なんの気なしに書いていたら、プーチンはアメリカ右派の希望の星なのかと、アメリカは左翼なんです が並んでしまったので、アメリカの右左についてちょっと考えておく。
■アメリカはまず左
基本的には、現状をその土地の歴史的由来に関係なく変革することにまったく躊躇がないという意味で、著しく左翼的、革命的傾向を持つ人々であると思う。
こうなる最大の理由は、なんといってもアメリカが近代になってできたまさしく革命国家だということ。そして、ここにもう一つ大きなミソがあって、それは、自分のところで起こした革命ではない革命によって国を作ったということ。つまり、根っからの根無し草なのだ。だから、根本的に何かを倒すみたいなことに遠慮がないし、その後の混乱、社会が複層的になっていくこと、すなわち歴史への見当がつかない。
それに対して、例えばある意味世界一迷惑な革命国家であったソ連を作ったロシアは、あの地で後年ロシア人と呼ばれる人々が離散集合を繰り返し、帝国があって革命があって、それも終わった。すると、そもそもその土地にあった歴史的所産と共に、なんというか、重層的、折衷的な社会がそこにある。意図しなくてもそうなる。
で、プーチンとその周辺の仕業なんだろうと思うけど、ここで、その際のアイデンティティの混乱を回避するために、あえてロシア正教を復活させ、それを通して幾重にも重なるロシアというもの、共通の精神的基盤を復活させたのだろうと私は思っている。このへんは結構明治維新もそんな感じだと思う。
■アメリカの左と右
ではアメリカ人は何に対して右だの左だのと言っているのか。
国家のアイデンティティに対して正の位置に入っているのが「左」、そこを止めようとするのが「右」ではないかと思う。
つまり、アメリカの左派は自分の社会も変革好きだが、地球上のどの地域も国も見境なく永続的に変えたがる。永久革命派はロシアにいたのではなかった(笑)。
これに対して、革命は実際には大昔に起こったものなんだから、そこから200年もすればそれはそれなりにnationめいたものも出来てくる、それを守ったり育てたり、たまにやたらに自慢しまくったりしましょうよというのが右だと思う。アメリカという価値を大事にしよう、と。
しかし、アメリカはその機会をあまり長く持てなかった。それは断続的に移民を入れ続けてきたから。それも、文化背景の異なる移民たちを。そのたびにアメリカのセルフイメージが変わっていき、最近はかなり混乱している、と。一時は、同化政策的だったのでなんとかなった部分もあったが、完全に異なる文化背景の移民の数が多くなり、かつ、同化政策的でなくなってからはもうね、たいへん。
だもんで、左派が勝手に作る変化に振られて右派もいろいろ変わっていくしかない。右派の方が完全に受け身なのがアメリカだと思う。
20世紀に入ってからの100年はこんな感じだと思う。
■追記
上記のことから日本の保守派がアメリカの民主党を嫌うのは正しい。なんせ本家革命派みたいな国だから、守るべき国体のある各国にとってこれは普通はまず敵(時々でエッセンスとして取り入れるぐらいならいいと思うこともあるだろうとは思う)。
しかし、アメリカの共和党を自分たちと同じ保守と思うのは大きな誤りだ。単純に言って、冷戦時代に反共という目標で話が合っていたに過ぎない。
ようするに、左派は本家の声の届く範囲に応じて「ユニバーサル」だが、右派はその国々で異なる、なぜなら各国それぞれに風土と歴史があるから、ということだと思う。