今週のハイライトは、
「汚い爆弾」騒ぎとプーチンのバルダイ・クラブでの長くて面白くて、知的で、抗いがたく魅力的なトーク、かな。
「汚い爆弾」騒ぎとプーチンのバルダイ・クラブでの長くて面白くて、知的で、抗いがたく魅力的なトーク、かな。
■ 汚い爆弾問題
「汚い爆弾」騒ぎは、NATOウクライナが放射性物質を含む爆弾を爆発させて、それをロシアのせいにしようとしているとロシア側が主張し、それを、NATO各国が、そんなわけない、それはロシアがやろうとしているのだ、と言ってる騒動。
言うまでもなく、西側の路線がキツイのは、ロシアには普通に様々な武器があり、戦略核だってあるのに、わざわざ汚い爆弾を作る意味がわからない、なにそれ?という点。
対して、ウクライナの方は、戦場で苦戦してるから、ここで大戦争にした方が得策だ、それには、プロパガンダ込みの窮余の一策として「ロシアの非道をなじる」という作戦は十分考えられる。
まるでそれはシリアの化学兵器騒ぎと同じだ。
一応、スプートニク紙が解説していたのでリンクしておく。
【解説】汚い爆弾とは? その仕組み、そしてウクライナで製造可能なのかどうか
2022年10月26日, 23:23
https://sputniknews.jp/20221026/13533625.html
だがしかしこの問題が今週興味深かったのは、twitter戦争ではなくて、現実の大臣クラスがロシア国防大臣のショイグによってお知らせされたあたり。
ロシア国防省
— Tweezer (@eihc2448) October 23, 2022
本日、ロシア連邦ショイグ国防大臣と英国ウォレス国防大臣が電話会談を行った。両大臣はウクライナの状況について話し合った。ショイグ国防大臣は、ウクライナによる『汚い爆弾(ダーティーボム)』を使用した挑発の可能性について、イギリス側に懸念を伝えた。https://t.co/3vinyIaM2R https://t.co/kewSdfLQdV
ショイグはイギリスだけでなく、フランス、トルコにもほぼ同時期に電話をした。
ショイグは、我々は確固たる裏付けを持っていると言い、それに対して、確かに、米のペンタゴンの広報官カービーとか大統領補佐官のサリバンなどが、いつものように青白い顔してロシアが悪いと言うのだったが、全体として、
こんなことは許されない、という一致した意見が出るのは必定(それ以外のことを言ったらその方が問題)。
そして、これらの軍関係者が、過去数カ月没交渉だった状況を一変させ、多少なりとも話さないとまずいですねという恰好になった。
最も話題をさらったのはイギリス。イギリスはショイグが電話する前18日に、国防大臣ベン・ウォレスが、突如、我々の会話は盗聴されているとか言い出して、だからワシントンに行かなければならないと言ってスケジュール外でワシントンに出かけて、国防長官オースチンと統合参謀本部議長のミリーと会った。
そもそも、盗聴されてると公表するという事態がおかしい。普通、そんなこと言わないが言った。
さらに、こうやってウォレスがワシントンに行った後に、ワシントンのオースチンからモスクワのショイグに電話がかかり、その後上述のショイグの多連装の電話かけアクションが来た。
イギリス国防省もお知らせを受け、ロシアの主張を撥ねつけましたという声明を出してる。だがしかし、脱エスカレートを模索している、などと言ってもいる。仮想戦記を書き散らし、世界中のメディアを大混乱に陥れている、嘘つきの張本人の国であるのに、まるで正常な国であるかのような声明だ。
A statement on Defence Secretary Ben Wallace's call with Russian Defence Minister Sergei Shoigu: pic.twitter.com/BbQ9muxKeC
— Ministry of Defence 🇬🇧 (@DefenceHQ) October 23, 2022
で、そんなこんなで、これは結局繋がってて、どう考えてもウクライナに知恵付けて、戦争を長引かしてる一味であるイギリスには何か不味いことがあったのではないのか、という憶測を呼び出した。
ショイグはその後、中国とインドの国防大臣とも汚い爆弾問題を話し合った。
どうなるのかわかりませんが、今のところ、シリアでの化学兵器騒ぎから学習したロシアが、先回りして、情報機関ではなく、国の機関として最終的には表で仕事しないとならない国防大臣を同乗者として防止に動いた、って感じではないのかと思ってる。
■ 「覇権の後の世界」
そんな週も終わりに近づく27日木曜日、ロシアで定例となっているバルダイ・ディスカッション・クラブが開かれた。
今回のテーマは、
A Post-Hegemonic World: Justice and Security for Everyone
覇権の後の世界:みんなにとっての正義と安全保障
だそうです。既に、一極支配してるつもりの覇者が存在するという構図は終わったので、それではどういう世界に向かってるのか言挙げする、ということだろうか。
で、例によってプーチンが最後に登場して、スピーチし、その後長い時間、様々な質問を受けてそれに答えた。4時間以上やっていたという話しだ。
クレムリンのリンクはここ。
Valdai International Discussion Club meeting
なにせ長いし、テーマも多岐にわたっているけど、貫かれている主意は、新しい時代は到来した、であり、しかし、それが故に旧勢力が逆襲をかけてうるさいことになるので現状、当分の間とても危険な時代になるだろうという見通しを語ったと言っていいかと思う。
実際、歴史的にさまざまな転回点というのはあるわけで、どの変化だってそう簡単にはすまないんだから、まぁそうだろうなって感じ。
その中で私がハイライトしたいところは、
Westとの関係について、と、デモクラシーについてのあたりかな。
Westとの関係について、と、デモクラシーについてのあたりかな。
ロシアは独自の文明を持った集団で、そのロシアは自分がWestを敵だと思ったことはない。しかし、Westには少なくとも2つある。1つは、伝統的なもの、クリスチャンで自由、パトリオティック、優れた文化云々というWestはロシアにも関係がある。共有してるし古代からのルーツもある。だけど、別のWestがある。攻撃的で新植民地主義的で、ネオリベラリズムのエリートの道具として機能しているもの。ロシアはそのWestからの命令に屈する気はない。
だそうです。まぁ実際そうだよね、って感じで、エリートによる政治ブロックWestとは離婚中というのが現状でしょうか。
デモクラシーについては、今年の2月、習近平とプーチンの共同の宣言の中でも非常に多く語られていた。簡単にいえば、世界中でいろんな形で民の声を反映させる仕組みがあるのに、アメリカはアメリカ型のやり方しか認めないと強情なことを言ってるが、他者がそんなことを聞かないとならない理屈はないぜ、という話し。
今回もその話が様々に語られているが、それが行き着いている先、つまり、他国での現実に及ぶあたりのインパクトが半端なかった。ここの流れは興味深いので翻訳してみると、こんな感じ。
何年もの間、西側のイデオロギー学者や政治家は、民主主義に代わるものはないと世界に言い続けてきました。明らかに、彼らは、西側式の、いわゆるリベラルな民主主義モデルを意味していました。
そのうちの 1 つは、2014 年にウクライナで悲劇的な結果をもたらしました。彼らはそれをサポートし、このクーデターに費やした金額を明示しさえしました。彼らは好きなように振る舞うずうずうしさを持ち、何をするにも良心の呵責を感じません。彼らはイランの将軍であるソレイマニを殺害した。ソレイマニについてはそれぞれどう考えても構いませんが、彼は外国の公人でした。 彼らは彼を第三国で殺害し、それを認め、ええそうです、彼を殺しましたと言った。どういう意味ですか、これは? 私たちはどんな世界に住んでいるんでしょう?
その様子がこれ。
Putin: “They have no limits. They are not shy about anything. They killed Soleimani, an Iranian general. You can judge Solemani however you want, but this an official in another state. They killed him on a territory of a third country and said, “Yes, we killed him.” pic.twitter.com/G9giPMukIc
— The Convo Couch (@theconvocouch) October 27, 2022
これは、ISと戦ったすべての人々の心を動かしただろうと思う。そして、公人殺害を敢行してえへらえへらしてたアメリカ、あるいは西側に対する軽蔑の念を新たにするだろろうとも思う。
(ソレイマニの葬儀の群衆)
そしてこの話はこう続く。
2000年に私が大統領に選出された後、私は自分が直面したことをいつも忘れていません。当時西側がほぼ公然と支持していた北コーカサスのテロの巣窟を破壊するために支払った代償を覚えています。
ここにいる人たちはみんな大人です。このホールにいるほとんどの人は、私が話していることを理解しています。これがまさに実際に起こったことであることを私たちは知っています。財政的、政治的サポート、そして情報のサポート。 私たちは皆、それを生き抜いてきました。
つまり、アメリカ型の民主主義を導入するという看板の影で、テロリストを養成して、他国侵略を行っている西側の厚かましい姿を覚えていると言ってるわけですね。
そして、気づくように、ヌーランドとトランプに境がない。他者からすれば当然だし、ロシアからシリアまでのテロ被害の克服はまだ続いているわけだから(ウクライナも過激なナチを養成してるんだから同じ)、こうやって決意を固め、仲間との連帯を温めるのも当然でしょう。
今のロシア軍の重要人物は全員シリアで戦った面々。
コナシェンコフ少将を見るたびシリアを思い出す私がいたりもする。アルカイダの空軍と化した米軍に、ISと戦うロシア、イラン他の人々を「助けてくれとは言わない、せめて邪魔するな」と言った。
さらにいえば、今般、バイデンでうまくいかなかったところで、またぞろトランプ、あるいはマスクとトランプみたいなカードで違った色を見せようという、本気の政治ではなく、小芝居でしのごうとする「民主主義屋」に振られることはない、という表明と読むこともできると思う。
プーチンが質疑ではなくスピーチの前半で、
私たちは、第二次世界大戦後、おそらく最も危険で予測不可能な、同時に最も重要な10年にいます。
と言ってる通り、危険な時代にいるのは間違いない。だがしかし、同時に、みんなが大なり小なり信じ込んでいたような一つの時代は確かにもうない。後戻りはない。これも確かなこと。つまり、私たちは、1つの覇者というへんな仕組みが崩れた時代、ポスト覇権の時代に、覇者を名乗ったものどもが見せるまちまちの幻影、まちまちの現実の力に引きずられながら生きている、といったところか。
■ オマケ
バルダイ・クラブといえば、2014年秋のこの会合で、西側のジャーナリストが、テロリストがどうしたこうしたと質問したのを受けて、プーチンが、あんたらテロリストっていうけど、それは傭兵だって知ってるか?と言い出したことが大変に大きな出来事だった。
テロリストは傭兵なんだよ by プーチンから2.5年
Putin Tells Everyone Exactly Who Created ISIS
この動画が500万ビューを超えたあたりで、アメリカ国内でちょっとした動揺となり、1000万を超えたあたりでは、そうか、そうだったのか、みたいな発想が多くの人に共有されていったと記憶している。それ以前には、今考えれば馬鹿な話だが、誰が金出してるのか、といった話は一切抜きでイスラム過激派が存在していた。
なら画一的にリベラルデモクラシーだけを押し付けるのは、本当に「民主主義」を広めることになるのか?
てなぜに西側の知識人は考えないのだろうか・・
結局は、現時点では「「民主主義」は、西側の、強盗詐欺の道具」だったって、いうしかないよね。
それで,西側ではしきりに「ロシアが苦戦」という情報を振りまいているのでしょうね.