ここのところ、まったく事実に基づかない話がアメリカとイギリスの情報機関を発信源として出回って、今にもウクライナにロシアが侵攻するということになっているらしい。
だがしかし、他方で面白いのは、ロシアはもちろん侵攻予定なんかないと否定したままだが、当のウクライナからもそんな兆候はありません、などという声が聞かれる。
そして、外交官がキエフを離れました、とかいうドラマみたいなことが記事になっていたが、やってるのはアメリカ、イギリス、オーストラリアあたりだけで、ヨーロッパは付き合ってない。
一昨日あたり出ていたへんなニュースは、習近平がオリンピックまで侵攻を止めていくれとプーチンに言ったのでまだ侵攻が行われていないのだ、とブルームバーグが書いて、それをロシア政府も中国政府もまったく無遠慮に否定した、というものだった。
どうしてそうなるのかというと、「今すぐロシアが攻めてくる」というのをやり始めて、既に60日が過ぎているんだそうだ。だもんで、どうして侵攻作戦はじまんないのぉ、という人も出てきて(笑)、それに対する理由付けが必要になった。
そこで、2週間ぐらい前は、ウクライナの場所がぬかるんでいてロシア軍の作戦が決行できない、とかいう話になっていたが(いつの話なんだ @@)、次には習近平おねがい説になった模様。
いろいろと、見てると何なのこの話?と馬鹿みたいな話にしか見えないのだが、なぜこんなことをしているのか。
まぁアメリカが戦争を欲しているというのは1つの説明。しかし、本当にやっちゃうほど今のアメリカに余裕があるかというとそれは別の話。まして、ロシアと戦うなんて話はアメリカ人も聞いてない(笑)。
だから、偽の危機を演出して、それを、欧米の結束によりバイデン政権が外交で危機を乗り切った、というシナリオでやってんじゃないのか、という噂が流れている。なにしろ、支持率もただ下がりだし。
つまり、バイデンがケネディーで、プーチンにフルシチョフをやってもらうという話。あははははは。
馬鹿みたいでしょ? でも、バイデン政権の外交スタッフって馬鹿なんだよ!! ここが大問題。
他方、昨日あたり、プーチンはキューバの大統領と話していたが、これはつまり、お前がその気なら、ホントに危機を作ってやろうか、じゃないのかしら?
今すぐキューバに何かを置こうという話じゃないけど、ベネズエラやキューバの港にロシア軍の小さなお船が気軽に入れるようにしておくのは今後にとって大変好都合。そして、アメリカ人にとってはまったく嫌な行動。
NATO東方拡大の結果としてのツィルコン体制
でもアメリカのメディアは拾わないかもしれないね。なぜなら、本当に危機になっていることを国民に知らせたら支持率が落ちるから(笑)。
■ 古いヨーロッパは別行動
で、今、日本の記事を見て、あらためて、これはやっぱり「バイデンはケネディーです」路線なんじゃないかと思った。
米欧首脳、ロシア対応で「結束」 米軍8500人の派遣準備
こういう感じを見せたいんだろうな、と。
結束というか、バイデンがオンライン会議するっていうから加わって、加わったので、はいそうですね、とみんなが言ったのにすぎないと思うけど、結束と書かれると結束なのかと納得する人も出る。
そこで意味不明にNATO軍が人数を増やして東欧に派遣するとかいう、半分リアリティーあるみたいなものが付いてきた、と。
(冷静に考えると、この芝居ではどういう戦争をする気なんだろう。ロシア軍は、万一、キエフの軍がドンバスにかかってきたら、援護する ≒ 自国領内からウクライナの前線の軍事施設を破壊する、というのが妥当な線だろうとみんな思っているんだが、その場合そのNATOの人員は何をするの?)
現実には、ドイツの首相、フランスの大統領は、ノルマンディー4のフォーマットを復活させて話し合うスケジュールを組んでる。おせーわけだが、彼らにできることはそれしかない。ノルマンディー4は、ドイツ、フランス、ロシア、ウクライナなので、米も英も入ってない。
音頭を取ってるのはマクロン。
Macron to share his vision of Ukrainian de-escalation with Putin
Russian, French leaders to discuss situation in Ukraine before end of week — Kremlin
そして、ついに、EUのボケナス親父、ボレルも、今すぐロシアがウクライナを攻撃するという話に否定的になってる。
“Certainly no, I do not think there is anything new that can increase the feeling of fear about an immediate attack, no,”
No threat of immediate Russian attack on Ukraine – EU
■ だがしかしNATO
だがしかし、ヨーロッパがいくら軟化して、ロシアと一緒に安全保障を云々といったところでこの話は終わらない。巷間言われるように、プーチンはタバキには用がない。シア・カーンと話をつけんといかんと思ってる、という状況。
(ジャングルブックの比喩。トラのシア・カーンの手下のハイエナがタバキ。タバキと話し合っても無意味。いずれにしてもタバキはシア・カーンの言うことを聞くだけだから、ということ)
ロシアによる、NATO東方拡大を止めるのか、止めないのか、どっちなんだという追求はまだ続いている。
それをすり替えて、ウクライナでのフェイク戦争の話に持ってきたのが米と英。この騙し作戦の結果がどうなるのか、というより、バイデン政権はどう収拾を付けるものなのか、まだまだ目が離せない。
■ オマケ
この件に関しては、おそらく朝日などは米英路線まっしぐらなんだろうけど(見てない)、日経&FTは、どちらかというと経済危機を心配している派ではなかろうかとみえる。全体として、日本の報道はイギリスなんかと比べたら控えめ、アメリカと比べると狂人度が足らないといった感じがする。
こんな感じだしね。
天然ガス「脱ロシア」難路 米欧、資源調達で依存度高く
まぁ見出しは軽薄層狙いだろうけど、根本的に、ロシアは
しかし、ロシアは天然ガスで世界2位、原油で3位の生産量を占める資源大国。調達先からロシアを排除するには大きな壁が立ちはだかる。
これに原子力もつくんだよ。米もロシアから原発の燃料を買ってる。
どうやっていきなり「脱」になれるんだよ、ということ。
(フランスの強いところは、原発を含めて技術で独自系が多いこと。英米系じゃない。ドイツはオランダとイギリスを捨ててフランスと組んで、ロシアと共存関係になるというのはいろんな面で悪い話じゃないのでは?)
そして、制裁を振り回しても中国もインドもその他各国も付いてこない。ということは、ヨーロッパとアメリカだけフェイク戦争の結果として自ら進んでエネルギー危機に陥るという、実に馬鹿げた話なんですよ、これ。
で、日本としてはこんなものに巻き込まれてくないと思うのが当然なので、適当な記事を書いて、できるだけリアルな政治に結び付けないことが吉だと思う。オーディエンスも、メディアの言うことを真面目に取らず、ああ、この人たちはこういうお仕事なんだなと思って見てればいいんじゃないの。フィクション・ライターなんだな、と。
最近のフェーズの結果としてもたらされるものは、現実の政治(国民国家対象)とメディアの語る世界の乖離がますます明らかになること、だと思うな。それをどう乗り越えていくのか、どう編成していくのか、が今後の世界の問題になるんじゃないのかしら。メディアの真実と地上の事実はもともと異なるにせよ、乖離しすぎたことによる害悪が大きすぎるようになった。
■ オマケ2
とか書いてから数時間後。日本の政治はこの話に乗っかってた。
日本の自民党外交部会 ウクライナ侵攻なら制裁 ロシアの天然ガス輸入禁止など https://t.co/9ZNKMl0w4V
— Sputnik 日本 (@sputnik_jp) January 25, 2022
めぼしいところが全部乗ったところでロシアが侵攻したらどうするの?