾棄することもできますが、でも、これが現在この国を覆う空気なのでしょう。「学者」の態度というのは一切の偏見を捨てて、事実、現実の姿から本当のことに迫るべきものだと思いますが、西洋文明を絶対視して信仰して、その前提条件から離れられず、「世論」リーダーと振る舞う。大変危険な連中だと思います。
大澤、橋爪の対談本(おどろきのウクライナ)ですが、何かの客観的科学的な考察だと思うから驚くだけで、そもそも「見方」が根本的に勘違いですね。
「ふしぎなキリスト教」不思議な橋爪大三郎
2013年06月26日 | 宗教 「逝きし世の面影」ブログhttps://blog.goo.ne.jp/syokunin-2008/e/6817a72eb827ab48f5a19ac6ea9f349f
凄惨を極めたスペイン内戦や第二次世界大戦の独ソの絶滅戦争は宗教戦争の隠れた側面を持っているが、今回のウクライナでもネオナチ(バンデラ主義)のマロン派(東方典礼カトリック教会)抜きには真実が見えてこない