昨日は、2014年5月2日にオデッサで起きた、極悪非道な犯罪から8年目にあたる日だった。
2014年2月22日に、ヤヌコビッチ大統領を追放して米欧がピックアップした政権を付けるという暴力クーデターが発生。その暴力主体にはナチ残党のイデオロギーが色濃い諸派が加わっていることから、ロシア語排除、ロシア敵視が打ち出され、それを受けて、東部、南部のロシア系住民の多い地域がクーデター政権に反対することとなった。組織化されているかにかかわらず、そりゃもう、どっきりになるのは当然だった。
そんな中で、5月2日、オデッサで問題の右派グループによる事件が起きた。
On May 2, 2014, dozens of people were murdered or burned alive in the Odessa Trades Unions Building at the hands of the so-called Ukrainian nationalists months after the regime change. The perpetrators walk free.
— Nina 🐙 Byzantina (@NinaByzantina) May 2, 2022
pic.twitter.com/s1zZcRxHJ8
遠景からの様子を含めた動画。
люди на крыше Дом профсоюзов Одесса
まぁその、生きたまま人を焼いて喜ぶという心性を持った人々を、一体どうして放置したんでしょうかと言う他ない。
誰だってそう思うわけで、まして実行主体がナチだと知っている住民は、より一層クーデター政権への反発を強めた。現在のドネツク、ルガンスクがウクライナに残るにしても強い自治権をくれと要求しだすにあたって、オデッサの虐殺は大きな弾みになった。
ロシアは、クリミアの心配はしていたが、ドンバスの事態は予想外だったと言っていいと思う。
この事件は当時から、ロシア系メディアが中心ではあったが、西側の人も含めて多くの人が知るところとなった。しかし、クーデター政権はこの問題を放置して現在に至っている。ロシアは実行犯が誰だか名前を知っていると主張している。
当時の国際メディアは、BBCでもNYTでも報道はしたが、トーンとして、親ロシア派、親キエフ派のどちらにも言い分はあるんだと言いたげな、半端なことを言っていた。
私は、さすがにこれは誰かがダメだと言い出すんじゃないかと期待して見ていたが、なかった。心底失望した。
今から思うとその時点で、私は、90%ダメでも、10%ぐらいの良心がBBCやら何やらにあってナチの抑制に行くんじゃないかと期待していたんだと思う。私が馬鹿だった。むしろ事態は逆でそこを柱に人員を集めて武器を持たせて訓練していたのだから。
■ 誰かが救うしかない
そういうわけで、今年2月24日に「特殊作戦」を開始するにあたってロシア国民に向けて行ったプーチンの演説の一説を思い出したい。
February 24, 2022
Address by the President of the Russian Federation
私たちは8年間、8年間、平和的な政治的手段によって状況を解決するために可能な限りのことを行ってきました。 すべてが無駄だった。
前の演説で言ったように、そこで何が起こっているのか、同情せずに見ることはできません。それを容認することは不可能になりました。私たちはその残虐行為を、そこに生きて、ロシアに、私たち全員に望みをかけた人々に対するジェノサイドを止めなければならなかった。
ドンバスの人々の共和国の独立を認めるという私たちの決定の背後にある主な動機となったのは、彼らの願いであり、そうした人々の感情と痛みです。
さらに、次のことを強調したいと思います。主要なNATO諸国は、自国の目標に焦点を合わせて、ウクライナの極右ナショナリストとネオナチを、ロシアと再び一緒になることを自由に選択したクリミアとセヴァストポリの人々を決して許さないだろう人々を支援しています。
ドンバスの人々の共和国の独立を認めるという私たちの決定の背後にある主な動機となったのは、彼らの願いであり、そうした人々の感情と痛みです。
さらに、次のことを強調したいと思います。主要なNATO諸国は、自国の目標に焦点を合わせて、ウクライナの極右ナショナリストとネオナチを、ロシアと再び一緒になることを自由に選択したクリミアとセヴァストポリの人々を決して許さないだろう人々を支援しています。
-------引用終了。即興翻訳は私
で、私は、このスピーチを始めて読んだ時、ロシアに、私たち全員に一縷の望みをかけている人々に対する行動を容認できない、という下りで泣いたし、今も同じ気持ち。ロシア人は自分の兄弟姉妹を、あるいは父母を見捨てられないってことでしょ。
本当に、西側世界はナチ勢を制御しようとはしなかった。介入しようとはしなかった。だから、ドンバスや南部、東部で本当はナチの手下でびくびくしながら生きたくないと思ってる人々にとっての唯一の希望はロシアだったし、今もそう。
それどころかそれらの人々を中心に据えて作り直したのが現在の「ウクライナ軍」なるものの正体。だから、ロシアがナチ組に忠誠を誓わないウクライナ人に投降を呼びかけたのは実際本当に正しかったし、数日のオーダーではなく数カ月、数年、あるいはもっと永続的な時間枠でみればこれはロシアにとって実りのあるものでしょう。
で、これはつまり、戦後売り出された国際社会の一致したなんちゃらかんちゃらという理念みたいなものが嘘だったことが暴かれたまた1つのエピソードとも言えるでしょう。ユニセフだの難民なんちゃらという国連の機関が、あろうことかtwitterに広告まで出して、人々にウクライナ支援を呼びかけていたが、ナチでないウクライナなら支援します、と書き込んでやろうかしらと思ってる。
■ オデッサ
ウクライナのオデッサは、基本的にクーデター政権の支配が及んでいる。だもんで、今年は、5月1日から5月3日まで、外出禁止令が出されている模様。
つまり追悼集会などを開かれたくないということなんでしょう。自国民の不幸とは考えないんでしょうね。クーデター政権を支持しない人間は殺すべき、と判断した人々らしい、その意味で一貫性がある。
そんな状況にないロシアでは、モスクワのウクライナ大使館に花を手向ける人々が列を作っていた模様。
訳:2014年5月2日に起きた”オデッサの悲劇”を偲んで、モスクワのウクライナ大使館に花を手向けるロシアの人々。
— PickUp🇯🇵🇺🇸 (@pickup_topic) May 3, 2022
ナチスウクライナが、オデッサの労働組合で人々を生きたまま焼き殺した時刻、ウクライナ大使館のフェンスの周囲に、犠牲者の肖像画とロウソクが手向けられました。 https://t.co/grtkLqLdJm pic.twitter.com/L8RffhRvXe
■ オマケ:2017年5月プーチン
プーチンが2017年5月に、ソチに来たメルケルの隣で、2015年5月2日にオデッサで起こった事件についてこう語った。
あなたは覚えていらっしゃるかもしれませんが、3年前、オデッサでとてつもない悲劇が起こりました。ウクライナの過激なナショナリストたちが無防備な人々をオデッサのトレードユニオンビルに追いやり、そこで生きたまま焼きました。未だに誰に責任があるのか判明していません。グローバルコミュニティには、これを忘れる権利はありません。同じようなことが将来二度と起こらないようにするためです。
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/60124463bbeb6367ea9039f567843ff9
あなたは覚えていらっしゃるかもしれませんが、3年前、オデッサでとてつもない悲劇が起こりました。ウクライナの過激なナショナリストたちが無防備な人々をオデッサのトレードユニオンビルに追いやり、そこで生きたまま焼きました。未だに誰に責任があるのか判明していません。グローバルコミュニティには、これを忘れる権利はありません。同じようなことが将来二度と起こらないようにするためです。
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/60124463bbeb6367ea9039f567843ff9
にもかかわらず、メルケルは放置した。
■ 参考記事
ヨーロッパが選んだナチ・ウクライナ、そして消耗戦
■ オマケ
RTのオデッサ虐殺の記事。多数の証言などを盛り込んでいる。
'An act of genocide': A witness recalls the 2014 Odessa massacre
ドイツのエリートは言葉だけは立派で行動はナチであると喝破いただいてなお、21世紀になって如何なく発揮されたナチの血まみれの残虐さと、カオナシのように知らんふりをする鉄面皮に対して、シュタインマイヤー大統領の言葉を投げつける衝動に駆られます。
ナチスからの解放と欧州における第二次世界大戦終戦75周年。戦争と暴力支配の犠牲者のためのドイツ連邦共和国中央追悼施設、ノイエ・ヴァッヘにて。2020年05月08日。ドイツ・シュタインマイヤー大統領
<抜粋短縮>
1945年、解放は外からやってきました。解放は外から来ざるをえなかった。この国はそれほどまでに深く、自らが生み出した災厄と罪にその身を絡めとられていたのです。・・・内なる解放は、長く、痛みを伴う道のりでした。犯罪行為を知っていた者やそれに加担していた者の過去に関する総括と解明、・・・沈黙と隠蔽に抗する闘い。この格闘は今日まで続いています。記憶するという営みに終わりはありません。・・・記憶を呼び起こさなければ、私たちは将来を失ってしまうからです。
「人間の尊厳は不可侵である」。我が国の憲法の第一条に掲げられたこの一文には、アウシュビッツで起きたこと、戦争と独裁体制下で起きたことが、すべての人の目に見える形で刻み込まれています。・・・責任を認めることは恥ではありません。責任の否定こそ、恥ずべきことなのです。
・・・対自的な知性を感じさせる言葉のあと、アウシュビッツに2014年のオデッサが加わって以降8年、続くシュタインマイヤー大統領の言葉に隠されていたアングロサクソンゲルマンの狡猾な二枚舌と残忍さと鉄面皮が剥き出しになりました。引用をつづけます。
「もう二度と」− 戦後、私たちはこう誓いました。この「もう二度と」は、私たちドイツ人にとっては特に「もう二度と孤立するな」ということでもあります。そしてこれは、他のどこよりも欧州においてあてはまります。私たちは欧州の結束を保たなければなりません。欧州人として考え、感じ、行動しなければなりません。欧州の結束を・・・保てないのであれば、私たちは5月8日という日を節目の日とする資格はありません。欧州の失敗は、「もう二度と」という誓いの失敗でもあるのです。
・・・シュタインマイヤー大統領が言うとおり、欧州NATOは鉄面皮による失敗を開始したわけです。失敗から破綻に至るでしょう。本質的に反理性的な蛮族である彼らには、プーチンがアッティラに見えるのでしょうか。
https://www.youtube.com/watch?v=PZ1z3QvCjMg&t=1s
https://thesaker.is/yuri-podolyaka-good-vs-evil/
ポダリャカは、ウクライナ人の軍事アナリストで、現在ロシア在住。ウクライナ各地にかなりの情報網を持ち分析しています。軍事に限らず政治経済にも詳しく、世界情勢全般を幅広く判断できる鋭敏な男です。この動画のタイトルは「ウクライナで進行しているのは、国家間の戦いでも理念の闘いでもなく、善と悪の闘いの一局面だ」。彼は、自分のチャンネルだけでなく、毎日3~4回は、テレビ出演しているのですが、前日のニコノフの番組に出た時、スタジオ出演の11年間「無実の罪」でアメリカに囚われていたロシア人が、囚人交換でロシアに帰国する際、ほぼ1日「手枷足枷」の状態で自分で水すら飲めないような仕打ちを受けたことに驚き憤慨し、この動画を作ったと言っています。戦争捕虜の扱い、ジャーナリストの扱いを取り上げ、「オーク」という架空の邪悪な戦闘種族の名前を出して、ロシアが戦っているのはこの「オーク」であり、最終的にはワシントンに勝利し、何億何十億もの人々を苦しめている吸血鬼から救い出すことだ、ということを番組に出ながら考えたそうです。少し前のニュースで見ましたが、マリウポリの病院は負傷者で溢れ、その中でも、アゾフの兵士にも同様の治療が施され、ドンバスの兵士とアゾフの兵士が隣のベッドという状況みたいです。逆の場合の悲惨さは言わずもがな。
ポダリャカは善と悪と表現していますが、僕は人間的か非人間的かと言いたいと思います。ロシアにある伝統的な「人間性」に対する、西洋社会の人工的というか「非人間性」はもっと強調されて然るべしだという気がします。殆どの人は逆だと考えるでしょうが。
しかしこれは直ちに、期を同じくして侵略者との死闘によって自国民に2700万の犠牲者を出し、その後も冷戦の最前線に身を置き最大の緊張を強いられ続けてきた国の、それでも普遍の美しい理想となりえるでしょうか。
「平和の尊さを学んでください」ウクライナの学舎にそう記き残したロシア兵の慟哭を思うと、冷戦下にあればこそ敗戦の焼け跡から息を吹き返し、経済成長を図ることができた国の、その欺瞞に身を置く我が身に、どうしようもなく恥じ入るしかありません。
大本営発表を聞いている方々と、ここでコメントされている方々では、見ている現実が全く違います。
昔、大本営発表を聞いていたとき、日本は負けるよっていったら負ける一日前まで非国民扱いだったのですから。ですが、当時、薄々そうだと思っていても、負けるなんて信じたくないです。嘘でも大本営発表を信じたい心理が働くのだと思います。
どちらにしても、ウクライナ軍は総崩れで内部から崩壊するのではないですか。徴兵されて戦地に送られても笛吹けども踊らずです。武器も与えられず踊りようがないですけど。残るは世界中から集められたネオナチのいかれた連中のみ。ロシアが片づけてくれます。ある日突然ガラガラっと終わるような気がします。ベルリンの壁が崩れたように。降参する流れはウクライナにとどまらず欧米に広がっていくのを眺めていればいいのかと。それしかできませんし。
先に言及いたしましたシュタインマイヤー大統領の2020年5月8日のスピーチを読み返しました。ソ連ないしロシアを含めた言及は、・・・多大な犠牲のもと、欧州を解放した東西双方の連合国関係者とともに、記憶を呼び起こしたい・・・という箇所のみでした。
日本人にとってナチズムとはアウシュビッツのみであると以前の御記事で指摘されておりました。シュタインマイヤー大統領にヒトラーナチスによるソ連に対する絶滅戦争の犠牲になった2700万人の人びとに対する言及はなく、呼び起こすべき記憶はアウシュビッツなのです。
戦後数十年のドイツの復権、民主主義の成熟の歳月とは・・・東欧諸国における勇気と自由への憧れが、壁の内側に収まりきれなくなり、最終的に、解放における最も幸福な瞬間、すなわち平和革命と再統一に至った歳月・・・だったのです。カラー革命とNATOの東への拡大を言っているのです。
シュタインマイヤー大統領の結論としての呼びかけは・・・今日、私たちは自らを解放しなければなりません。新たなナショナリズムの誘惑から、権威主義的な政治の魅力から、各国間の相互不信、分断、敵対から自分たちを解放するのです・・・ふたたびロシアの撃滅を呼びかけていたのです。2020年のナチス降伏記念日に。まるでオートマタのようです。AI的知能をそなえたヨーロッパ人形。まことに石井さまのおっしゃるとおりです。
大東亜戦争と名づけられたアジアにおける帝国主義戦争の惨禍とは日本人にとって何なのでしょうか。広島長崎への原爆投下、東京大空襲をはじめとする列島全土への無差別爆撃、ソ連の満州侵攻とシベリア抑留、なのではないでしょうか。戦後まで引きつづいた沖縄の人びとの大きな犠牲を念頭に浮かべるひとは限られているのでは。徴兵されて死に追いやられた数百万人の男たちの6割が餓死であり、敗戦前1年間に集中しているという悲惨な事態を認識しているひとはさらに少ないでしょう。
日本軍の対中戦争によって殺された中国の人びとが1千万人をはるかに越えるというのが大東亜戦争の最大の人的被害である、という認識が日本人には存在しないのが最大の問題です。満州国という傀儡国家による資源収奪と軍部のアヘンによる秘密蓄財、731部隊、それにはるかに先立つ明治期における朝鮮に対する残忍な蹂躙・・・これらを戦争犯罪と認識する日本人はほとんどいません。子どもの頃にしたしんだ記憶があざやかな石川啄木が日韓併合を知って心底からの憤怒を歌っていたのを理解したのは、夭折した彼の没年齢をはるかにすぎてからでした。まことに天才であると驚嘆しました。
この、ナチスだらけの世界と時代を生きるにあたり、DeeplyJapanウェブログの存在を知りましたのはまことに僥倖であり、奇跡ですらあると、あらためて痛感しております。DPJの論考群は歴史に刻まれると確信します。
家人は北方四島と拉致北朝鮮問題からロシア・ソ連に対する揺るぎない不信感を持っており、テレビとスマートフォンがニューズソースですから、ロシアをかばい贔屓するばかりであるとひどく怒るので、ロシアの話はやめました。CIAとNATOがロシアを国際的に孤立させ、経済制裁で苦しめて内部分裂させて解体し、そのゆたかな資源をねらう、というのがウクライナ作戦だよ、と言いいますとなぜかすんなり・・・ロシアの兵士たちが勇敢であるのはわかる、と。主婦ですから経済論チックだと理解してもらえるようです。
みなさまがおっしゃるとおり、どのような仕掛けに嵌まるかは充分承知で、苦しむ同胞のためについにウクライナに出ていったプーチン、文字どおり・・・義を見てせざるは勇無きなり、です。そこにまとまるロシアの人びとはほんとうにすごい!プーチンには、裏の裏を掻いてオモテにする成算あって、というより成算をたゆまずひるまず実現するのが指導者たるゆえんなのでしょう。
中国がパンデミック対策を大げさにおこなっているのは、世界有数の上海物流をストップし、西側諸国への産品供給を激減させて西側のロシアに対する経済制裁への反撃をしているのだ・・・、と田中宇氏が言っていそうです。どこかで見たような記憶があるのですが・・・なるほど、中国のゼネスト、これは!絶対に効くでしょう。kiyoさまのおっしゃるとおりになるのでは。