1月23日(木)、「新春浅草歌舞伎」第二部(夜の部)を家人と浅草公会堂で鑑賞して来た。東京新聞のチケットに応募し、当選したもので、三階席の一番前での観劇だった。1月も全て、頂いた券で歌舞伎を観たわけで、桟敷席から3階席まで、その落差の(標高差も)大きい事!
夜の部の出し物は
お年玉(年始ご挨拶)
一・博奕十王(主役 市川猿之助)
二・恋飛脚大和往来 新口村(主役 片岡愛之助)
三・上 屋敷娘(長唄囃子連中)
下 石橋 (長唄囃子連中)
お年玉に年始ご挨拶があり、この日の夜の部は「新口村」で、愛之助の相方の傾城梅川を勤める中村壱太郎。最近観る舞台では、若い女性役での出番が多い。美し面立ちの役者。「猿之助さんの出番が終わったからといって帰らないでくださいね」と語って場内を笑わせた。(写真:博奕十王での猿之助)
さて、今日のブログでは猿之助に触れたい。ご存じのように、一昨年、市川亀治郎改め、第四代目市川猿之助を襲名し、新橋演舞場での襲名公演でのスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」は大評判のうちに幕を閉じた。猿之助は、確か新装なった「歌舞伎座」の舞台を敢えて踏んでいないはず。そこに彼の哲学を見るような気がする。
「浅草歌舞伎」では、昼の部「上州土産百両首」での猿之助の演技が印象深い。この世話物の舞台は新派公演の様で、実に分かりやすい、浪花節的物語だ。幼なじみの正太郎(猿之助)と牙次郎(巳之助)は浅草境内で10年ぶりに再会する。そこから流転する二人の人生と、変わらぬ友情が描かれる。スリ仲間から足を洗い、上州で板前となった正太郎は、料亭の亭主から婿にと乞われるほど実直に勤めている。しかし、かってのスリ仲間から強請られ、殺人を犯してしまい、首に懸賞金百両を掛けられる身となる。その首を幼馴染の牙次郎に差し出そうと、10年後再会の約束の日に待乳山にやって来るのだが・・・。
NHK大河ドラマでの武田晴信役の印象が強烈であったので、猿之助というと、武士の強面を連想してしまうのだが、世話物の町人姿もまた良い。怒り・喜び・悲しみ・憎しみや笑いなど心理的表現の多い役柄を演じ切る猿之助。泣けてくるクライマックスだった。
この劇を見ながら私はオーヘンリーの「賢者の贈り物」を思い出していた。
(「上州土産百両首」での三代目猿之助) (「上州土産百両首」絵図)