先週、スエズ運河で巨大コンテナ船が通路をブロックする恰好で座礁した事故を受けて、運河はまだ詰まったまま。
砂地にバルバスバウがすっぽり突っ込んでしまいましたという、想定はできるだろうけどホントに起きるとはなぁといった趣の事象だったっぽい。
この右下の不格好な物体部分が完全露出して、動けるエリアを確保し、さらに、運河の水位の上昇を待って、みんなして引っ張って再度浮かせるということになるんでしょう。一回で成功するといいね。
スゴイ詰まり方をしたもんだ。
そんな中なので、北極海航路の必要性にがぜんフォーカスがあたって、西側メディアは、ロシアが売り込んでいる、ロシアが推してる、みたいな書き方をしてるけど、別にロシアが推奨してるとかいう話じゃないでしょう。
また、面白く思うのは、北極海航路は基本は夏場を想定しているので完全な代替とはちょっと言えないと言っていいと思うが、
(ただし、世界で唯一原子力砕氷船を持つロシアのロスアトムが付き添ってくれるなら冬場も通れる。)
航路ではないにせよ、それよりもっと近場の、イラン・アゼルバイジャン・ロシアを通して欧州に抜ける陸上の南北回廊の重要性にも改めてフォーカスをとはあまり言われないこと。やっぱり、イランを支配できなくなってるのはthe Westにとってはホントに痛いんだろうなぁと面白く思う。わはははは、と思う。
何度も書いてますが、簡単な模式図としてはこんな感じ。陸上輸送ではあるけど、欧州とインドの間の距離は劇的に近くなることは間違いない。ただ、それに伴い欧州北西部の港湾の価値が下がる。
もう少し詳しい図は、これ。
で、いずれにしても、これらの代替ルートは普通にぼちぼちと進んでいくでしょう。だって利便性があるんだから。
そして、このトレンドが許せないからこそ、イギリス、フランスなどのヨーロッパ半島の端っこの人たちが、ロシアとイランを殊更に敵視している、と考えてみることもできる。
交易というのは世界中で行われているけど、ボリュームとか歴史とかを考えると、世界の中心は長いこと広義のミドル・イースト(中東)地域でしょう。東アジアという独立地域以外のところにとっては、ここが本当の「ミドル(真ん中)」でしょう。
しばらく、そう見えないこともあったが、スキタイ人(ロシア人)とペルシア人が落ち着いてきたら、まぁなるようになるといったところじゃなかろうか。
最近書いてなかったけど、持論として私は、近年最も大きな地政学イベントはこれだと思ってる。ロシアとイランがカスピ海を挟んで敵対しないどころか、我々の将来は~などと語るフェーズに入ったことの意義はとても大きい。
グレートゲーム v.2.2: カスピ海は沿岸5カ国の戦略的財産である
グレートゲーム v.2.2:NATO、イランとロシアにカスピ海から締め出される
といういうことで、方向性としては私は面白い時代に立ち会えて幸せと思ってる。
■ オマケ
ロシアの駐イギリス大使館のtweet。
UKの戦略家は、我々は2隻の空母が必要だ、中国とロシアが国際運輸をブロックするかもしれないからだ、などと言っていたわけだけど、現実にはスエズで詰まるわけね、と。
UK strategists: we need two aircraft carriers (and 💷💷💷) as China and Russia may block international shipping.
— Russian Embassy, UK (@RussianEmbassy) March 26, 2021
Real life: pic.twitter.com/R49hUuuwwF
そもそも、イギリス海軍がスエズの向こうとこっちで1隻ずつ空母持ったところで、それが何だよという話でもある。
紅海側スエズ運河入り口から15km位の所、zoom:14位にしてポチッとすれば’EVER GIVEN'の船名がわかる。
それにしても運河の入り口、紅海側・地中海側ともすごい数の船舶が停泊している。
待っていてもすぐには通れないから喜望峰に廻れと言ってやりたいね。
私はこれが作戦とまでは思ってません。
単に、誰でもこういうことはあり得ると何十回言ってても代替ルートを妨害してきたthe Westの一部にとって、いつか来る事態が来ただけ、みたいに思ってます。
資源を持たない国の最大のメリットは、質の良い資源を安く手に入れれる事、何かがあっても他の所から買える事に尽きると思うのですが。
自分の国が資源を持っていると、もっと質の良い資源があっても自国の資源を優先せざるを得なかったり、何かあった時に自国の油田を諦める訳にもいかないですからね(持ち家と借家の関係に似ている)
その代わり日本はどこの国とも良い顔をして付き合わないと駄目でしょうに。