ウクライナでは、ついにアルティモフスク(バフムト)が陥落した。
急にそうなったのではなくてほぼ3方向は閉じられていたところを徐々に閉められて行って、もはやこれまでとなったもの。それでも中には何千人かのウクライナ兵がまだいる模様。普通の軍事紛争では、この人たちは投降していいわけだが、今般の紛争は、狂ったテロリストとその買主が無理な注文を出し続けているものなので、この人たちの運命はよくわからない。
■ 大きな戦争
この先は、アルティモフスク(バフムト)を陥落させたら、今度はようやくスラビアンスク、クラマトルスクを壊しにかかることは目に見えている。
まず4州の完全開放が目標だから、当然そうなる。
その間、ザポロージャ、ヘルソンを次に向けて整備していく。
メディアのフォーカスは自然必然、バフムト周辺にくぎ付けになっているが、その間もずーっと、ドネツクの市民はバンデラ・ウクライナによる砲撃に晒されている。
これが昨日の出来事マップ。攻撃側、防御側を含めてこの〇の数だけ砲弾が飛び交うエリアがあると考えればいいと思う。

で、このだいたい1000キロぐらいが前線。
ざっと、下北半島の端から駿河湾ぐらいの距離でしょうか。
ロシア領土となった4州+クリミアの5州の安全を保ち、バンデラ・ウクライナの間放置されてきた民生を回復させるのがロシアの目標なので、当分終わらないでしょう。
安全を保つためには、NATOががんがん供給してくる砲弾の届く距離にあるエリアを脱軍事化する作業も含まれる。NATOは、最初短い距離のものしか供給してこなかったが、その後中距離を供給しているので、その分、むしろ、今後のロシアによる脱軍事化エリアが広がったとも申せましょう。ということは、北の方でハリコフ、南の方でオデッサが脱軍事化エリアとして想定されるということ。
NATO諸国は戦争態勢でいいと毎日誰かしら言い続けているんだから、これから民間企業の操業を差し止めて戦車作ったり、砲弾作ったりする戦時体制になるのかもしれませんね。
他方で、ロシアの方は、大砲かバターかの体制にする必要はない、大砲もバターも両方できる、というのがロシアのリーダー層の見解なので、そのように動くのでしょう。
経済をGDPで語るのは誤りのもとだと思うのであまり使いたくないですが、ともあれ、継続的な指標ではあるのでその意味で使うと、ロシア経済は去年2%超落として、今年はプラスに転じるだろうと予想されている。多分、これはIMFのデータだろうと思う。

ロシア経済が破滅だ、破壊だ、墜落だと騒ぐ向きでは、では欧州諸国も同じだと言わねばならないのではなかろうか。
ついにでいえば、このような大戦争を戦い、史上最も制裁を課された、その意味で自由な国際貿易に重大な足かせを嵌められたロシアの国債発行残高は、それでもGDP比で17%。いつでも貯金で相殺できる額しか借金しないという、超保守的な財政運営が顕著。中央銀行は頭のいいおばちゃんに率いられて、かなり健全。
先進国集団は、狂ったようにまき散らした国債の価格の低下(金利の上昇)の影響がどう出るのか、誰かちゃんとわかってるものなの?と不安しかないような有様。
OUCH! The value of global bonds has plunged by another $550bn this week. This brings the total bond losses over the past 5 weeks to $2.4tn. All gains since the beginning of the year have been wiped out now. pic.twitter.com/2tJXnbM53C
— Holger Zschaepitz (@Schuldensuehner) March 4, 2023
■ G20
そんな中、インドでG20の外相会談があった。そこで共同声明が取りまとめられないというのが話題だが、それ以前に、ウクライナについて話し合う気なんかさらさらない西側の姿がよく目立ったという感じじゃなかろうか。
就中、米のブリンケン国務長官とイエレン財務長官の態度(特に後者)は、話し合いが可能であるようにはまったく思われない。なんとかしてロシアを孤児にしようと策を弄することに熱中してる。
それによってヨーロッパ経済が壊れようが、アメリカ人が不満を持とうが、いやそれどころか、ペンタゴンが不味いなと思っていようが、それすらどうでもいいという感じ。
シリアの時に、米統合参謀本部議長がヒラリーの声に応じたらロシアと巨大な戦争になることになりますよ、とさりげなく交わしたことがあったが、思えばあれが最後の冷静な時代だったかもしれない。
今のミレーの統合参謀本部は、政権の方針の通りのことを言う政権になっちゃってる(時々冷静なことを言っていても、だんだん言葉が変わってしまう)。これは、良く言えば「文民統制」だが、特殊集団の機能の独立性が担保されないと大惨事になるという好例かもしれない。
あれだ、安倍が日銀を子会社だと言ったのと同じ状況だ。
ペンタゴンの中では、しかし、このまま政治家どもに馬鹿なことを言わせ続けて、欧州国民がNATOは強いんだから勝てるのよと思い込んだら大変だと思う人がいたのか、1月にスウェーデンで行われた講演でNATO米軍の3星の将軍が、かいつまんでいえば、私たちは今ウクライナで行われているようなスケールの戦争の用意はできていない、と述べている。驚くほど率直な表明。
■ いろんな泡とボトムライン
G20に関する日本の報道は、米とはまた違う妙な感じがある。いろいろ策を弄した見出しを作ってもなぁと思ったのはこれか。
米欧・中露・議長国インド、三つどもえでG20外相会合せめぎ合い…無念の声明断念
3つって何?でしょう。
The West vs その他の対立で、インドは議長国なのでthe Westからの脅迫に耐えながら、主権国として可能な限り中立的に振舞いましたという話しが基本ではなかろうか。つまり、対立は3つじゃない。2つだ。

基本的に、ロシアを非難し続けているのは、ウクライナという場でナチ残党のバンデラを焚きつけて戦争に持って行った西側諸国のみ。
インドは、わりとヒトラー好きな人が多い国だとも言われていたりしたが、ナチの行動一般まで好きだという話しは聞いたことがない。アラブ地域やイランと同様、反英をキーにドイツ勢に布教された、刺激された口で政治的にいろんなものが出回る、ということであろうと思われる。
そして、現実には、再々書いている通り、インドから西は英仏などの旧植民地主義者グループが戦後も復活をもくろむ動きを見せる中、ソ連が支えることによって英米etc.の策謀を撃退していたりする。そこから、インドはロシアと長い友情関係を築いている。
そこに楔をうちこんで、インドをロシアから引き離そうというのが、いうところの、インド、オーストラリア、日本、アメリカによる「クワッド」ですね。
表向きは対中同盟とか言ってるけど、目的が何であれロシアと離れると安定を失うことは目に見えているので、インドはのらりくらりしている。
この様子は、思えば30年代の蒋介石政権と日本の関係みたいだなと思って見ても面白いかもしれない。日本は、反共産主義で蒋介石を取り込もうとした。しかし、蒋介石は防共協定に乗らなかった。私は、蒋介石の判断は、表向きが何であっても、あの時点でロシアと手を切ったら、目の前にいる日本の拡張に抗することができないとの考えからだろうと思ってる。その先すぐに国共合作になったのも同じ理由。山東利権を皮切りに拡張してくる日本を追い出すことこそ大事だという考えが中国人のボトムラインだったと思う。
■ 語られないからといって問題がないわけではない
お話し戻ってウクライナ。世界中の主流メディアは、10か月ぐらい前は、マリウポリ沿岸部の製鉄所の巨大なコンビナート地帯を巡ってアゾフ大隊を味方として頑張っていたのだが、思えば、マリウポリがもはやどうしようもなくロシアになってしまった今、すっかり彼らのことを語らなくなった。
アゾフのおにいちゃんたちが明らかに投降してるのに、それさえ見せなかった世界の主流メディアというびっくりの事態だった。

アゾフ大隊とお友達だった日本の外務省は現在どのような見通しを持っているのか、ジャーナリズムがあるのなら聞いてみたいものだ。

また、アジア反共連盟と反ボリシェビキを訴えるウクライナのバンデラさんたちは、長い長いお友だち。反共連盟チームが政権中央にどっかりと居すわっていた、日本や韓国、台湾は今般の事態にあたって、現在のバンデラ・ナチとどのように関係しているのか釈明する責任があるのではないのか。


もとより、2014年に米国政府がナチのコラボレーター残党のバンデラ主義者を擁して暴力クーデターを起こすという、考えられないようなことが本当にあったということは、主流メディアや御用学者が語らないからといって事実がなくなるわけではない。
一時の口止めが永遠に効果を持つわけではない。
US Ukraine curator Victoria Nuland with her favourite Ukrainians pic.twitter.com/so7culMgLQ
— John Moran (@RueDaungier) March 3, 2023
で、その結果として、ウクライナの地で死んだウクライナ側の兵士が、ナチ時代のガリチアSSの旗の下に眠るという現実が付いて来る。

リビウ防衛旅団のガリチアSSの旗の下に兵士を眠らせるウクライナ
— DEEPLY JAPAN (@DTJTakumi) March 4, 2023
よくぞここまで邪悪なことをしたものだと思う。亡くなった人はそれを信じたのだからと考える人もいるだろうが、こんなバカげたことを信じさせた人がいたからこうなった https://t.co/k5zz1ugkLo
この旗です。

過去10年ちょっと、あからさまに見えていたこういう行事に疑問を挟んで、止めさせることができたのなら、今の紛争は別の形を取ったことでしょう。

■ 正統DS問題
繰り返しになるけど、今般の紛争は、ナチ残党が再使用されるという、初めて聞いた人は信じられないようなことが現実だという点がまず特徴的で、それを契機に、一体どうしてそんなことがあり得るのだろうと考えだすと、CIAがナチ・残党をずっと資金援助していた話しや、そもそも戦後すぐにゲーレン機関を活かしていたことが簡単に知られ、それらこれらを考え出すと戦後の仕組みって一体何よ、という点にフォーカスがあたるという、大変興味深い展開が随伴した。
昨日は、ロシア安全保障会議のパトルシェフ議長がキューバを訪れていて、そこで、
アメリカという国家は、世界を支配しようとする巨大企業群のシェル(殻、外観)のようなもので、多国籍企業群にとってはアメリカの大統領でさえ、トランプのように、黙らせられるエキストラのようなもの。
多くのアメリカ人が、共和党と民主党は民主主義とは何の関係もない1つの劇の2人の俳優にすぎないといったことを言うのは偶然ではない。
大企業と合併したアメリカ当局は、軍産複合体を含む多国籍企業群の利益に奉仕している。ホワイトハウスの強引な外交政策、NATO の無制限の攻撃性、軍事ブロック AUKUSの出現なども、企業の影響力の結果です。
と言ったことを言ったらしい。ロシアから出たのじゃなくてスペイン語の人が書いているのが今のところオリジナルっぽい。もっと長いのを見つけたら紹介したい。
で、今日興味深いのは、こんなことを言っても別にたいしてびっくりしない人々が大勢いること。
私がこのtweetの連続の中で気に入ったのは、パトルシェフの見解はC.ライト・ミルズみたい、というもの。

前に、Aaron Goodの「American Exception」の話を紹介した時に書いたことがあったけど、ミルズは1950年代のアメリカの学者さんで、
パワーエリートという、アメリカ社会の政策決定に対し、独占的な影響力を行使できるとされる権力層のことを問題にし、これらのエリートが各分野のヒエラルキーのトップにいて(表にいるとも限らない)、これらのエリート層が権力構造維持を目的とする利害の一致から協力して人々をコントロールしている、と分析した人。
現代の私がもう少し付言するなら、このパワーエリートを司令塔として、それ以外の大企業、大資本家群が特殊利害関係人としての表には出ない構造の中で関与している、というのが今でいう「ディープステート」のあり様と考えるといいのかしら、など思ってみる。
ここらへんの「正統DS問題」は、去年後半バラバラ書いたけどなんとかしてまとめておきたい(せめて見やすくしておきたい)と思案中。
米中間選挙、ヘルソン撤退SMO続く、影支配からの脱出
世界を苦しめる妄想誘発史観&正統DS問題
いずれにせよ、現在の西側の人間は、実のところ自分たちがどんなスキームで統治されているのか、ほんとのところよくわからないという事態なんだと気付くべきでしょうね。
最近のアメリカ人がますます言うようになった、敵は中国やロシアじゃない、内側にいる、という考えを辿ればそこに行きつく。50年代にそういう人が出て、70年代ごろにもたくさんそんなことを考えた人たちがいたが、それらがお蔵入りさせられているうちに、気がついたらナチ v.2 が顕在化していました、って感じか。
■ 参考情報
ウクライナのナチは戦犯逃れと西側支援の産物 by ザハロワ
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/d5544601adda5a5ecd30fd291970950f
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/d5544601adda5a5ecd30fd291970950f
戦犯逃れと西側支援の産物:極東編
アメリカが「許した」731部隊とナチ残党
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/e91641eaf969e82027fbb95bced33cba
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/e91641eaf969e82027fbb95bced33cba
ロシア人ジノサイドの祭りカルトを広めたNATO自体がナチスカルトの継承グループであり現代の世界征服十字軍運動である。
90%は素晴らしいと思っても、何か間違った方向へ持っていかれるという論を展開される方々がいます。
金融で西側は衰退するでしょう。自業自得ですね。日本も落ちるとこまで落ちるしかないのかもしれません。資源国の国民が貧困と飢えに喘いでいるなんてオカシイ。
義父は中国空軍と戦った海軍のパイロットで、中国での功績で金鵄勲章をもらって、それを誇りとしていたようです。頑健で真面目で、あまり教養はなく、世渡りが下手、軍人という職業がピッタリだったのかも。上海空襲の映像を見ると、義父が関わったのかと悲しくなります。
私は中国の広場舞のファンで、中国人たちが色々な所でダンスをしている動画を見るのを楽しみにしています。娘は「日本人には中国人は100%理解出来ない。思考がまるで違う」と言いますが、ダンスを見ていると、結構心情は同じような気がします。特に女性たちは元気ですね。
中国琵琶を教えていただいていた先生から突然連絡があり、20年ぶりに、お会いしたそうです。赤ちゃんだった長男は日本でアメリカの大企業に就職、次男さんはアメリカに留学中。旦那さんは精華大学の何かの機関で仕事をしておられるそうです。
娘を通じて知り合った中国人は皆とても優秀な方ばかりで人格も素晴らしく、娘も良くしていただいたので、私は悪い印象はないです。
日本の仮想敵国は中国みたいですね。
インドを取り込め、中露を切り離せという意見が多いですね。もう無理!
財務長官がキエフ入りする理由なんか、さらさら無い。
旧ロシア周りのナチス系ユダヤ人、イエレン。
今はDSのような捉え方が自然なのかも知れませんが、彼の説くパワーエリートはDS、反DSも引っくるめた利害関係集団・グループを指していたように記憶していました。
ナチスを介するグループ間の対立が、ベールのこちら側に顕在化したような感じでしょうか、現在は。