多くの人がご存じのように、7月16日、棋聖戦5番勝負第4局は藤井聡太7段が渡辺明棋聖に勝利し、17歳11ヶ月で棋聖位を獲得した。それまでの、屋敷九段の最年少タイトル獲得記録18歳6ヶ月を30年ぶりに更新しての記録達成だった。
私は16日の午後からずうっとパソコンの前に座り、ABEMAテレビで両者の対戦を観戦していた。最近は画面の一角に現在進行形の棋譜のみならず、AI判断でどちらが優勢かが分かる数値が映し出される。午後に入ってからは渡辺棋聖側の数値は60%を超え、藤井7段側の数値は30%を下回ることもあった。渡辺棋聖得意の“矢倉戦”。これは今日の藤井勝利はないだろうなと半ば諦めながら観戦していた。
しかし19時少し前あたりから数値の差が詰りだし、82手目藤井7段が☖8六桂と桂を打って形勢は逆転し、AI判定は藤井有利となった。夕食の準備は完了していたが暫し待ってもらい、妻にも観戦を強要しながら見続けると、評価関数値は藤井99%―1%渡辺となった。もう終了かと思いきや、そこから棋聖は1分将棋(1分以内に指さねばならない状態)となってもからも数回藤井玉を追い続けたが、最後には天を仰ぐような仕草の後110手目で投了、藤井棋聖の誕生となった。
私は棋士のブログを少なくも3つ読んでいる。この中でこの棋戦に関して2人のブログは心に響くものがあった。
敗者となった渡辺さんの「渡辺明ブログ」はその翌日の午前中に書かれたものだろう。きちんとした自己分析をし、正直な気持ちを書いていた。少しだけ原文を引用させて頂く
「・・・第3局のように持ち時間を残すという点では途中まではプラン通りでしたが、自信ありという感じで△86桂を指されて、そこでこっちも手が止まったので、この将棋は負けたなと覚悟しました。今後に向けて相手より持ち時間多く残すという指し方を真似するのは無理なので、自分の長所を生かして対抗できる策を見つけるしかないと思いますが、(それが上手くいったのが第3局)。勝ちパターンがそれしかないのでは厳しいので、次の機会までに考えます」と。
朝日新聞社説も付け加えると、「感想戦に学びたい」の中で「・・・悔しい負け方をした渡辺棋聖が、ていねいな言葉づかいで19歳年下の藤井新棋聖に意見を請うシーンには胸を打つものがあった。」とあった。
もうひとつのブログの著者の片上大輔7段は人物紹介から書くと、彼は東大在学中にプロデビュー。史上初の東大卒プロ棋士となった。弟子の一人に女流カロリーナ・ステチェンスカがいる。彼のブロブ「daichanの小部屋」は読みやすい。
「将棋界は彼の出現によって新たな時代に入りました。
彼が強いと同時に華がある、というのは将棋界にとって本当に幸運なことだと思います。これからも楽しませてくれると思いますし、楽しんでいきたいです」とあった。
私も新棋聖の探求を見続けたい。