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ノードストリーム2と制裁 & ロシアから石油を買うアメリカ

2021-03-28 03:36:35 | WW1&2
何が何でもノードストリーム2建設を止めてやるとアメリカ国務長官が意気込んでいる。

トランプを否定したいるようなバイデン政権だが、実のところ外交方針はトランプ時代と特に変わったところはない。

U.S.'s Blinken warned Germany's Maas about Nord Stream 2 sanctions


パイプラインの建設会社から工事関連の保険会社まで、ありとあらゆるところに制裁をかけると脅し、既に、プロジェクトから降りた企業もいるのは前にも書いた通り。

そこからドイツ国内も多少動揺したり、政治的案件ともなって、現在は緑の党が、米国務省の下部機関のように反ロシアのレトリックで、ノードストリームをぶっ潰せ派のリーダーとなっているみたいだ。

以前の緑の党は今よりは若干環境オタクが本気だったので、原発や石炭を焚くより天然ガスの方がまし、というスタンスも見られたが、最近はもう、なりふり構わなくなってる模様。


この問題は、ロシアとドイツ以西のヨーロッパという大消費地の間にソ連(と西ドイツとオーストリア)が敷いたパイプラインがあって、その通過料収入がウクライナ、ポーランドなどに落ちることから、ソ連崩壊後これがオリガルヒの利権になってた、というのが1つの発端。

そこでノードストリームというウクライナ通過を回避するプランが来て、もうすでに敷かれて、2011年から使われている。次にウクライナのクーデターがあって、さらにノードストリーム2が施設間近となっている。

だから、これが開通すれば、ウクライナは通過料収入がなくなり、かつ、ついこの間まで当然のように使ってたロシアから送られるエネルギーをどうするの、という問題もある。つまり、ウクライナのエネルギー政策を考えないとならなくなる。現在のキエフ政権が言うには、2023年にはEUと統合していくんだ、ということらしい。どうできるのか知らないけど。

そこに、今度は、アメリカが自分んちの天然ガスをドイツに買わせたいという欲望を持って出てきた。

ロシアからそんなに買うなら、俺のを買え、ということなんだろうけど、ロシア産はパイプライン、アメリカ産はLNGによるものなんだから、後者を永続的に買うということはざっくり言って倍の費用を払い続けることになる。ドイツも嫌だし、そこからパイプラインが繋がってる各国も嫌。だもんで、ヨーロッパ各国(ポーランド、バルト3などを除く)は、概ね、アメリカからのノードストリームは中止だという圧力に屈したくないと思ってる。が、EU上層部+NATOが反ロシアを旗頭にしているため、議論は常にワヤになる。

現状、ガスプロムは、パイプライン設置は今年中に明確に終わると明言しはじめている。

Despite several packages of US sanctions, Nord Stream 2 pipeline will ‘unequivocally’ be finished in 2021, says Gazprom chairman
26 Mar, 2021 14:27 / Updated 21 hours ago

多分、問題はウクライナに誰が金を出すのか、みたいな、ある意味テクニカルで、しかしながら将来を考えると引き受け手にとってヤバい話になってるんじゃないかと想像する。


■ ロシアの石油を買うアメリカ

アメリカはこの問題を、本当はいろいろあるわけだけどそこは伏せて、ロシアは敵なのに、なんでそんなところからエネルギーを買うのだ、これはエネルギー安全保障の問題なのだ、などという。

ところが、その敵であるはずのロシアから、アメリカは石油を買ってる。

それも、たまにスポットでちょびっと、というレベルを超えて、2020年には、なんとアメリカの原油輸入量の7%にもなっていた。

US imports record volumes of Russian oil despite growing political tensions

2020年の統計では、ロシアはアメリカにとって第3位の石油供給国。1位はカナダでこれが圧倒的、2位はメキシコ。3位がロシア、次がサウジアラビアだそうだ。

In 2020, Russia became the third-largest oil supplier to the US, outpacing Saudi Arabia, world’s biggest exporter, according to Bloomberg calculations based on customs and EIA data. Russia’s share of American oil exports currently stands at a record-high seven percent.

何を買っているのかというと、まずは重油というのは前にも書いた気がする。

アメリカはベネズエラに政治的に攻撃をしかけて制裁をかけたので、ベネズエラ産の重油が入ってこない。しかし、石油は軽くてスィートなものばっかりがあればいいというものではないので他の種類も必要になる。イランもこの手のものを供給できるが、イランにも厳しく制裁してる。

そこでロシアとなった模様。いや、ロシアだって制裁対象になってるはずだけど、そこは都合よく、メジャーなものには制裁をかけて、どうだ、ほれみろ!と書いたりするが、民間の目立たないところは放置されててる模様。あははは。

しかし7%というのは尋常じゃない気がすると思ってちょっと探してみた。ロシアのオンライン紙によれば、重油以外に、あんまり精製のよくない燃料用の石油を買ってるらしい。それを安く買って、米国内で他のと混ぜて精製している模様。

多分、これは結構いい商売なのかも。つまり、主にベネズエラ産向けに作ってた製油所が米国内にいくつもある。そこを休業させるぐらいなら、ロシアから似たようなレンジにあるものを安い時に買って、米国内でブレンドして精製して売れば普通の需要の中ではける。

ルーブルとドルはドル持ちにとって割安感が大きいと思われる。また、完全変動相場制で政治的理由からルーブル下振れの値動きが大きいことがある通貨ペアなので、この場合ルーブル側は建値がドルになっていれば、ルーブル安でボーナスの儲けが出る。

なるほど、とか思うわけだけど、こんなことをやってる人たちに、エネルギー安全保障が~とか言われる筋合いはないと、言うまでもなくドイツ当局は言ってるし、ドイツ国内でもそりゃ言ってる人は多数いるでしょう。ここらへんは簡単に伝わる情報だもの。


さらに、アメリカの輸入先を見えば、近いところがまず第一になってると言えるのも指摘したい。ロシアも、アメリカの北部だとアクセスがいい。

サウジアラビア? そんなお前、地球の反対側から買うようなものじゃないだろ、石油なんて、とマジで言ってるアメ人いると思う(笑)。

石油がそうなら、なにせガスなので蒸発を見込まないとならない天然ガスはさらにそう。

アメリカ人の中には、日本人って絶対アホだよなと言ったことのある人は多数いると思う。

(日本の天然ガスの輸入先)



■ オマケ

中国、イラン産原油の輸入拡大 米政権に試練

という記事が1週間ぐらい前にあったけど、この伝でいくなら、

アメリカ、ロシア産原油の輸入拡大 米政権に試練

ではなかろうか。試練なのは米政権なのか、ドイツ政権なのかわからないけど。



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2 コメント

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Unknown ()
2021-03-29 05:56:12
石油の精製と言えば脱石油のせいでアスファルトや炭酸ガスが調達困難になりつつある様ですね。
バカバカしい。
返信する
アメリカに忖度してLNG買う日本! (ローレライ)
2021-03-28 16:49:27
アメリカに忖度して高いLNG買う日本は無視してロシア石油を買うアメリカは日本には忖度しない!
返信する

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