現状、NATOといえばウクライナ、ウクライナといえばロシア、といった設定で話されるのが主流になってしまったが、実のところ、NATOは、アフガニスタン、リビア、シリア等々、他国を荒らしまわり、失敗を重ねてきた組織なのだから、本当は批判的に見つめられなければならない組織だったりする。冷戦期には、グラディオ作戦といって、加盟各国内で偽旗作戦をしていたことすら知られている。そういう組織。
逆にいえば、ロシアを敵として見立てて騒ぐというのは、NATOという組織を温存させるためには大成功だった。
だがしかし、クレイジーな人々を喜ばせることが本当に「成功」なのだろうか?
10日ぐらい前、ウクライナ熱狂派に批判的な、Foxのタッカー・カールソンの短いコーナーで、CNNなどに出ているような研究者(またはそれを装う反ロが家業の人たち)ではない研究者の人が出てきた。
Russian policy officer reveals what's at risk for the US
アメリカの主流メディアで反ロシアを文字通り「叫ぶ」タイプの人が冒頭のところに出ているが、こういう人たちを見て不安に思う人は少なくない中、
Clint Ehrlichさんという研究者の人が、事態を放置すると、ヨーロッパで戦争が起き、アメリカももちろん無事じゃない、そういう事態なんですよ、と冷静に分析した。
(実際、バイデン政権はウクライナでアフガニスタンやシリアでやったように、武器を氾濫させて、rebels、つまり武装した反乱者の群れを作ろうとしているので、その不安は当然ヨーロッパ人に知らされるべきでしょう。このままいくとヨーロッパは武装した誰だかわからない「反乱者」が闊歩するようになるんだから。)
また、軍事的にみればウクライナはNATOには不要です、とも言いきってた。
さらに、タッカーは、冒頭の一人語り部分で、メキシコが中国の軍事的支配下にある状態を想像してみろ、それがロシアにとってのウクライナの騒ぎだ、というある種のパンチラインを挿入していたのも導入として上手い。(普通に、俺たちはおとなしく、はいそうですか、とは言わないだろう、ということ)
で、クリントさんのその冷静な、4分かそこらの話が、思わぬ「釣り」となって、大変楽しいものを見せることになっていた。
クリントさんのスレッドに、大量の「反ロシアが家業」みたいなタイプの大物がごろごろ批判コメントを寄せ、それをこのクリントさんが、では見せましょうといって並べたもんだから、さらに面白いことになった。
My segment last night on @TuckerCarlson is having a bigger impact than I ever imagined.
— Clint Ehrlich (@ClintEhrlich) January 19, 2022
It's causing pro-war pundits and politicians to lose their minds!
Let's catalog their meltdowns. A thread... 🧵
本家ネオコンの狂人、ビル・クリストルがトップに来てる。
First, the man, the myth, the moron, Bill Kristol: https://t.co/xr6LjJLSTP
— Clint Ehrlich (@ClintEhrlich) January 19, 2022
その他、ウクライナとかロシアがらみでテレビに出てくる人たちが、続々書き込んでいて、壮観なことになってる。
その顛末をまとめた記事がzerohegeに出たもので、読みやすくなってさらに人々が関心を持った、という顛末か。
Latest Tucker Carlson Ukraine Segment Sent Liberal Media & Political Elites Into Meltdown
やっぱり、これらネオコン/ネオリベという人たちは、主流メディア(Foxも末席ながら入れるとして)である種の電波ジャックさえしていれば大衆はついてくるという妄想を持ってるんだろうね。だから、そこにさらりと異論が出てきたことに大変な危機感を覚える、と。
■ じり貧には違いないネオコン/ネオリベ
思えば、このネオコン集団にとって、2014年のクーデターは、是が非でも達成しなければならないある種の決起だったんじゃないのかしら。
というのは、2000年代には、2003年にグルジアでバラ革命、2004年にウクライナでオレンジ革命があり、親西側、反ロシアの運動が盛り上がり、これを契機に、2008年のNATOサミットでグルジア、ウクライナというソ連の構成部分であったところへの進出の問題が取りざたされ、今すぐじゃないけど、入ることは入る、みたいな曖昧な結論が下された(内部で対立しているからこうなる)。
2008年のブカレスト・サミットでの迂闊な結論こそ、現在のウクライナ騒動のタネであると見る人は多い。(ここで完全に否定すべきだった、ということ)
しかし現地のウクライナでは、そんなことよりも、カラー革命の宣伝にもかかわらず経済は全然よくならず、これらの親West路線はそれほど人気がなくなっていた。逆に、ロシアは秩序を取り戻していた。
ウクライナ、グルジアを入れてロシアとの戦争態勢を確立したいネオコン派とすれば、これじゃいかん、だったんでしょう。
そこに、石油資源狙いの勢力とNATO温存派、NATOを中心として西側の結束を固めてアメリカ覇権という恰好を温存させたい派等々の利害関係者がくっついて、現在みるようなとっちらかった騒ぎになった。
2016年に書いたこの記事の続きを見ているような恰好。
追い詰められてるネオコン/トロキスト勢
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/c405027313b6f062aa98922d68690343
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/c405027313b6f062aa98922d68690343
タイムラインで考えれば、だからこそロシアと是々非々で行きたい勢力が押したのであろうトランプを是が非でも下さなければならず、あの破廉恥な「ロシアゲート」騒ぎに至った、と。
だがしかし、金融危機以来の異常な政策によっても安定した環境になどなっていない世の中にあって、ここでロシアと大戦争をしたいといってみたところで、誰が乗るんだよ、というのが客観事情。
(金融屋はだから第3次世界大戦を欲しているのだ、とかいうのはアホな物書きのプロパガンダでしょう。昔の歩兵の戦争と異なり、今拡張的な戦争をしたら、アメリカや日本といった場も普通にミサイル他のターゲットになる戦争だというのが理解されていないから書ける。)
なので、全体としてみればアメリカの政権も半腰にならざるを得ない。経済、資源関係者からは、対ロシアの制裁について、さりげなく何度もウォーニングが投げられている。
ネオコン派は2000年ごろ、「アメリカの世紀」とかいって一極支配を謳歌するかの言説を繰り返したものだが、この20年に起こったことは、簡単にいえば、中国の勃興とロシアの再興、アメリカに対する侮蔑の広がりだった。
誰かこの人たちに直接インタビューしたらどうなの?
■ オマケ
2008年当時のAFPの記事。
グルジアとウクライナ両国の加盟については、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領は米政府は両国がNATO加盟につながる「加盟行動計画」の承認を得ることを願っているとし、各加盟国からロシアは「拒否権を発動しない」との確証を得ていると述べていた。だが、首脳会議では、米国と、2国の加盟が不安定化を招くと懸念するフランスやドイツなど欧州主要国とが真っ向から対立するかたちとなった。
つまり、今現在、反ロシアと聞いたらすっかり喜んじゃって、何かいいことをしているみたいに、ロシア侵攻を騒ぎ立てる日本の主要紙は、全紙、親ブッシュだってことですね。
■ オマケ2
ついに、CNNが、ロシアの侵略始まる、みたいなtweetを引用したのかなんなのか、なんせ、始まった、みたいなことを書き出し、ホワイトハウスが否定するという騒ぎになってる。
White House calls CNN report on Russian invasion ‘completely false’
もうね、アメリカの敵はロシアじゃない。国内外で飼い続けてきた、ISみたいなメンタリティーの人々こそ敵。正常な政策を取ろうにも足手まといになって動けなくなってる。
■ オマケ3
家業が反ロシアの人が副大臣をやっているカナダは、ほんとにどうするつもりなのだろう。ウクライナには英軍のみならずカナダ軍も入ってる。ナチのコラボレーターと協力して作るウクライナって、あんたらナチですかい、という話なんだが、どうなのそこは。
「西側ではナチズムが生きている」カナダ編