燕市産業史料館。新潟県燕市大曲。
2023年9月27日(水)。
与板歴史民俗資料館を見学後、13時50分ごろ燕市産業史料館へ着いた。入館時に貸切バスが着き、欧米人アジア人が50人ほど入館した。外国人観光客に人気があるようだ。
燕市は、高度で多様な金属加工技術が集まる「ものづくりのまち」として有名である。スプーンやフォークなどの金属洋食器の国内シェアが90%を超えるほか、ノーベル賞の晩餐会や、APECでの各国首脳への土産として燕市の製品が採用されるなど、そのクオリティの高さは世界的な評価を得ている。
燕市産業史料館は、燕市の金属加工技術400年の歴史を伝える史料館で、江戸時代初期の和釘作りをはじめ、ヤスリ、キセル、鎚起銅器の製作工程と作業場の復元展示や現在も活躍する金工作家の作品を展示するとともに、体験工房館では鎚目入れ体験やスプーン酸化発色体験など豊富なモノづくり体験メニューをとおして職人技を体感できる。
鎚起銅器(ついきどうき)。
江戸時代から続く燕市の伝統工芸で、銅板を金鎚で叩きながら打ち延ばし、打ち縮めて形をつくり、継ぎ目のない立体的な製品をつくる鍛金技術を用いてつくられた器である。
鍔薬缶(つばやかん)。鎚起銅器 江戸時代 玉川覚兵衛(1799-1871)作 <寄託:玉川堂>
明和年間(1764-72)に仙台から会津を経て燕に渡ってきた藤七という人物が伝えたとされ、その技術を受け継いだ一人が、現在まで続く老舗・玉川堂の祖である玉川覚平衛である。玉川堂は200年間で300人以上の鎚起職人を輩出し、鎚起銅器の礎を築いた。
新潟県より「新潟県無形文化財」、文化庁より「記録作成等の措置を講ずべき無形文化財」、経済産業大臣より「伝統的工芸品」に指定される。また、木目金という、金属の色の違いを利用して複雑な木目模様を作り出す技術の世界第一人者として、2010年、玉川宣夫氏が重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されている。
人間国宝 玉川宣夫。
鍛金技法の中で、難易度の高い「木目金」。銀・赤銅・銅などの異種金属を10~30枚を積み重ね、板状に延ばし、表面を削り、模様を作り、その模様が木目状に見えることから「木目金」と呼ばれている。木目金技術の第1人者として国内外で活躍している。
木目金花瓶。
特に玉川堂独自の秀でた技術として、「口打ち出し」がある。普通の湯沸は本体と注ぎ口を別々に作り、後で接合するが、「口打ち出し」は本体と注ぎ口を一枚の銅板から継ぎ目なく打ち出すという高度な職人技。
また、玉川堂の鎚起銅器の特色として、その色合いの美しさが挙げられる。素銅色、紫金色、銀色といったバリエーション豊かな色彩は、銅に錫を塗り硫化カリウムなどの薬液につけて酸化させる独特の方法によって生まれるもの。これは世界においても唯一無二の着色方法だ。
職人の手によって生まれる鎚起銅器は、日々使い続けることでその色合いを深め、艶を増していく。代々使い続けていきたい逸品である。
鎚起銅器の作業場復元。
鎚起銅器は一枚の銅板をひたすら叩いていき、硬くなったら火炉に銅器を入れ柔らかくし、また叩いていく。この製作過程において設計図はない。長年に渡って培われた職人の経験と勘のみによって成形されるのである。湯沸を一人で作れるようになるまでは、約10年はかかるという。
緋色の鎚起銅器。間瀬銅山でとれた銅は緋色が美しく品質も優れていた。
体験工房館。
純銅タンブラー鎚目入れ、洋白・錫ショットグラス鎚目入れ、錫ぐい吞み製作、チタン製スプーン酸化発色体験など様々なモノづくり体験ができる。予約不要で1名から体験可能。
戦前のナイフとフォーク。
ノーベル賞受賞者晩餐会に用いられるスプーンなど。
2時20分過ぎに見学を終え、三条市歴史民俗産業資料館へ向かった。