まぁ私の気のせいかもしれない、と一応言っておくけど、でもやっぱりなんか全体的に、右も左もなく「欧米」情勢の見方がちょっとずれてないですか?という言論が目立つような気がする今日この頃。
例えばこのへん。
米大統領選でサンダースが健闘、英でもコービンが労働党党首に! 欧米では反格差、社会主義者が評価されているのに日本は…
http://lite-ra.com/2016/02/post-2016.html
3月1日のスーパーチューズデイを控え、共和党の極右候補、ドナルド・トランプの話題がやたら報じられているアメリカの大統領選挙。たしかに、こんなとんでもない人物が共和党の指名争いで最有力になってきたというのは戦慄すべきことだが、しかし、この大統領選挙では逆に、画期的な現象も起きている。
トランプはとんでもない人になっていた。まぁある意味そうなのは否定しないけど、ネオコンほど害があるわけでもなく、ネオコンほど悪魔のように酷いわけでもないんですけどね。
でまぁ、リテラだけでなくNHKも、サンダースが出て来た、いわゆる左派が格差是正を求める人々から支持されているのに日本はどうしたのか、といった調子が顕著。
これは、別にまったくの間違いとは思わないけど、でも、なんてか、円錐形を見て尖ってて不安定だ、と言っているような感じ。底の方は丸くて安定してるやん、みたいな。
で、この路線からはなぜトランプが支持されているかが見落とされるわけですね。で、トランプはずばずばバカなことを言うから低学歴で鬱屈した人たちに受けている、みたいな受け止め方をしている人がいますね。
しかし、実際にはサンダースよりもトランプの方が先に出てきて、その動きを支持している人たちは決して低学歴で鬱屈云々とは限らなかったし、むしろ逆だった可能性さえある。
なぜそうなるのか。それは、前から書いている通り、今般の大統領選挙のテーマは、アンチ・エスタブリッシュメントだからでしょう。上とかdeep stateとかいろいろ言われてきたけど、大統領さえ操り人形にしてる組織体がどうもあるようだ、で、そいつらが付けた候補者を選ばせられてるんだな、俺たちはというのに多くのアメリカ国民が気付いた。だから、ブッシュだのヒラリー、そして今後はルビオあたりが、エスタブリッシュメントが押し込もうとしている候補として嫌悪されていっている、と。
こは確かに、反ウォールストリートだけど、これをすべて「格差是正」をキーで描くってどうなのそれ、とか思うわけです。
■ 大統領候補者の外交通信簿 by 共和党保守派(いわゆる孤立派と言われる派)
再々引用している、TAC(The American Conservative;アメリカの保守派)にあった図表が興味深かった。外交方針をTAC基準で評価するとこうなるらしい。
A 2016 Foreign Policy Report Card
http://www.theamericanconservative.com/articles/a-2016-foreign-policy-report-card/
サンダースが総合Bで、とりわけ、イラク戦争でたった一人Aであることからもわかる通り、TACは反ネオオンなわけです。
このへんの人たちは別に低所得の頭の悪い人々じゃないですよ(笑)。あはは。TACはパット・ブキャナンなんかが作った雑誌で、保守派とも孤立派とも言われる共和党の支持勢力の一つ。
で、面白く思ったのは、これみてわかる通り、外交方針をネオコン的に破壊的か否かで見た時の評価でも、現在のトランプ、サンダース現象は解明できわけよね、ってこと。
私はこっちの方にリアリティ感じますね。
■ なぜ日本ではこれが見えないのか
で、問題は、なぜ日本ではこれが見えないのか、でしょうね。
見たくないから、でしょうか。
見たくないものは見ない、不都合なものが見えたら見なかった事にするのは旧軍以来の伝統です、でしょうか。
日本のエスタブリッシュメントにとっては、できればヒラリー、次点でルビオに当選してもらって、何事もなかったように従米政策を取りたいのに、そのアメリカがエスタブリッシュメントだけの国じゃない、アメリカはアメリカなんだという共和国志向に行ってしまったらついていけなくなるじゃないか、ってことでしょう。
でも、それは日本のエスタブリッシュメントの希望的観測であって、アメリカの現実じゃないでしょ?
で、私は反エスタブリッシュメント傾向はしばらく戻らないと思いますよ。
想像してみればわかる。ここで仮に、スーパー代議員が完全に民意に逆らった行動を取るとか、選挙をいじるとかしてヒラリーか誰かエスタブリッシュメントが支配できる候補を当選させたとしましょう。
テレビメディアがどんだけ作り事をしても、アメリカ人はますます主要メディアと自国政府に不審感を持つでしょう。
すると、何をやっても、特に外にちょっかいを出すみたいな話に対して拒否を示すようになるでしょう。ということはその大統領は、アメリカ人にひたすら嘘をつきながらも漏れないようなことをしないとならない。オバマが今やっているみたいなこと。でも、昔インターネットがない時代ならともかく、もうできないわけですね。
そこでまた都合よく911みたいなのが起こったとしても、前回のようなムードは無理でしょう。もちろん、それでも恐怖支配をするという手もありますが・・・。
というわけで、日本はまたまた何かずれた感じで民意が揃っちゃうんでしょうかね。
■ 参考記事
米大統領選:アンチ・エスタブリッシュメント
サンダース:FRBはバンカーズに乗っ取られてる
ロン・ポールの連邦準備銀行を廃止せよ | |
副島 隆彦,副島 隆彦,佐藤 研一朗 | |
成甲書房 |
1913年以前に戻ってるんだな、って思えばそんなに不思議じゃないですが、日本のアメリカ像って世界支配的アメリカしかないから困ったもんです。